シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進

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第260話 純魔族

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「う…うう…」

 うめき声を上げながら城壁最上部の床に転がるクラシア守備隊。
 その身体からはぷすぷすと煙が上がっていた。
 彼等は辛うじて生きてはいるものの、
 ほぼ全員が地に倒れ伏しており戦闘続行は不可能である。

「そ、そんな…攻撃配置についていた50人の投石隊、魔法隊が一瞬で…
雷槍サンダーランス』は雷を槍状にして放つ攻撃魔法だが
こんなに大人数を一撃で戦闘不能に至らしめる程の威力では無かった筈…」

 驚愕の言葉を漏らすレオ守備隊長。

「…いや、『雷槍サンダーランス』の威力は本来、
これぐらいで正しいのだよ。
魔法の威力は扱う者の魔力の高さで変わる。
大体お前たち人間如きが、
その矮小な魔力基準で判断すること自体が烏滸おこがましいのだ。
本来、魔法というものは…その言葉の示す通り、
魔を冠する種族たる我等魔族のみが使うべき御業みわざなのだよ。
子蜥蜴ことかげの涙程度の魔力しか持たないお前たち人間如きが
軽々しく使って良いものでは無いのだ。
くくく…そうは思わないかね?
愚かな下等生物である人間よ」

 貴族風のマントを身に纏ったひとりの男が姿を現わした。
 一見、只の人間に見えるが
 その全身からは人ならざる凄まじい威圧感を放っている。
 対峙するだけで身体がびりびりと震えている。

 こいつは…?
 まさか…?

 レオ守備隊長は、
 片眼鏡モノクルの様なものを懐から取り出して右目に掛ける。
 見た相手の魔力数値を特定できる魔法のアイテム、
 『見通しの眼鏡スカウターレンズ』。

「…ま、魔力数値420??」

 レオ守備隊長は『見通しの眼鏡スカウターレンズ』に表示された魔力数値の高さに驚愕した。
 彼が今まで見た最大の魔力数値は
 以前に聖王都を訪れた時に見た、
 王宮に仕える宮廷魔術師の魔力数値30である。
 噂では我が聖王国の聖王女であられるポーラ様が
 魔力数値100以上とのことだが…。
 しかし目の前の男はその全てを圧倒的に上回る魔力数値。
 そして自分たち人間を”下等生物”と見下すその姿勢…
 守備隊長の脳裏に目の前の男の正体の答えが導き出された。

「…お前は…やはり…
”中位魔族”という存在ものなのか…?」

「如何にも。
我が名はエクゼヴ。
お前たち人間が言う所の中位魔族、
そして純然たる本当の魔族だ。
偉大なる我があるじ
魔界五軍将・魔言将イルーラ様の命を受け、
人間共をこの地上から取り除く為に魔軍を率いて参上した。

お前たちが勝手に下位魔族と述べている
土くれの巨人ゴウレム共も、
我等に取っては所詮は只の傀儡の使い魔でしかないのだよ。

さあ下等生物どもよ。
その目にしっかりと焼き付けるが良い。
本物の魔族の力というものを!」

「こ、こいつ…よくも俺たちの仲間を!!」

 先程の雷属性魔法を受けずに無事だった守兵のひとりが
 弓を構える。

 ま、待て!
 こいつが本当に中位魔族だというのなら
 我々の攻撃程度では…。

 レオ守備隊長は攻撃停止の声を上げようとするが
 弓兵の矢はそれよりも早く目の前の魔族へと向けて放たれた。

 …だが、普通の人間ならば当たれば絶命する筈の矢は、
 まるで鉄の柱に当たったかのように、
 がきんと音を立てて魔族の身体に弾かれて地に落ちた。

「そんなものが我等魔族に効くと思っているのかね?
愚かな下等生物どもよ」
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