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第250話 戦闘交渉術

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「見事です姫様、この土壇場での大幅な魔力向上パワーアップ
これほどの魔力数値を見せられてしまっては私は到底勝てません。
ですからハンデとして、
後ろの二人も加えて三人がかりで相手をしても良いですか?」

 この追い詰められた状態で
 シノブさんは勝てないことをあっさりと認めた上で、
 ポーラ姫に姫騎士団プリンセスナイツ三人掛かりでの集団戦を申し出ただと!?
 …ん?
 この様な事は以前、俺もされたことがあるぞ?
 俺の時は…
 シノブさんが格闘術では俺に勝てないから
 剣を使っても良いかという申し出をして来て、
 俺は別に構わないと受けたのだが。
 でも…この絶対絶命の状態で、
 その申し出は世迷言にも程がある。
 勝利目前のポーラ姫が受ける道理は無いだろう…。

「別にわたくしは構いませんわ」

えっ?
それを受けちゃうんですかポーラさん?
受け言葉に買い言葉、
自分の絶対的な自身も手伝って
勢いで受けてしまったとでも言うのか?
第三者の目線から冷静に見た今の俺の目には感じ取れた。
つまりこれは…
自身が勝利する為の条件を引き出す
シノブさんの絶妙な戦闘交渉術ということだろうか?
正面からの戦闘以外での方法でも
自分が勝つための策を常に思考しているという
彼女の粘り強さに俺は感心した。
此処まで追い詰められても彼女は決して諦めていなかったのである。

「…しかし良いのですかシノブ?
それでは貴女の騎士としての誇りが
許さないのでは無いですか?」

「姫様。
私はこのエクスラント聖王国を護る騎士です。
この国を護れる為ならば、
私個人の誇りなど軽く捨てましょう。
…クレハ、イチョウ、来なさい。
今から三人で姫様に挑みますよ」

「はい団長」

「了解ですわ」

「ちょ、ちょっと待ちなさいシノブ…」

増動力エネルアップ!」

 イチョウが言葉を叫ぶと同時に、
 シノブ、イチョウ、クレハの魔力数値が一割上昇した。
 これは身体能力強化魔法の効果である。
 ああそうか…
 そういえばシノブさんは身体能力強化魔法を使っていなかったんだ。
 魔法の効果で身体能力が向上した
 三人の姫騎士は恐るべき速度で駈けた。
 まるで三つの疾風しっぷうがポーラ姫に吹き付けるがのごとく。
 魔力数値の大幅な上昇により、
 物理においても魔法においても圧倒的な速さを身に着けた筈のポーラ姫を、
 シノブさん達はそれ以上の速度と多勢で持って翻弄する。

 彼女たち三人の姫騎士団プリンセスナイツ
 ポーラ姫を中心にして丁度三角上に囲む様に配置した。
 そして三角の中心に在る自分達が仕えるあるじに向けて、
 それぞれに持つ武器を構えた。

「クレハ、イチョウ、行きますよ。
姫騎士団プリンセスナイツ集団戦法、
三位一体攻撃トライアングルアタック!」

 三角型の光があっという間に広がって、
 城内の中庭全体が閃光に包まれた。
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