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第246話 急上昇

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「はああっ!!」

 『双剣軽装武装ダブルライトフォーム』のシノブさんが
 凄まじい速度で地を駈け、宙を舞って、両手に握った二本の剣を振るう。
 360度全周囲から攻撃を繰り出してポーラ姫を翻弄する。

 ポーラ姫の誇る鉄壁の防御魔法は『魔力喰いマナイーター』により瞬く間に無効化。
 ポーラ姫の高い魔力で連続で放たれる攻撃魔法は
 軽装状態の為せる高機動で回避され全く当たらない。
 ポーラ姫の巧みな杖捌きによる物理攻撃は
 シノブさんの二本目の剣による音速攻撃を防ぐだけで手一杯であり、
 とても攻撃に転じることなどは出来ない。

「きゃあっ!?」

 シノブさんが繰り出す剣の一撃の威力を相殺しきれずに
 後方へと吹き飛ばされるポーラ姫。
 たたらを踏んで何とか立ちどまったものの、明らかな劣勢が感じられた。

「はあ…はあ…」

 息が乱れ、立っているのもやっとな姿のポーラ姫。
 対してシノブさんは一糸乱れぬ涼し気な表情で堂々とした立ち姿。

「…姫様。
私相手に白兵戦で良くぞ此処まで頑張りました。
ですが、そろそろ御仕舞としましょうか。
兄様の魔法のご指導のついてはもうお諦め下さいませ。
姫様には姫様にしか出来ない国王代理と言う大切なお仕事があります故」

 シノブさんは剣を構える。
 その静かな口調に反して凄まじい気迫。
 一気に勝負をつけるつもりである。
 そして彼女は大きく足を踏み込んで地を強く蹴った。

 一陣の旋風と化したシノブさんがポーラ姫に凄まじいスピードで攻撃を仕掛けた。
 それはまるでポーラ姫を中心につむじ風…
 いや小型の竜巻が舞っているがごとく。

「くっ…ううっ…
…ああっー!?」

 ポーラ姫は声を上げながら吹き飛ばされて地に倒れ伏した。
 持っていた杖が投げ出され、
 からんからんと音を立てて転がった。

「姫様、もはや勝負はつきました。
棄権なさいませ」

「…イヤ…です…」

「え?」

「イヤです!
ポーラはこの勝負に負けたくありませんの!
わたくしはシノブに勝って、
ケイガお兄様に魔法をお教えしますの!

そしてお兄様の手を取り足を取り腰を取って…
昼夜問わず密着どきどき魔法授業…
そしてわたくしもお兄様に…
手取り足取り腰取りされて…
そうなってふたりは…ふたりは…
兄妹の境を超えて固く結ばれるのですわ!!」

 ポーラ姫は力強く立ち上がり激昂する。
 その身体の周囲に光のオーラが巻き起こる。

 何っ…これは…!?
 俺の『見通しの眼鏡スカウターレンズ』に映る
 ポーラ姫の魔力数値が190から240まで急上昇した。
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