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第240話 表

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「姫様の云われたいことは良くわかりました」

「わかってくれましたかシノブ?
それではこの国の未来の為、
わたくしがお兄様に魔法をお教えすることを認めてくれますか?」

「残念ですが…それを認めることは出来ません」

「えっ?
何故なのですかシノブ?」

「私は姫様の剣であり盾である姫騎士団プリンセスナイツの団長シノブ。
ですが、ケイガ兄様の妹のひとりでもあります。
兄様はあくまで清らかなる兄妹の関係を望んでいた筈です。
ですが姫様はその関係を逸脱されて、男女の関係になるとおっしゃいました。
兄様の望みを否定し、あまつさえ兄様を独り占めされることなど…
妹として、姫様と言えども許すわけにはいきません!」

「姫様、恐れながら…クレハもケイガ兄様の妹として認めることは出来ません」

「イチョウもですわ姫様、失礼を承知で言わせて頂きますと…
ちょっと王族の横暴の匂いを感じますわよ?」

「そうですか…姫騎士団プリンセスナイツ
わたくしの意思を拒否するという事なのですね…」

「はい、姫様。
誠に残念ではありますが」

「私達にも譲れないものがあります故」

「此処は潔くお諦め下さいませ、わたしたちの姫様」

 姫騎士団プリンセスナイツの団長であるシノブさん、
 そして団員のクレハ、イチョウの三人はポーラ姫の行為をぴしゃりと否定した。
 前々から感じてはいたがこれではっきりとした。
 姫騎士団プリンセスナイツはポーラ姫の絶対服従の部下、
 いわゆる”イエスマン”では無いということだ。
 意見し、物言う部下なのである。
 俺は彼女たちの関係が只の主従関係では収まらないもっと深いものなのでは? 
 と感じ始めている。

「ふふっ…」

 そんな彼女たちに対してポーラ姫は不敵に笑った。

姫騎士団プリンセスナイツ
貴女たちに取ってケイガお兄様は譲れないものであることを
わたくしとしたことが…すっかりと失念しておりましたわ。
そしてわたくしに対して一切物怖じしないその姿勢。
流石はわたくし自慢の姫騎士団プリンセスナイツですわ!」

「お褒め頂き光栄でございます、姫様」

 シノブさん達は一斉に膝を突き臣下の礼を取った。

「…ですが、わたくしも譲れないのです。
この国の為、この国の未来の為、
そして他らなぬ…わたくしの思いの為、
わたくしはお兄様に魔法をお教えしなければならないのです!」

「ですが姫様、このままでは私達と姫様で押し問答で何時になっても決まりません。
国王代理の仕事も溜まる一方です。
そろそろ決めどきかと具申します。
それでは此処は何かの勝負事で決めるというのはどうでしょうか?」

「それは良いですねシノブ。
ではいたって簡潔シンプルに行きましょう。
…表へ出なさい!」
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