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第239話 飛躍

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「さあ、ケイガお兄様!
ポーラがお兄様のお望みの光属性魔法をお教えいたしますわ!
どの魔法をお求めでしょうか?
回復魔法でしょうか?
それとも防御魔法でしょうか?
身体強化魔法?
もしくは攻撃魔法ですか?」

「え、ええと…?」

 俺は思わずミリィのほうに振りかえった。
 凄い勢いで畳みかけて来るポーラ姫をどうにか諫めて欲しいという
 助け舟を求める羨望のまなざしである。

「あ…?
そ、そうだね…兄君あにぎみさ」

 察しの良いミリィが何か言おうと口を開いた瞬間、
 ポーラ姫が俺とミリィの視線の間に割って入った。

「お兄様…
今は…わたくしを…
ポーラだけを見て…」

 ポーラ姫はその碧眼の綺麗な瞳を潤ませて
 俺に熱い目線を投げかける。

 いやいやいや…俺は魔法の修得をしているんですよね?
 何で俺は麗しきお姫様に
 そんな恋愛映画の台詞みたいなことを投げかけられているんです…?

「…姫様…
光の幻惑魔法『偏光幻ポラゼーション』を使ってまで、
私たちを出し抜かれるとは思いませんでした…」

いつの間にか部屋に戻ってきた
姫騎士団プリンセスナイツの団長シノブさんがポーラ姫に問いかける。
そしてシノブさんの後ろには団員のイチョウとクレハも立っている。

「…ですが、お戯れもここまです姫様。
さあ、執務室へ帰りましょう。
兄様の魔法のご修得については
この国で最も魔法に優れておられる公爵様にお任せしましょう。
貴女は今の聖王国の長である国王代理として、
この国の為、民の為に務めなければならない仕事が待っているのですよ?」

「…いいえ、シノブ。
わたくしは…だからこそ!
この国の為、
そして民の為にケイガお兄様に魔法をお教えしなければならないのです!」

ポーラ姫は強いまなざしでシノブさんを見返すと、
強い口調で言葉を返した。

「どういうことなのですか姫様?
納得のいく説明を頂けますでしょうか?」

「簡単ですわシノブ。
ケイガお兄様はこの世界エゾン・レイギスでも希少な存在である
光の属性をお持ちになってます。
魔法の修得については魔法を教える者と学ぶ者の属性が同じであることが
必然であることは貴女も知っているでしょう?
ミリィお姉様は魔法に長けたお方ですが、お兄様とは属性は違いますわ。
此処は同じ光属性であるわたくしが魔法を教えるのが最も効率が良いのです。
お兄様はこの世界を魔族から救われる異世界の戦士。
一刻も早く魔法をご修得頂く必要がありますわ。
わたくしがお兄様に魔法をお教えするのは、
この国の為、民の為でもあるのです!」

「なるほど、納得がいくご意見です姫様。
ですが、
貴女が国王代理のお仕事をされることもこの国と民の為に必要なことなのです。
やはりここは公爵様に
兄様の魔法のご修得をお任せするのが良いと私は具申いたします」

「…いいえシノブ。
わたくしがお兄様に魔法をお教えすることで、
この聖王国と民の為になることは他にもあるのですよ」

「何ですと?
それは一体…?」

「わたくしがお兄様に手取り足取り腰取り…
昼夜問わずにお側でお兄様につきっきりで魔法をお教えすることで
お兄様とわたくしはより親密な関係となりますわ。
そしてふたりは兄妹の関係を超えて結ばれますの!
お兄様とわたくしの間には当然…お子が授かりますわ。
きっとこの聖王国の未来を担う強い王に育つでしょう。
つまりわたくしがケイガお兄様に魔法をお教えすることで、
この国の未来をも安泰とすることが出来るのですわ!」

 ポーラ姫の飛躍し過ぎる発言に圧倒された俺は思わず眩暈を覚えた。
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