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第233話 退場
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ポーラ姫の手が俺の下腹部に触れるその刹那…
彼女の肩を手甲に包まれた手が掴み、
その動きを停めた。
「…姫様…
また執務室を抜け出して探してみれば…
一体何をしていらっしゃるのですか…?」
全身を鎧に包み込んだ
姫騎士団の団長、
シノブさんが静かな口調でポーラ姫に問い掛けた。
シノブさん、
い…いつの間に!?
俺は全く気付かなかった…。
俺とて地ノ宮流気士術の気士。
人の気配を察することには人並以上には自信があるつもりだが、
流石は強者揃いの姫騎士団・団長…
俺に気とられること無くこの部屋に入って来たという事か…?
いや…俺が絶対絶命の危機的状況に
周囲に気を配る余裕が全くなかったというべきか?
「で、でもシノブ…国王代理の認可書類のお仕事は全て終わった筈ですわ?」
ポーラ姫はシノブさんに振り返って言葉を返す。
「姫様…
国王陛下の認可書類は既に新しいものが山の様に溜まっております。
今のエクスラント聖王国は国外は魔族軍の侵攻、
国内は多数の不穏分子と様々な問題を抱える状態です。
故に国王代理であらせられる姫様の認可が必要な案件も
新たなものが次々とやってくるという訳です」
「…で、でもわたくしには
ケイガお兄様の魔法のご習得の為に
魔力心臓核を見つけ出すという大切なお仕事が」
「それは魔法学者であられる公爵様にお任せいたしましょう。
餅は餅屋。
魔法は魔法学者。
そして姫様には姫様のお仕事とそれぞれの専門家にお任せするのが適任です。
それでは参りましょうか…姫様」
シノブ団長にがっしりと手を掴まれるポーラ姫。
捕らわれた彼女の両脇には、
いつの間にかイチョウとクレハが立っていて
姫騎士団三人に周りを固められたお姫様は
この場から連行されて行く。
「ちょ、ちょっと待ってくださいシノブ!
わたくしあともうちょっとで、
ケイガお兄様の魔力心臓核を見付けられそうですの!
そうなればお兄様が魔法をご修得される上での最初の過程、
すなわち”初めて”にわたくしが慣れますの!
お兄様の初めて…何て甘美な響きですわ…。
もちろんわたくしも初めてですわお兄様あ!
…ですからちょっと待ってください!」
「…姫様。
私には姫様が何を言っているのかわかりません。
ですがこれ以上ケイガ兄様に迷惑を掛けてはいけませんよ」
「ああっ、助けて!
お兄様あっ!?
…何故そんなに楽し気に
手を振ってますのおおおお!?」
ばたんと部屋の扉が閉まった。
俺は再び、
ポーラ姫が姫騎士団に連れられて
部屋を退場していく姿を見送った。
何度目かの既視感。
まるで王道コントの様な展開が、
再度俺の前で繰り広げられていた。
ポーラ姫と俺はそういう星の元にある関係なのかも知れない。
だがそんなことはどうでも良かった。
俺は絶体絶命の危機を脱出したことに安堵し、
心からの笑顔を浮かべたのだ。
彼女の肩を手甲に包まれた手が掴み、
その動きを停めた。
「…姫様…
また執務室を抜け出して探してみれば…
一体何をしていらっしゃるのですか…?」
全身を鎧に包み込んだ
姫騎士団の団長、
シノブさんが静かな口調でポーラ姫に問い掛けた。
シノブさん、
い…いつの間に!?
俺は全く気付かなかった…。
俺とて地ノ宮流気士術の気士。
人の気配を察することには人並以上には自信があるつもりだが、
流石は強者揃いの姫騎士団・団長…
俺に気とられること無くこの部屋に入って来たという事か…?
いや…俺が絶対絶命の危機的状況に
周囲に気を配る余裕が全くなかったというべきか?
「で、でもシノブ…国王代理の認可書類のお仕事は全て終わった筈ですわ?」
ポーラ姫はシノブさんに振り返って言葉を返す。
「姫様…
国王陛下の認可書類は既に新しいものが山の様に溜まっております。
今のエクスラント聖王国は国外は魔族軍の侵攻、
国内は多数の不穏分子と様々な問題を抱える状態です。
故に国王代理であらせられる姫様の認可が必要な案件も
新たなものが次々とやってくるという訳です」
「…で、でもわたくしには
ケイガお兄様の魔法のご習得の為に
魔力心臓核を見つけ出すという大切なお仕事が」
「それは魔法学者であられる公爵様にお任せいたしましょう。
餅は餅屋。
魔法は魔法学者。
そして姫様には姫様のお仕事とそれぞれの専門家にお任せするのが適任です。
それでは参りましょうか…姫様」
シノブ団長にがっしりと手を掴まれるポーラ姫。
捕らわれた彼女の両脇には、
いつの間にかイチョウとクレハが立っていて
姫騎士団三人に周りを固められたお姫様は
この場から連行されて行く。
「ちょ、ちょっと待ってくださいシノブ!
わたくしあともうちょっとで、
ケイガお兄様の魔力心臓核を見付けられそうですの!
そうなればお兄様が魔法をご修得される上での最初の過程、
すなわち”初めて”にわたくしが慣れますの!
お兄様の初めて…何て甘美な響きですわ…。
もちろんわたくしも初めてですわお兄様あ!
…ですからちょっと待ってください!」
「…姫様。
私には姫様が何を言っているのかわかりません。
ですがこれ以上ケイガ兄様に迷惑を掛けてはいけませんよ」
「ああっ、助けて!
お兄様あっ!?
…何故そんなに楽し気に
手を振ってますのおおおお!?」
ばたんと部屋の扉が閉まった。
俺は再び、
ポーラ姫が姫騎士団に連れられて
部屋を退場していく姿を見送った。
何度目かの既視感。
まるで王道コントの様な展開が、
再度俺の前で繰り広げられていた。
ポーラ姫と俺はそういう星の元にある関係なのかも知れない。
だがそんなことはどうでも良かった。
俺は絶体絶命の危機を脱出したことに安堵し、
心からの笑顔を浮かべたのだ。
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