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第203話 本質を見る目

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優羽花ゆうか、ミリィ。
俺はヒカリと契約して強大な魔力を得た。
これでどんな相手にも負けない!
俺は妹たちみんなを護れる!
と大見得を切ったけど…
実際の魔力数値は40しかなくて…
何と言うか…その…ごめん!」

 俺は上半身を角度45度まで倒して、
 ふたりの妹に向けて深く頭を下げた。
 誠心誠意を込めた謝罪の礼、”最敬礼”である。

 男たるもの、いや人たるもの、そう軽々しく頭を下げてはならない。
 人のプライド、誇りというものは軽々しく売ってはならないのである。
 だが自分が間違っていた場合は全く別である。
 俺は全く躊躇せずに頭を下げよう。
 そして謝罪する相手は俺の大切な妹たち。
 当然の行為である。

「…お兄?」

「…兄君様あにぎみさま、何で謝っているんだい?」

 優羽花ゆうかとミリィは
 きょとんと不思議そうな表情かおで俺を見ながら問いかけて来た。

「…えっ?
だって俺…
あんなに大見得を切っておいたのに…
実際は魔力数値40しか無かった訳で…
だから謝罪を…」

「何を言っているんだい、兄君様あにぎみさま
魔力無しでもあんなに強かったケイガ兄君様あにぎみさま
魔力数値40も得たら、
様々な魔法も使えるようになって
更に強くなるしか無いよね?
どんな相手にだって負けないのは
何も間違っていないんじゃないかな?」

「…えっ?」

「お兄、あたしはあまり頭が良く無いから
魔力数値とか難しいことはよくわからないけど…
お兄は光の精霊ちゃんとの契約に成功して、
魔法が使えるようになって前よりも強くなったって事よね?
その力で、あたし達を護るって言うんでしょ?
あははー、頼りにしているわよ、お兄!」

 優羽花ゆうかは俺の肩を叩きながら軽快に笑う。

 あ…あれ…?
 俺が思っていた事と全く違う反応が、
 ふたりの妹達から返って来た。

 確かに俺は魔力を得て魔法も使えるようになったのだから、
 以前より確実に強くなっているだろう。

 つまり、ふたりの反応が正しくて
 俺のほうが間違っていたということか…?
 俺は、魔力数値40という
 見通しの眼鏡スカウターレンズの数値に振り回されて
 物事の本質を見誤っていたということか…。

 俺は今は引籠りではあるが、元々は25歳の社会人であり大人であった。
 現代社会は数値で評価されるもの。
 俺は数値の高さのみに振り回されて、それだけを気にしてしまい、
 数値以外のもっと大切な…
 物事の本質を見る目を失っていたという事なのか…??

 そんな曇り切った俺の眼を、
 ふたりの妹たちが気付かせてくれたというのか…。
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