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第188話 理解

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「ほら! だからボクの言った通りじゃないかポーラ!
ボクは君みたいに邪な気持ちで
ケイガ兄君様あにぎみさまと付き合っている訳では無いんだよ!」

「そんな…
ミリィお姉様は口ではそんなこと言っても…
少なからずケイガお兄様とイチャイチャしたい気持ちもあった筈ですわ…」

「…こらポーラ!
ま、まだそんなこと言って…
いい加減、自分の過ちを認めるんだ!」

 ポーラを力強く指さして、いわゆるドヤ顔で勝ち誇るミリィ。
 対して、力無くその場に崩れ落ちるポーラ。
 ううむ…これでは俺はミリィの味方をしてしまったことになるのか?
 俺は喧嘩を停めたかっただったのである。
 望んでいた意図とは違う結果になってしまったことを俺は自省する。
 しかしミリィは年頃の娘であり、異性に対して興味津々なことも俺は承知済み。
 だから、ポーラ姫の指摘は正しいのだろう。
 だがミリィはそういうことは一切認めがらない
 お堅い性格であることも俺は知っている。
 つまりミリィの気持ちを汲みつつポーラ姫をフォローする必要がある。
 そこで俺は機転を利かせることにした。
 がっくりと肩を落としているポーラ姫の両肩に、
 俺は優しく包むように両手を置くと声で話しかけた。

「…ポーラ、俺はミリィがいわゆる”色事”に興味があることを知っている。
だけど彼女はそういうことを認めたがらない性格だろ?
だから此処は彼女に免じて、このまま流そうじゃないか?」

「…まあ、お兄様は気付かれていましたのね。
お姉様は結構むっつりりさんだと言う事に」

「まあなあ…。
しかしむっつりさんって…言い方…」

 俺が気持ちを理解してくれたことに安堵したのか、
 ポーラ姫の表情かおに明るさが戻った。

「…わたくしの見当違いでしたミリィお姉様。
ごめんなさい」

 そして彼女は直ちにミリィに頭を下げて謝罪した。

「わ、わかれば良いんだよポーラ。
…随分と聞き分けがいいんだね」

 ポーラ姫の切り替えの早さに驚くミリィ。

「わたくしの気持ちを理解してくれる方が居れば幾らでも頭を下げますわ」

 ポーラ姫はそう言って俺に向かってウィンクをした。
 …うわあ!
 今のはちょっと可愛かったです。
 不意の攻撃に俺の繊細な童貞心がまたしても撃ち抜かれそうですよポーラさん!

「…それはそうとケイガお兄様…」

ポーラ姫は頬を赤らめてもじもじしながら俺の顔を覗き込むように見つめて来た。

「うん? 何かなポーラ?」

「その…ミリィお姉様の頬にしていた”つんつん”…。
わたくしにもぜひ、して欲しいです」
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