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第175話 指摘

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 ポーラ姫は、ばさあ! 
 とマントを翻すと中庭の隅にあった木製のベンチに腰掛けた。
 聖王国の長が王者の風格で座ることにより、
 只の古ぼけたベントもまるで長き時を重ねた玉座の様に俺には見えた。

姫騎士団プリンセスナイツ
ケイガ兄様はわたくしたち妹をとても大切に思ってくれています。
そして今は女性としてではなく、
あくまで妹として愛したいというのがお兄様の望みです。
ならば、わたくしたちもお兄様の望みに答えるべきでしょう。
…イチョウ、モミジ。
お兄様が自身を大切にしなさいとおっしゃいましたが、
だからと言って
自分の欲望を解放して良いという訳では無いのですよ。
わたくしたちはあくまでケイガお兄様の妹として
お兄様の望みを尊重しなくてはなりません」

「申し訳ございません姫様。
わたくしたちはお兄様のお優しさに甘えて…調子に乗ってしまいました」

「姫様、わたしたちはどんな厳罰にも耐える覚悟です」

「いいえ、わかれば良いのです。
わたくしの姫騎士団プリンセスナイツ、イチョウ、モミジ。
その思いを持ってわたくしへの忠誠への形で答えるのです。
これからもよろしくお願いいたしますわ」

「「はっ、姫様!」」

 イチョウとモミジはひざまづいた姿勢のまま深くこうべを垂れた。

「それではこの話はこれで終わりといたします。
姫騎士団プリンセスナイツ、職務に戻りなさい」

「「「はっ!」」」

 そう言い終えるとすくっとベンチから立ち上がるポーラ姫。
 そして、姫騎士団プリンセスナイツもポーラ姫に続いて一斉に立ち上がった。


「…まあ、兄君様あにぎみさま同衾どうきんしていたポーラがあまり強く言えることは無いんだけれどね」

 ポーラ姫の言葉に従い、
 この場から解散しようとした姫騎士団プリンセスナイツの背中に、
 ミリィがぼそりと呟いた一言が突き刺さった。
 姫騎士団プリンセスナイツの全員に動揺が走った。

「…姫様がその様なことを…?」

「…王族の横暴…?」

「これはあきらかな抜け駆け行為…?」

 姫騎士団プリンセスナイツ各々おのおのから疑惑の眼が向けられるポーラ姫。

「ミ、ミリィお姉様っ!?
何故このタイミングでその様なことをおっしゃるのですか!?」

「だってポーラの言い方だと、
まるで自分だけはずっと前から兄君様あにぎみさまの望みを汲んでいました…
みたいな感じじゃないか?
大体…この様な事態になったのだって、
そもそもポーラが兄君様あにぎみさまに口づけを迫ったのが発端だよね?
それなのに最後は自分が事態を治める側になるなんて、
美味しい所を取り過ぎじゃないか?
だいたいポーラはいつも誰よりも先駆けて兄君様あにぎみさまに迫っていたよね?
…そういう所がしゃくに触ったから、ボクは指摘したまでだよ」
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