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第169話 開き直り

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「お兄様…」

「ははっ、減滅したかいポーラ?
俺は皆が思っているほど立派な兄じゃないんだよ。
魅力的な妹たちの慕心ぼしんから来る厚意に常に動揺して、
その挙句やましい思いすら抱いている…
そんな程度のたいしたこと無い只の男さ」

 俺は半ばヤケになって自身を吐き捨てるかの様に言葉を述べる。
 だがポーラ姫は必死に首を横に振りながら言葉を返す。

「そんなことはありませんわケイガお兄様!
お兄様は素晴らしいお兄様です!
いつもわたくしたちのことを第一に考えて下さる
立派で頼れて優しいお兄様ですわ!」

「ポーラ…」

 綺麗な碧眼の瞳を潤ませて強く言葉を返したポーラ姫。
 彼女の強い意思が込められた物言いに驚く俺の肩に、
 優羽花ゆうかがぽんと手を乗せながら口を開いた。

「…何ヤケ起こしているのよ、
らくしないわよお兄。
お兄があたしたち妹のことを
常に一番大切にしてるってことは、
16年間妹として側に居るあたしが良く知っているんだからね!
自身持ちなさいよお兄」

優羽花ゆうか…」

 兄としての情けない心中を告白した俺だが、
 すぐさま二人の妹に励まさられてしまった。
 ははは…俺って本当にダメな兄だよなあ。

「ふたりとも…ありがとう」

 俺は二人の心遣いに感謝の言葉で答えた。

「それにお兄様。
兄は妹を性的な目で見てはいけないと、
さっきおっしゃいましたけど…
そんなことはないと思いますわ。
だってわたくしたち妹も
お兄様を性的な目で見ることは多々ありますもの。
…ですよね?
ユウカ様?」

「「ファッ!?」」

 ポーラ姫の突然の発言に俺と優羽花ゆうかが声がハモった。
 えっ…そうなの?
 俺は思わず優羽花ゆうかの顔を見た。

「…えっ…ええと…
あたしは…そんなことは…」

 優羽花ゆうかは頬を赤らめながら目線を漂わせている。
 妹歴16年の我が愛しい妹については、
 俺は手に取る様にわかるつもりである。
 これは何かをごまかそうとしているしぐさ。
 えっ、つまりそれって?

優羽花ゆうか…今まで俺のことエッチな目で見ていたの?」

「エッチ言うなあ!
…別にいいでしょ。
あたしとお兄は兄妹とはいえ血は繋がってないし。
時々ぐらいそういう目で見たっていいじゃない!」

優羽花ゆうかは俺にそう答えると
腕を組みながら、ぷいとそっぽを向いた。

 彼女の開き直りともとれるその返しに、
 俺はある趣の感心すら覚えた。
 俺がずっと、うだうだと悩んでいたことを
 彼女はその一言で切り捨てたのだから。
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