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第168話 吐露(とろ)

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 モミジから貰ったおにぎりを食べて一息ついた俺は、
 心を落ち着かせて今の状況を整理する。

 この異世界エゾン・レイギスに飛ばされた俺は色々あって、
 ポーラ姫、ミリィ、姫騎士団プリンセスナイツと兄妹の契りを交わすことになった。
 新たな妹たちは皆、見れ麗しい美少女、美女たちである。
 彼女たちは俺を兄として一心に慕って来る。

 だが俺は25歳童貞、そもそも女の子との付き合いには全く不慣れなのである。
 妹歴16年の優羽花ゆうか静里菜せりなならばいざし知らず、
 妹歴が3日しかない彼女たちにこうも迫られてしまっては、
 男としての性的な欲望が沸き立つのは仕方が無いことである。
 だが俺は兄としてそういった性欲の類を常に心の内に抑え込んでいる。
 兄が妹を性的な目で見てはいけない。
 これは俺の兄としての絶対的な心得である。

 だが俺の新たな妹の一人であるポーラ姫が
 その曇りなき慧眼で、
 俺の心の内に抑え込んでいた
 男としての性的な欲望を見抜いてしまったのである。
 臆面もなく言うならば、
 俺はポーラ姫とキスしたいな…と思ってしまったのだ。
 彼女はそんな俺の心の内の欲望を叶えたいと思い、
 自身の唇を差し出そうとした。

 そしてポーラ姫の言葉を聞いた姫騎士団プリンセスナイツの皆も
 俺の心中の欲望を叶えるべく次々と唇を差し出そうとして来た。

 ポーラ姫、姫騎士団プリンセスナイツ
 俺に対するそのいじらしい献身的な気持ちは
 男であれば願ったり叶ったりであろう。

 しかし何度も言うが、
 俺は彼女たちの兄なのである。
 兄と妹である以上、
 キスとかそういう性的な行為は有り得ないのである。
 兄は性的なものは一切に抜きにして、
 妹を愛して慈しむものなのだ。

 だが彼女たちの献身的な行為は
 兄を慕う妹としての行為であることに間違いは無いのである。
 そんないじらしい妹たちの気持ちを無下にしても良いのか…
 と、俺は悩んでいる。
 ああ、一体どうすれば良いのか…。

「…ごめんなさいケイガ兄君様。
わたくしが軽々しくお兄様のお気持ちを
そのまま口にしたのがいけなかったのですね…
こんなにもお兄様を悩ませてしまうなんて、
わたくしはいけない妹です…」

 苦悩する俺の様子を見てポーラ姫は目を伏せて申し訳なさそうに口を開いた。
 ああ…またしても心中を彼女に悟らせてしまった。
 俺は申し訳無く思いながら言葉を返した。

「そんなことはないよポーラ。
そもそも口づけをしたいとか…
そういう気持ちは兄は妹に対して抱いてはいけないんだ。
いや…抱いても心のうちに秘めて隠しておくものなんだ。
兄は妹を愛しみ、慈しむものであって、
性的な対象で見てはいけない。
でも、見目麗しいみんなの魅力に、
俺はその気持ちを隠し切ることが出来なかった。
そんな兄として愚かな気持ちを君に悟らせてしまった俺が悪いんだ。
だからポーラは悪くない」

 俺はポーラ姫に愚かな兄としての心中を吐露とろした。
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