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第164話 妹はそれぞれ

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「うわあ…何よそれ、キモ」

 優羽花ゆうかがぼそりと口走ったツッコミが俺の背中に突き刺さった。
 流石は妹歴16年の俺の妹…容赦の無さ振りが違う!
 だが妹はそれぞれである。
 たとえ…優羽花ゆうかにはキモいとも言われようが、
 ポーラ姫に対しては兄としてこの対応で正しい筈なのだ。

「ああっ…お兄様!」

 ポーラ姫は両腕を広げて俺の胸に飛び込んで来た。
 ちょっ!?
 これはお姫様抱っこと違う!

 とりあえず俺は彼女を抱き止めて、
 彼女が落ちない様にその背中をがっちりホールドした。
 ポーラ姫も俺の背中に手を回す。
 う、うん…?
 お互いに抱き合って、
 まるで情熱的な恋人同士みたいな絵図になってないですかコレ?

「ポーラ姫…そんなに抱き付かれるとお姫様抱っこが出来ないんだが…」

「すみませんケイガお兄様…ポーラ感激の余り思わず」

「それじゃあ、俺がゆっくり腰を下ろすから…」

「はい、お兄様」

「じゃあポーラ姫、足の力を抜いて」

「は、はい…お兄様。んっ…」

「それじゃポーラ、いくぞ!」

「あン! お兄様っ!?」

俺はポーラ姫の身体に両腕を廻し、一気に抱え上げた。

「…お兄、何それ?
何だかいやらしいんですけど?」

優羽花ゆうかの再度のツッコミが俺の背中に突き刺さる。
ち違うぞ我が妹よ、俺は何もやましいことはしていない!
俺は優羽花の指摘を流してポーラ姫に言葉を掛ける。

「どうだいポーラ姫。
お姫様抱っこの感触は?」

「…はい…素晴らしいですわ…ケイガお兄様…」

 ポーラ姫は瞳をうるうるさせて歓喜の言葉を返した。
 満足して貰った様で、兄としては何よりである。

「そう言えばお兄様、お姫様抱っことは言いますけれど…
わたくしこの様に抱かれたのはケイガお兄さまが初めてですの」

 俺には結構意外な言葉であった。
 何しろ”お姫様抱っこ”と、わざわざ呼ばれているのだ。
 正真正銘のお姫様であるポーラ姫なら、
 既に何度も経験があると思っていたからである。
 なるほど…所詮は創作物に中での行為であって、
 実用的なものでは無かったのかも知れないな。

「わたくし、初めてお姫様抱っこされたのがケイガお兄様でよかったです」

 うっ…かなりどきっとする発言。
 やめてください童貞歴25年の俺はしんでしまいます。

「お兄様…」

 ポーラ姫はその美しい瞳を潤ませながら、俺の眼を覗き込むように見つめる。
 俺は既視感デジャブを感じた。
 あれこの展開は…前にも…?

「…どうぞ…」

 ポーラ姫はその可憐な吐息が感じる距離にまで俺の顔に寄ると、
 目を閉じてその可憐な唇を差し出した。
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