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第163話 姫騎士団の連続攻撃

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「ええっ…それってどういう…?」

「ふふ、姫騎士団プリンセスナイツの団長を務める身とは言え、
一応女である私にこれ以上は言わせないでくださいね」

 そう言うと彼女は俺の耳からふわりと離れる。
 うわあ…何か凄くいい匂いがする…。

 シノブさんは独特な価値観を持つポンコツ女騎士さんな所があるが、
 凄い美人さんなのである。
 しかも俺よりおそらく年上だ。
 そんな彼女に冗談とはいえ、
 どきりとする事を言われてしまい俺は完全に硬直してしまった。

 まったく…姫騎士団プリンセスナイツは、
 団長から団員に至るまで揃いもそろって俺をどきどきさせるなあ。
 こんな美少女・美人揃いの皆にこうも次々と好意の連続攻撃を寄せられては、
 童貞歴26年の俺の心臓では耐えられないというものである。
 
 だが勘違いしてはいけない。
 彼女たちは血の繋がりなくとも俺の妹たちである。
 これは妹の兄を慕う思いから来る行為なのだ。
 そして俺は男である前に彼女たちの兄。
 だから俺は妹である彼女たちを
 女性に対する恋愛感情などで見てはいけないのである。
 あくまで兄としての眼で、愛しい妹たちを慈しむのだ。
 俺はあらためて兄としての自覚を強く持った。

「はぁ…はぁ…
あ、あのケイガお兄様…
お兄様にお姫様抱っこされてきゅんきゅんイベント…
まだやっておられますか?」

 俺の前に、肩で息をして髪を振り乱した
 疲労困憊ひろうこんぱい状態のポーラ姫が駆け込んで来た。

「ポーラ、ようやく朝食を食べ終わりましたの…
それで急いでお兄様を追いかけましたわ…
城内の皆に話をきいてようやく此処にたどり着きましたの…」

「こらっポーラ、幾ら何でも遅すぎだよ、
時間切れでお姫様抱っこの権利ははく奪だよ!」

「ミリィお姉様!
時間切れではく奪とかそういうお話は聞いておりませんの!
わたくしだけ仲間外れなんて酷いですわ!」

 ポーラ姫とミリィが揉めている。
 先日も似たようなやり取りがあったような気がするぞ。
 うん、二人は仲が良いなあ。

 ポーラ姫は朝食早食い選手権で
 皆よりかなり差が開いて最下位だったのは俺も確認している。
 でも彼女が食べ終えてなかった事は知らなかった。
 ふむ、ご飯をゆっくりしか食べられない女の子というのも
 可愛いものだなあ…と俺は思った。

「何ニヤニヤしているのよお兄?
…いやらし」

 うっ、表情かおに出ていたのか?
 それはいけない。
 俺は顔の筋肉を引き締めて気合を入れ直す。

「まあ、人にはそれぞれ違う魅力があるってことかな?」

「何よそれ」

 俺は優羽花ゆうかにそう答えるとポーラ姫に歩み寄った。

「おつかれさまポーラ姫。
ははっ、時間切れなんてミリィの冗談に決まっているじゃないか?
俺はいつでもウェルカムさ。
それじゃあ…おいで」

 俺は自身で考えうる限り最高の、
 ”頼れる兄の立ち振る舞い”でポーラ姫を出迎えた。
 何か妙にキザったらしい気もするが大丈夫だろう…多分。
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