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第148話 意外な一面

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「そ、そんな…あたくしは…
兄様にお姫様抱っこして欲しいなんて
そこ迄のワガママは申してはおりませんわ…。
そ、それに!
そうやって妹格差の事実をごまかそうとしても、
そうは問屋が卸しませんわよケイガ兄様!」

 うっ…鋭いな。
 確かにイロハにもお姫様抱っこをすることによって
 不公平さを与えた事を少しでも帳消しに出来ればと思ったのも事実である。
 だがこれは妹全てに等しき愛しみを…と言う、
 俺のまごうことなき兄の気持ちから来る行動でもあるのだ。

「…そうか、イロハが嫌なら別に俺はそれでも構わないのだが…」

「ベ、別にあたくしは!
兄様にお姫様抱っこされたく無いとは言ってはおりませんわ!
で、ですけれど…
妹格差の穴埋めの理由ですることが納得いかないと言っておりますのよ!
そうでなければ喜んでお受けいたしましたわ!」

 イロハは頬を赤らめ、
 縦ロールの美しい髪をいじりながら
 俺から視線を外しそっぽを向いた。

 ええとこれは…ツンデレさんの反応と言う奴だろうか?
 何だか優羽花ゆうかに凄く似ている気がするぞ。
 イロハはいわゆる漫画やアニメで言う所の悪役令嬢を思わせるのだが、
 ツンデレもあるというのか?
 うん、キャラが濃過ぎる気がするぞイロハさん。

「ケイガ兄様…イロハはお断りの様子ですね、お姫様抱っこ。
それではイロハの替わりに私にして貰えますでしょうか?
私も僭越ながら、妹として不公平振りを感じておりましたので」

 クレハは俺の前に歩み寄ると、
 いつも通りの生真面目な口調のままにお姫様抱っこを所望した。

「ははっ、もちろん良いぞクレハ。
よしいくぞ!」

「きゃっ!?
力強いです兄様…
やっぱり男の人なんですねケイガ兄様」

 クレハはそう言うと俺の顔の間近に顔を寄せた。
 彼女の息遣いが聞こえそうな距離。
 何だか良い匂いがする。
 これは女の子の匂いという奴だろうか?

「ケイガ兄様。少しお顔が赤いようです。
もしかして照れておられますか?」

「…まあな、そりゃあこんな美人さんに顔を寄せられちゃなあ」

「私の様な無骨な娘程度に動揺されている様では
いけませんよケイガ兄様。
…これはちょっと慣れて頂いて、
免疫を付けて貰わないといけませんね」

 クレハはそう言うと、俺の頬に自分の頬を擦り寄わせた。
 ちょっ…まっ!?
 気持ち良ッ…。
 俺はクレハから不意に予想だにしなかった攻撃を受けてしまい、
 思わず彼女の顔を見た。
 クレハはいつもの武人めいたお堅い表情では無く、
 妖艶な女性の表情かおをしていた。

 えっ!?
 ええっーー!?

 俺はクレハの意外な一面に度肝を抜かれた。
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