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第141話 怒りの原因

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回復ヒーリング!」

 ミリィが行使した回復魔法が優羽花ゆうかのおでこに作用して、
 俺の頭突きで出来た腫れがみるみると引いていく。

「う…ううん…」

 腫れが引いていくと同時に優羽花も目を覚ました。
 大事無くて良かった…。
 俺は愛しい妹をぎゅっと抱きしめた。

「ふぇっ!?
お、お兄い…??」

 俺の急な抱擁に驚きの声を上げる優羽花。
 そりゃ起き掛けにいきなり抱きしめられたら、
 面食らうのも当然であろう。

「驚かせてごめんな。
優羽花が無事目を覚まして、
思わずほっとして抱きしめてしまった。
優羽花の頭を冷やして貰うために、
ちょっと強引な方法を取ってしまったからな…ごめん」

「…えっ、あたし…?
…ああ…
お兄の姿を見て…カッーとなって…
それでお兄に…頭突きされて…?」

「優羽花、聞いてくれ。
ポーラ姫とミリィは俺が疲れ果てて眠っているのを見つけて、
少しでも癒してあげたいと思って俺に添い寝をしてくれたんだ。
別に何もやましいことは何も無いんだ。
そして俺のお腹の上に乗っていた子は、
前に光の神殿で出逢った光の精霊だ。
急遽俺に力添えをしてくれることになってな。
此処に来てくれたと云う訳なんだ」

 俺は優羽花を強く抱きしめたまま、
 小さい子をあやすように
 その後頭を優しく撫でながら、
 優しく言い聞かせるように状況を説明した。

「…ん?
優羽花?
聞いているのか?」

「ふぇえ…だってお兄…みんなの前で…
こんなに強く抱きしめて…
は、恥ずかしいからぁ…」

「おっ、嫌だったか? それじゃあ」

 俺は優羽花から離れようとしたが
 我が妹は俺の腕を引き寄せると、
 俺の胸の中にふたたび顔をうずめた。

「…嫌じゃない。
だから、もう少しこのままでいさせて」

「おう」

 優羽花は完全に正気に戻っていた。
 俺は緊急事態とは言え、
 彼女を戻すために強引な手段を取ってしまったお詫びを含めて、
 優羽花の気が済むまで俺の胸を貸すことにした。

「まったく、優羽花は早とちり過ぎるぞ。
お前の頭の中で思ったことを俺がポーラ姫たちにすると思うか?」

「…思わない」

「だろ?」

「ははっ、伊達に25年間童貞はやってないからな。
そういえば優羽花は俺が静里菜せりなと仲良くしていた時も怒っていたなあ?
今ふいに思ったんだが…
もしかして俺が静里菜せりなと仲良くなって
お前の側からが居なくなると思って、
寂しくなって怒っていたのか?
それで今回のことでもポーラ姫たちと仲良くなって
自分の側から居なくなることを寂しく思って怒ったりしたのか?」

「…うっさい」

 優羽花はバツが悪そうに俺から視線を逸らした。
 その反応は図星の様である。

「ははっ、大丈夫だ。
俺から優羽花の側から居なくなるようなことは決して無い。
何たって俺は、優羽花のお兄ちゃんだからな」

 俺は優羽花の頭を優しくぽんと触れて、そう答えた。
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