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第130話 突撃回避

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「いやいやいや! ちょっと待てミリィ!」

 俺は声を上げてミリィの口づけを制止させようとする。
 しかし彼女は俺の声にまったく構うことなく、
 俺の唇に向かって真っすぐに突き進んだ。

「う、おおおおおお!!」

 俺は首の筋肉に気を通わせて伸縮性を向上させる。
 そして首を大きく逸らして、ミリィの口づけを紙一重でかわし切った。

「何で避けるんだい!?
非道いじゃないか兄君様あにぎみさま!」

 ミリィはぷくーと頬を膨らませて俺に怒りの言葉をぶつける。

「何でって…そりゃあ妹が兄がキスとかしちゃ駄目に決まっているからだろう!」

「これは妹を傷物にした兄君様あにぎみさまが責任を取る大切な儀式なんだよ!
ケイガ兄君様あにぎみさまはね!
この口づけを持って、これからずっとボクに…
ボクだけに永遠の愛を注ぐことを誓うのさ!」

「そ、それってつまり…
いわゆるケッコンということなんじゃ…!?」

「そうだよ兄君様あにぎみさま
兄が愛しい妹を傷物きずものにした責任を取る最善の方法は!
妹を妻としてめとるということさ!」

「ええええっーーーー!?」

 俺は驚きの余り声を上げてしまう。
 ちょっと待ってミリィさん!
 俺は其処までの非道をしでかしましたか?
 してないよね?

「いやいやいや!
ちょっと跡を付けたぐらいで
責任取ってケッコンとかおかしいだろう!
そもそも兄と妹がケッコンとか根本的におかしいだろう!

「何を言っているんだい兄君様あにぎみさま
兄と妹が結婚するなんて王侯貴族じゃ普通だよ。
大体ケイガ兄君様あにぎみさまとボクは血の繋がりは一切無いんだ。
ふふっ、何の問題も無いじゃないか?
さあ、兄君様あにぎみさま
覚悟を決めてボクの口づけを受け入れてよ!」

 ミリィはそう言うと再び俺の唇に目掛けて突撃を敢行する。

「うおおおおお!! 危ないッ!?」

 俺はふたたび首を大きく逸らしてミリィの口づけを間一髪かわし切る。

「往生際が悪いよ兄君様あにぎみさま
これはぷんすかだよ!!
ぷんすかアルティメットだよ!
むしろこれはぷんすかアルティメットドラゴンファイヤーブレスだよ!!!!」

 ミリィは訳がわからない言葉で俺に憤慨している。
 ぷんすかアルティメットドラゴン??
 この異世界エゾン・レイギスでの怒りを表現する単語なのだろうか?
 俺は異世界に来てまもないので言葉の意味は解らなかったが、
 ミリィが激しく怒っているのは伝わって来た。

 しかし彼女のテンションが異様に高すぎる。
 俺が知る限りミリィは理知的な性格であり、
 こんな感情に任せた行動は取らなかった筈なのである。
 俺は彼女の状態が普通では無いと感じた。

 …此処で俺はひとつの仮説に行き着いた。
 そしてその説を確認する為の行動を起こした。

 三度目になる俺の唇に目掛けての突撃を掛けてきたミリィ。
 俺はそんな彼女の顔を両手で受け止める。
 そしてミリィの柔らかな頬を摘まんで、強く引っ張った。
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