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第109話 …ちょっと待て!
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…ちょっと待て!
静里菜の可憐な唇に自身の顔を寄せて、
あと一寸で唇が重なる…と思ったその瞬間、
俺は急速に”違和感”に捉われて身を止めた。
ここは夢の中の筈なのである。
だが俺はここまで自由に事細かく思考して、
自身の身体をここまで細かく動かせているのは…
何かおかしくは無いだろうか??
夢の中とはもっと理不尽なものである。
自身の思考もままならず、
そして自身の身体を自分の意思で自由に動かすことなど出来ない。
夢の中の自分というものは、
自分の意思に反して勝手に動いていく自分の姿を見せられている様な、
いわば録画済みの動画再生の様な状態が普通なのである。
つまり俺が巫女萌えの意思で持って色々と思考した末に、
静里菜と此の様な行為に及ぼうとする事など、あり得ないのである。
「…な、なあ、静里菜?
今の此処って…
本当に俺の夢の中のセカイなのかな?」
俺は目の前の静里菜に、恐る恐る聞いてみた。
彼女が俺の夢の中の人物であるなら、
俺の急な問いかけに答えることは出来ない筈である。
例えるならRPGゲームの街の住人の台詞がいつも同じで、
違う台詞は用意されていない様な感じだ。
俺は目の前の彼女が予想外の行動には対応出来ず、
言葉を噤むことを期待した。
だが俺の期待に反して、
静里菜は俺の顔を真剣な眼差しで見つめながら口を開いた。
「兄さん。
此処が兄さんの夢の中のセカイであることに間違いはありませんよ。
でも正確には、兄さんの夢のセカイを土台に構築した精神世界といったところでしょうか?」
「…どういうことなの?」
「わたしは兄さんと優羽花と共に異世界に飛ばされましたが、
わたしだけは地ノ宮神社の御祭神の加護で元のセカイに無事戻ることが出来ました。
ですが異世界に残したままの兄さんと優羽花がとても心配でした。
社の蔵の書物を紐解いて、
異世界に兄さん達を迎えに行くための巫術の方法を調べながら
すぐに異世界に行くことは敵わなくても、
まずは連絡を取って無事の確認を出来ないかと考えました。
そこでふたりにお渡しした符で異世界の座標を特定し、
ふたりに掛けた『護り巫女の加護』を起点として巫術を行使、
ふたりの夢の世界にわたしの”精神体”を送り込みました。
ですが夢の世界は虚ろ気なセカイですから、
このままではわたしの精神体が兄さん達と接触出来たとしても、
言葉を交わすことも難しいです。
そこで巫術を用いて、兄さんの夢のセカイを
明確に意思と行動が出来る精神世界として再構築したという訳です」
「ええと、つまり…俺が今押し倒している静里菜は…
夢の中の人物とかじゃなくて…
”本物の静里菜”ってことなのか!?」
「はい、もちろんです兄さん」
「な…? なっ…!? 何いいいいーーーー!!??」
俺は驚愕の余り絶叫した。
静里菜の可憐な唇に自身の顔を寄せて、
あと一寸で唇が重なる…と思ったその瞬間、
俺は急速に”違和感”に捉われて身を止めた。
ここは夢の中の筈なのである。
だが俺はここまで自由に事細かく思考して、
自身の身体をここまで細かく動かせているのは…
何かおかしくは無いだろうか??
夢の中とはもっと理不尽なものである。
自身の思考もままならず、
そして自身の身体を自分の意思で自由に動かすことなど出来ない。
夢の中の自分というものは、
自分の意思に反して勝手に動いていく自分の姿を見せられている様な、
いわば録画済みの動画再生の様な状態が普通なのである。
つまり俺が巫女萌えの意思で持って色々と思考した末に、
静里菜と此の様な行為に及ぼうとする事など、あり得ないのである。
「…な、なあ、静里菜?
今の此処って…
本当に俺の夢の中のセカイなのかな?」
俺は目の前の静里菜に、恐る恐る聞いてみた。
彼女が俺の夢の中の人物であるなら、
俺の急な問いかけに答えることは出来ない筈である。
例えるならRPGゲームの街の住人の台詞がいつも同じで、
違う台詞は用意されていない様な感じだ。
俺は目の前の彼女が予想外の行動には対応出来ず、
言葉を噤むことを期待した。
だが俺の期待に反して、
静里菜は俺の顔を真剣な眼差しで見つめながら口を開いた。
「兄さん。
此処が兄さんの夢の中のセカイであることに間違いはありませんよ。
でも正確には、兄さんの夢のセカイを土台に構築した精神世界といったところでしょうか?」
「…どういうことなの?」
「わたしは兄さんと優羽花と共に異世界に飛ばされましたが、
わたしだけは地ノ宮神社の御祭神の加護で元のセカイに無事戻ることが出来ました。
ですが異世界に残したままの兄さんと優羽花がとても心配でした。
社の蔵の書物を紐解いて、
異世界に兄さん達を迎えに行くための巫術の方法を調べながら
すぐに異世界に行くことは敵わなくても、
まずは連絡を取って無事の確認を出来ないかと考えました。
そこでふたりにお渡しした符で異世界の座標を特定し、
ふたりに掛けた『護り巫女の加護』を起点として巫術を行使、
ふたりの夢の世界にわたしの”精神体”を送り込みました。
ですが夢の世界は虚ろ気なセカイですから、
このままではわたしの精神体が兄さん達と接触出来たとしても、
言葉を交わすことも難しいです。
そこで巫術を用いて、兄さんの夢のセカイを
明確に意思と行動が出来る精神世界として再構築したという訳です」
「ええと、つまり…俺が今押し倒している静里菜は…
夢の中の人物とかじゃなくて…
”本物の静里菜”ってことなのか!?」
「はい、もちろんです兄さん」
「な…? なっ…!? 何いいいいーーーー!!??」
俺は驚愕の余り絶叫した。
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