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第108話 心の赴くままに

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「う、うおおおお!」

 俺は歓喜の声を上げながら静里菜せりなを強く抱きしめた。
 そして巫女服の感触を思う存分に堪能する。

「ふふ…兄さんったら…。
そんなに焦らなくても、わたしは逃げませんから」

 静里菜せりなは、にこやかな笑顔を浮かべながら俺の抱擁を受け止めた。
 そして俺の背中にその華奢な手を添えた。

 俺は所詮、生粋の巫女さん萌えである。
 そして巫女さんが纏う巫女装束には目が無い。
 俺にはその可憐な紅白の魅力みりきに逆らうすべは無い。
 だが、あまり静里菜せりなの巫女服に夢中になっていると
 優羽花ゆうかが何故か怒り出すので適当に切り上げる必要があった。
 そもそも静里菜せりなも俺の大切な妹なのだ。
 そんな彼女に対して何の遠慮も無く己の欲望をぶつけるなど、
 兄として出来る訳が無いのである。

 だが、今は俺の夢の中である。
 つまり優羽花ゆうかは居ない。
 そして静里菜せりなも俺の夢の中の想像であって、本人では無い。
 だから何の気兼ねをすること無く、
 静里菜せりなの巫女服を堪能することが出来るのである。
 まさにやりたい放題という訳である。
 俺は欲望のままに、静里菜せりなの巫女服をカラダに染み付ける。

「あン!? に、兄さん…あの、そんなに激しく動かれると…きゃあっ!?」

 俺はたかぶる”巫女萌え力みこもえぢから”の余り、思わず静里菜せりなを押し倒してしまった。


「兄さん…」

「静里菜…」


 覆い被さる格好になった俺の真下で、
 可憐な巫女装束を纏った静里菜がその身体を地に倒れ伏している。
 何という背徳的な画なのだろうか…。
 更には彼女の綺麗な黒髪が紅白の巫女服に絡みついて背徳感が増している。

 俺は心の赴くままに、静里菜の頬に手を添えた。

「静里菜…可愛い…」

 俺は思いのままの言葉をそのまま口にした。
 いつもの俺なら絶対言わないであろう言葉。

 地ノ宮 静里菜ちのみや せりな
 妹歴16年の俺のかけがえのない愛しい妹。
 彼女の家は神社であり、
 静里菜は生粋の巫女さんである。
 そして俺は生粋の巫女萌えである。
 俺が”只の男”であれば、彼女にぞっこんになっても止む無しであろう。

 だが俺と静里菜は只の男女の関係では無いのだ。
 血の繋がりは無くとも兄と妹の関係なのである。
 兄は妹を性的な目で見てはいけない。
 それが兄の絶対的な心得である。
 俺は常にそれを心掛けている。
 だから俺は妹たち相手に自身をさらけ出す様なことはしない。
 そう成らない様に理性を保っているのである。

 だが今は夢の中のセカイ。
 此処でなら俺は、欲望のままに振る舞っても良いんじゃないか?
 と、俺は思ったのである。

 そして俺はその思いのままに、
 静里菜に対して、こんなにも…
 自身の顔を近付けてしまっている。
 お互いの吐息が感じられる様な距離にまで。

 ああ、俺は…
 所詮”男”であることを強く実感した。
 色々と言葉を並べ立てても、
 結局のところ…可憐な巫女さんとこういう風に成りたかったのだろう。
 静里菜ごめん…俺は…夢の中とは言え…
 愛しい妹である静里菜に対してこんなことをして…
 俺は夢の中の静里菜に心の中で謝りながら
 彼女の顔に自分の顔を更に近付けた。
 何という矛盾した行為だろうか。
 俺は自分の愚かさを呪った。
 俺は自分の欲望に完全に負けたのだ。

「静里菜…俺は…俺は…」

「…はい、兄さん」

 静里菜はその可憐な目を閉じた。
 俺は彼女のその行為を同意と判断した。
 そして静里菜の可憐な唇に向けて、自身の唇を近寄せた。
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