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第105話 助言

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 この異世界エゾン・レイギスに召喚された俺と優羽花ゆうかは、
 召喚された異世界人の抹殺の為に待ち伏せていた、
 魔族の騎士ディラムと戦う事になった。
 奴の強力な剣技に対抗するために、
 俺は気を付与して肉体強度をはがね並に引き上げる技、
 『地ノ宮流気士術ちのみやりゅうきしじゅつ三の型、金剛こんごう』を行使して互角に渡り合った。

 だが奴が放った強力な斬撃波ざんげきはの技の威力は、
 『金剛こんごう』での防御態勢をも貫いた。
 魔族の闇の魔力で傷を受けると、
 回復が阻害されてしまうと言うのがポーラ姫の弁である。
 そして俺はその言葉通りに腕すらもまともに動かせなくなってしまい、
 戦闘不能に陥ってしまったのである。

 …魔族との初戦は俺の完全な敗北であった。
 もし優羽花ゆうかが勇者の力に覚醒しなければ、
 俺は其処で命すらも失ったかも知れないのだ。

 これからの魔族との戦いに於いて、
 武器を持った魔族と真正面から渡り合う為には、
 こちらが生身のままでは圧倒的に不利である。
 何しろ魔族の闇の魔力で傷を受ければ、
 それだけでこちらの戦闘力が削がれてしまうのだから。
 こちらも武器が必要だろう。
 俺は今まで格闘戦を主体としていた以上、
 武器を持った戦法に完全に切り替えることは出来ないだろう。
 無理やり武器を主体の戦法に変えても、
 並の相手ならともかく…
 ディラムの様な凄腕の剣士が相手では、
 只の付け焼き刃となってしまうからである。

 だから武器を常に携帯することによって、
 あくまで格闘戦を主体としつつも、
 補佐として武器による戦法も使用出来る様にして、
 臨機応変に対応が出来る様にするのである。
 別に新たな戦法を取る訳では無い、
 様は元の世界で俺が『鬼』と戦っていた時と同じ様な態勢にするだけなのだ。

 シノブさん曰く、
 しばらくするとポーラ姫とミリィが、
 今後の話をする為に此の部屋に来るとのことである。
 丁度良い機会である。
 そこでポーラ姫に俺の武器を準備してもらえないか頼んでみよう。


 俺はこれからの戦いで自分がどうするかについての考えをまとめた。
 そして手にしていた中剣ミドルソードを鞘に納め剣掛つるぎかけに戻した。

 なるほど…俺をこの様な考えに至らせるために、
 この剣は俺に抜かせたのかも知れない。
 ファイズ殿下の意思が俺を導いたとか?
 少しオカルト的な考えが俺の脳裏に浮かんだ。
 実際の所はわからない。
 只の偶然かも知れないのだから。

 でも俺は、この出来事を素直に”助言”として受け取ることにした。

 この異世界はわからないことだらけである。
 一体何が正しい判断なのか…異世界に来たばかりの俺には判別は出来ない。
 だがその正解を掴み取らなければ、
 この戦いに溢れたセカイで瞬く間に命を失いかねない。
 だから俺は今自分が出来る最善の備えとして、
 武器を所持することを決めたのである。
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