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第101話 銭湯終了!

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「シノブさん! とにかく!
今後は姫騎士団プリンセスナイツは、
俺と一緒にお風呂に入らないという事でお願いしますね!」

 俺は己の分身の冷却を完了して平静を取り戻すと、
 シノブさんに向けてはっきりと強く意見を述べた。
 彼女に対しては、
 誤解が無い様に具体的に言葉にして言わないとダメだと、
 俺は散々思い知ったからである。

「しかしそれではケイガ兄様の警護が」

「自分の身は自分で護りますから大丈夫です!」

 俺は有無を言わさずぴしゃりと言い切った。

「ケイガ兄様がそこまで強くおっしゃるなら…これ以上は申しません。
今後は兄様と一緒に入浴は出来ないという事ですね」

「そうなりますね!」

「…妹としてはちょっと残念です」

 シノブさんは声の調子を下げ、肩を落とし、落胆の表情かおを見せた。

 …うっ。
 俺はその姿に後ろ髪を引かれる思いに駆られた。
 一瞬訂正すら考えるほどに。

 いやいやいや!
 幼い頃の妹ならいざ知らず!
 年頃の妹と一緒にお風呂とかダメだから!
 妹歴16年の優羽花ゆうか静里菜せりなだって一緒に入ってなかったからね!

 シノブさんのしおらしい姿にあっさり意思が揺らぐ俺。
 自分をしっかり持てえ俺え!
 俺は自分に叱咤すると、洗い場の椅子から立ち上がった。

「それじゃあ俺は先に上がりますよ」

「でしたら私も」

「…一緒に上がっちゃダメでしょうっ!
俺が着替えて銭湯から出たら上がって下さいね!」

 このひと…やっぱり何もわかってない…。
 男女が同時に着替えとかおかしいでしょうっ!?
 風呂上りまで俺をドキドキさせるのは止めて下さいね!


 俺は浴場の扉を開けて脱衣室へと戻った。
 そして籠の中にあった大きなタオルで全身を拭いて水滴を取り切った。

 俺が此処を出たら上がって来て下さいとシノブさんに言った以上、
 手早く退出しなければなるまい。
 急ぎ俺は籠の中の寝巻の様な衣服に袖を通した。
 うん、これはどう見ても…日本の浴衣ゆかただ!
 衣服の面でもしっかり日本文化だった。
 銭湯一式をこの聖王国に完全に再現した先人の日本人は凄いなあと、
 俺は改めて思った。
 その情熱と行動力は俺も見習うべき部分があるかも知れない。


 俺は『ゆ』とひらがなで書かれた青の暖簾のれんをくぐって銭湯を出た。
 ふう…戦闘、もとい銭湯終了である。
 しかしある意味これは”戦闘”と呼べるものであったかも知れない。
 俺の兄の尊厳を賭けた、自分自身の心の戦いであった。
 そしてその戦いに勝敗を付けるとするなら…惨敗である。
 それ程迄に、兄としては妹たちに無様な醜態を晒してしまったのである。

 俺はさっき、その原因をシノブさんのポンコツ具合のせいにしていたが、
 結局のところ、俺がまだまだ兄として至らないから…
 この様な事態になっただけなのである。
 シノブさんも、ツツジも、そして優羽花ゆうかも悪くない。
 俺が兄として未熟だからこそ招いた結果なのだ。

 明日からは心機一転、心身ともに一から鍛え直すしかあるまい。
 そして一刻も早く、
 『俺には性欲が無い…』
 と、決め顔でクールに受け流すような立派なお兄様にならないと!
 そうじゃないと…兄の理性が持たん時が来ているのだ!

 俺は兄としての決意を強く固めた。
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