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第96話 過小評価
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俺は温かいお湯の中に全身を浸からせて心を落ち着かせた。
何だか久しぶりに穏やかな時を過ごせている気がする。
それにしても少し前の浴場での出来事は俺には余りに刺激が強すぎた。
いやあ…どうしてこうなった?
原因は解っている。
俺が姫騎士団の団員の一人であるツツジと一緒にお風呂に入ることになったことが起因している。
つまり姫騎士団の団長であるシノブさんの判断ミスなのである。
彼女は俺の妹たちで唯一、俺が”男性”であることを察した筈なのだ。
そうだったにも関わらず、この事態を引き起こしたのである。
さっき俺が彼女に話したいことがあると言ったのは、この事についてなのである。
俺が男性であることを察したのなら、
何故俺に何の相談も無く、ツツジを一緒に風呂に入らせたんですかあ!
あなたは俺が男性であると本当に察したのか問いたい!
問い詰めたい!
小一時間程問い詰めたい!
…あなた、本当は何もわかっていないでしょおっ!?
俺は心の中でシノブさんに思いっきり糾弾した。
流石にこの激しい物言いのままで彼女に問うつもりは無い。
しかし言葉を選んで彼女に是正を促すことは必須である。
そうしなければ…俺は今後も同じような事で苦労することになるであろうから。
しかし…それにしても…静かである。
俺は両手を、両足を、背中を伸ばして、大きく息を吸い、吐いて、心の底からリラックスをした。
「はあ…やはりひとりで入る風呂は最高だあ…」
「なるほど、ケイガ兄様はおひとりでお風呂に入られるのが好みなのですね」
「そりゃあそうでしょう?
何の気兼ねも無く、一人で自由に身体を洗い、自由にお湯に浸かる…
それが俺としてのお風呂の至高ですよ。
…って! シノブさんいつの間にいいいっーー!!」
いつの間にか隣で全身をお湯に浸からせていた姫騎士団の団長シノブさんの姿に俺は仰天した。
「はい、今さっき此処に。
ケイガ兄様は私に話があるとおっしゃいましたので、
ユウカ様を寝室を送り届けました折、急ぎ戻って来ました」
…そ、そんな、全く気配を感じなかった。
俺は半年間の引き籠りでかなり衰えているとは言え、地ノ宮流気士術の気士。
並の相手であれば、背後から忍び寄ってくる気配でも感じ取れるのである。
俺は先程、姫騎士団の中でも気配を隠す事に最も優れているという『暗器騎士』を務めるツツジの気配を感じ取れず後れを取った。
そしてたった今、シノブさんの気配も全く感じ取ることは出来なかった。
姫騎士団を統べる団長ともなればこれぐらいは当然ということなのか…?
自分は姫騎士団の、そして団長シノブさんの力を過小評価していたのかも知れない。
ここに来て俺は、自分の考えの甘さ、そして自分の未熟さを痛感した。
セカイは広い。
俺よりも高い能力を持つ者は幾らでもいるという事なのだ。
…いや、今はそれよりもですね!
俺は自分の隣で悠々とお風呂に浸かっている全裸の美人女騎士さんに向かって口を開いた。
何だか久しぶりに穏やかな時を過ごせている気がする。
それにしても少し前の浴場での出来事は俺には余りに刺激が強すぎた。
いやあ…どうしてこうなった?
原因は解っている。
俺が姫騎士団の団員の一人であるツツジと一緒にお風呂に入ることになったことが起因している。
つまり姫騎士団の団長であるシノブさんの判断ミスなのである。
彼女は俺の妹たちで唯一、俺が”男性”であることを察した筈なのだ。
そうだったにも関わらず、この事態を引き起こしたのである。
さっき俺が彼女に話したいことがあると言ったのは、この事についてなのである。
俺が男性であることを察したのなら、
何故俺に何の相談も無く、ツツジを一緒に風呂に入らせたんですかあ!
あなたは俺が男性であると本当に察したのか問いたい!
問い詰めたい!
小一時間程問い詰めたい!
…あなた、本当は何もわかっていないでしょおっ!?
俺は心の中でシノブさんに思いっきり糾弾した。
流石にこの激しい物言いのままで彼女に問うつもりは無い。
しかし言葉を選んで彼女に是正を促すことは必須である。
そうしなければ…俺は今後も同じような事で苦労することになるであろうから。
しかし…それにしても…静かである。
俺は両手を、両足を、背中を伸ばして、大きく息を吸い、吐いて、心の底からリラックスをした。
「はあ…やはりひとりで入る風呂は最高だあ…」
「なるほど、ケイガ兄様はおひとりでお風呂に入られるのが好みなのですね」
「そりゃあそうでしょう?
何の気兼ねも無く、一人で自由に身体を洗い、自由にお湯に浸かる…
それが俺としてのお風呂の至高ですよ。
…って! シノブさんいつの間にいいいっーー!!」
いつの間にか隣で全身をお湯に浸からせていた姫騎士団の団長シノブさんの姿に俺は仰天した。
「はい、今さっき此処に。
ケイガ兄様は私に話があるとおっしゃいましたので、
ユウカ様を寝室を送り届けました折、急ぎ戻って来ました」
…そ、そんな、全く気配を感じなかった。
俺は半年間の引き籠りでかなり衰えているとは言え、地ノ宮流気士術の気士。
並の相手であれば、背後から忍び寄ってくる気配でも感じ取れるのである。
俺は先程、姫騎士団の中でも気配を隠す事に最も優れているという『暗器騎士』を務めるツツジの気配を感じ取れず後れを取った。
そしてたった今、シノブさんの気配も全く感じ取ることは出来なかった。
姫騎士団を統べる団長ともなればこれぐらいは当然ということなのか…?
自分は姫騎士団の、そして団長シノブさんの力を過小評価していたのかも知れない。
ここに来て俺は、自分の考えの甘さ、そして自分の未熟さを痛感した。
セカイは広い。
俺よりも高い能力を持つ者は幾らでもいるという事なのだ。
…いや、今はそれよりもですね!
俺は自分の隣で悠々とお風呂に浸かっている全裸の美人女騎士さんに向かって口を開いた。
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