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第90話 通常営業
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「…優しくしないとダメなんだからね、お兄」
優羽花は身体に巻いていたタオルを下ろすと、俺にその健康的な血色の良い背中を見せた。
「ああ、わかってるよ。優羽花」
俺は優羽花の後に椅子を置くと其処に座った。
そしてハンドタオルを手に取ると優羽花の背中に添えて擦り始める。
「しかしどういう風の吹き回しなんだ優羽花?
俺の記憶ではお前が小学生の何時頃だったか?
六年生ぐらいだったかなあ…突然、「いつまでも子供扱いしないで!」
と言いだして、俺と一緒にお風呂に入るのを拒否した記憶があるぞ?
それなのに今になって優羽花から背中を流して欲しいって言うとは思わなかったぞ?」
「べ、別にいいじゃない…。
それに…ツツジさんだけ背中を洗ってもらうなんて…ず、ずるいし…」
「ずるいってお前なあ…俺は特定の妹ひとりを特別扱いはしていないつもりだぞ?」
「お兄のそういうところは昔から知ってるわよ!
でも今のは気を利かせて聞き流しなさいよ!
この馬鹿お兄い!」
あいかわらず理不尽である。
だがこの勝手振りが優羽花の優羽花たる所以である。
さっき言った、優羽花が俺と一緒にお風呂に入るのを拒否した時だって静里菜が、
「兄さん、わたしは今まで通り一緒に入りますね」と答えたら、
「静里菜だけずるい! あたしも入る!」と即訂正して来たのだ。
だから今回の振る舞いも優羽花の通常営業というべきであろう。
俺からすれば特に気に留めることでは無いのだ。
とにかく、優羽花の背中を流すのは久しぶりである。
俺はハンドタオルを持った手を彼女の背の上で優しく動かし続ける。
「…ん…。…んっ」
俺の手が動く度に優羽花の気持ち良さげな声が漏れる。
「…お、お兄。背中洗うのずいぶんと上手いんじゃないの…?」
「ははっ。昔、優羽花と静里菜の背中を良く流していたのは伊達じゃないってことさ。
…それじゃあアップはこれぐらいでいいかな?
アクセルを入れていくぞ優羽花!」
「えっ? ちょっとお兄!? …あっ…あっ…」
俺は優羽花の背中に這わせていた手の動きを、力強さと優しさを織り交ぜて、緩急を付けた動きに変えた。
「ちょっ…ああ…お兄…」
「どうだ? 気持ち良いだろ?」
「そ、そんな…気持ち良く…なんて…あっ」
「そんなことは無いだろ?
それに俺は昔、優羽花を洗っていたからなあ。
どこが一番気持ち良いかも知っているつもりだぞ?」
「ちょ、ちょっと馬鹿お兄…何言ってのよ! …ああっ!?」
優羽花は強がりながらも俺の動きに対して悦びの声を上げる。
素直じゃないのは優羽花の真骨頂。
アニメや漫画で言う所のツンデレのツン全開であろう。
だが俺はそんな素直じゃない彼女に対して、ちょっとだけ意地悪をしたくなってしまった。
そしてこれは兄の前では妹はもう少し気を緩めて楽になって欲しいという、俺の勝手な我儘でもある。
俺は優羽花の背中に添えた手に更に力を込めた。
優羽花は身体に巻いていたタオルを下ろすと、俺にその健康的な血色の良い背中を見せた。
「ああ、わかってるよ。優羽花」
俺は優羽花の後に椅子を置くと其処に座った。
そしてハンドタオルを手に取ると優羽花の背中に添えて擦り始める。
「しかしどういう風の吹き回しなんだ優羽花?
俺の記憶ではお前が小学生の何時頃だったか?
六年生ぐらいだったかなあ…突然、「いつまでも子供扱いしないで!」
と言いだして、俺と一緒にお風呂に入るのを拒否した記憶があるぞ?
それなのに今になって優羽花から背中を流して欲しいって言うとは思わなかったぞ?」
「べ、別にいいじゃない…。
それに…ツツジさんだけ背中を洗ってもらうなんて…ず、ずるいし…」
「ずるいってお前なあ…俺は特定の妹ひとりを特別扱いはしていないつもりだぞ?」
「お兄のそういうところは昔から知ってるわよ!
でも今のは気を利かせて聞き流しなさいよ!
この馬鹿お兄い!」
あいかわらず理不尽である。
だがこの勝手振りが優羽花の優羽花たる所以である。
さっき言った、優羽花が俺と一緒にお風呂に入るのを拒否した時だって静里菜が、
「兄さん、わたしは今まで通り一緒に入りますね」と答えたら、
「静里菜だけずるい! あたしも入る!」と即訂正して来たのだ。
だから今回の振る舞いも優羽花の通常営業というべきであろう。
俺からすれば特に気に留めることでは無いのだ。
とにかく、優羽花の背中を流すのは久しぶりである。
俺はハンドタオルを持った手を彼女の背の上で優しく動かし続ける。
「…ん…。…んっ」
俺の手が動く度に優羽花の気持ち良さげな声が漏れる。
「…お、お兄。背中洗うのずいぶんと上手いんじゃないの…?」
「ははっ。昔、優羽花と静里菜の背中を良く流していたのは伊達じゃないってことさ。
…それじゃあアップはこれぐらいでいいかな?
アクセルを入れていくぞ優羽花!」
「えっ? ちょっとお兄!? …あっ…あっ…」
俺は優羽花の背中に這わせていた手の動きを、力強さと優しさを織り交ぜて、緩急を付けた動きに変えた。
「ちょっ…ああ…お兄…」
「どうだ? 気持ち良いだろ?」
「そ、そんな…気持ち良く…なんて…あっ」
「そんなことは無いだろ?
それに俺は昔、優羽花を洗っていたからなあ。
どこが一番気持ち良いかも知っているつもりだぞ?」
「ちょ、ちょっと馬鹿お兄…何言ってのよ! …ああっ!?」
優羽花は強がりながらも俺の動きに対して悦びの声を上げる。
素直じゃないのは優羽花の真骨頂。
アニメや漫画で言う所のツンデレのツン全開であろう。
だが俺はそんな素直じゃない彼女に対して、ちょっとだけ意地悪をしたくなってしまった。
そしてこれは兄の前では妹はもう少し気を緩めて楽になって欲しいという、俺の勝手な我儘でもある。
俺は優羽花の背中に添えた手に更に力を込めた。
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