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第89話 優羽花(ゆうか)、襲来
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男湯の浴場の扉がガラッと開いて、優羽花が入って来た。
素肌にバスタオルをひと巻きした姿で身体も髪も濡れたままの姿。
優羽花はすたすたと俺の前にやって来ると、腕を組んで仁王立ちした。
その凄まじい迫力に、背後から金剛力士の形をした怒りの気が立ち昇っている様に俺は錯覚した。
優羽花の後ろにシダレが息を荒げて走って来た。
彼女も素肌にバスタオルをひと巻きした姿で身体も髪も濡れたままの姿。
なるほど…俺の警護の為にツツジが一緒にお風呂に入ったのと同じように、優羽花を警護する為にシダレが一緒に入っていたという事か。
「ど、どうしたんだ優羽花、ここは男湯だぞ?
女の子が入って来ちゃまずいだろう?」
「…その男湯から女の子の声がしたから急いで来たんですけど?」
優羽花はさっきの怒気を含んだ声とは裏腹に、落ち着いた静かな声で俺に問いかける。
…逆に怖いっ!?
「…そのお兄の後ろに隠している子は誰なのかなあ?」
俺はいつの間にかツツジを庇う様に彼女の前に居た様である。
優羽花の怒りの気に俺の身体は無意識に反応して動いたという事か。
この行為が更に優羽花に疑念を持たせてしまったのだろうか?
その睨みを利かせた眼差しが更に厳しいものになっていく。
「別に俺は隠してない! 俺に何もやましいことは無いからな!」
「だったら後ろの子を早く見せなさいよ!」
「…あの…ユウカ様、ツツジです。
兄様の警護の為に一緒にお風呂入りました…」
ツツジが自分から俺の前に歩み出て、優羽花に答える。
「ユウカ様ー!
シダレがユウカ様の警護の為に一緒にお風呂に入ったのと同じで、ツツジはケイガ様の警護で一緒に入ったんだよー!」
シダレが矢継ぎ早にツツジに擁護の言葉をかけた。
ナイスアシストだぞシダレ!
「そ、そうなの…?
それだったら最初からそう言って欲しかったんだけど…」
優羽花の怒りの気がみるみる弱まっていく。
流石は妹歴16年の俺の愛しい妹、話せば解るのである。
「…でも何でツツジさんがあんな大きい声を上げたのかなあ?
お兄? 何か変な事をしたんじゃないの?」
優羽花がいわゆるジト目という奴で俺に疑惑の目線を向けた。
「俺が愛しい妹たちに対してやましいことなどする訳が無いだろう」
「それじゃあ何していたのよ?」
「俺はツツジの背中を洗っていただけだよ。
昔、子供の頃の優羽花と静里菜の背中をよく流していただろう?
あの時と同じ様にしていただけさ」
俺は自信たっぷりにそう答えた。
その言葉に嘘偽りは無い。
…まあ我慢しているツツジを素直にさせたくて、ちょっぴりだけ強く磨いたが、それでも俺にやましい気持ちは一切無かった。
兄である俺にもっと心を緩めて楽になって欲しかった…それだけなのだ。
「…ふうん、そうなんだ」
優羽花はそう言うと俺から踵を返し、洗い場の椅子に腰かけた。
「それじゃあ、あたしも背中流してもらおうっと。
お願いね、お兄!」
素肌にバスタオルをひと巻きした姿で身体も髪も濡れたままの姿。
優羽花はすたすたと俺の前にやって来ると、腕を組んで仁王立ちした。
その凄まじい迫力に、背後から金剛力士の形をした怒りの気が立ち昇っている様に俺は錯覚した。
優羽花の後ろにシダレが息を荒げて走って来た。
彼女も素肌にバスタオルをひと巻きした姿で身体も髪も濡れたままの姿。
なるほど…俺の警護の為にツツジが一緒にお風呂に入ったのと同じように、優羽花を警護する為にシダレが一緒に入っていたという事か。
「ど、どうしたんだ優羽花、ここは男湯だぞ?
女の子が入って来ちゃまずいだろう?」
「…その男湯から女の子の声がしたから急いで来たんですけど?」
優羽花はさっきの怒気を含んだ声とは裏腹に、落ち着いた静かな声で俺に問いかける。
…逆に怖いっ!?
「…そのお兄の後ろに隠している子は誰なのかなあ?」
俺はいつの間にかツツジを庇う様に彼女の前に居た様である。
優羽花の怒りの気に俺の身体は無意識に反応して動いたという事か。
この行為が更に優羽花に疑念を持たせてしまったのだろうか?
その睨みを利かせた眼差しが更に厳しいものになっていく。
「別に俺は隠してない! 俺に何もやましいことは無いからな!」
「だったら後ろの子を早く見せなさいよ!」
「…あの…ユウカ様、ツツジです。
兄様の警護の為に一緒にお風呂入りました…」
ツツジが自分から俺の前に歩み出て、優羽花に答える。
「ユウカ様ー!
シダレがユウカ様の警護の為に一緒にお風呂に入ったのと同じで、ツツジはケイガ様の警護で一緒に入ったんだよー!」
シダレが矢継ぎ早にツツジに擁護の言葉をかけた。
ナイスアシストだぞシダレ!
「そ、そうなの…?
それだったら最初からそう言って欲しかったんだけど…」
優羽花の怒りの気がみるみる弱まっていく。
流石は妹歴16年の俺の愛しい妹、話せば解るのである。
「…でも何でツツジさんがあんな大きい声を上げたのかなあ?
お兄? 何か変な事をしたんじゃないの?」
優羽花がいわゆるジト目という奴で俺に疑惑の目線を向けた。
「俺が愛しい妹たちに対してやましいことなどする訳が無いだろう」
「それじゃあ何していたのよ?」
「俺はツツジの背中を洗っていただけだよ。
昔、子供の頃の優羽花と静里菜の背中をよく流していただろう?
あの時と同じ様にしていただけさ」
俺は自信たっぷりにそう答えた。
その言葉に嘘偽りは無い。
…まあ我慢しているツツジを素直にさせたくて、ちょっぴりだけ強く磨いたが、それでも俺にやましい気持ちは一切無かった。
兄である俺にもっと心を緩めて楽になって欲しかった…それだけなのだ。
「…ふうん、そうなんだ」
優羽花はそう言うと俺から踵を返し、洗い場の椅子に腰かけた。
「それじゃあ、あたしも背中流してもらおうっと。
お願いね、お兄!」
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