85 / 556
第85話 体たらく
しおりを挟む
男とは、かく面倒くさい生き物である。
恥ずかし気なく堂々と肌を見せつけてくる女性よりも、その中に恥じらいを見せてくれた女性のほうが心に来るのである。
ツツジは恥ずかしながらも一緒に風呂に入って来たという事実を漏らすことで、俺の心に直接攻撃を仕掛けてきたのである。
俺は其れに為す術もなく撃沈寸前である。
姫騎士団の中でおそらく最年少。大人しい性格のメカクレ少女、ツツジ。
見目麗しい美女、美少女揃いの姫騎士団の中であって、最も幼い感じで性格も控えめな彼女は、他の団員よりも俺にとっては安心感があったのだ。
そう…正直なところ俺はツツジの力を見くびっていたのである。
…だが実際はこの有様である。
何という破壊力か!
ツツジ! 恐ろしい子!
「…あの、兄様…。
あまりツツジを見ないで…恥ずかしい…です…」
彼女は表情をより一層赤らめて俺に訴えかけた。
「ああっ…ご、ごめん…」
俺は急ぎ彼女から視線を逸らして反対側に座り直した。
自分の頬が熱いのを感じる。
ツツジに対して俺は、感情を言葉にも表情にも出し過ぎている気がする。
兄としての振る舞いとしてこれは失格である。
兄は妹に頼りにされるべき存在なのだ。
だから兄は妹に動揺している姿をやすやすと見せてはいけないのである。
俺は心身を引き締める。
「…兄様。それじゃ、さっきの続き…お背中を洗いますね…」
「えっ…?
そんな悪いから良いよ…ああうっ!?
…き、気持ちいい…」
「ふふ…ツツジは姫騎士団のみんなからも背中を洗うのは上手いって評判なんです…」
「ああ…そ…そんな…ツツジ…もう良いから…疲れるだろ
わ、悪いから…ああっ! 気持ち良っ…」
「…兄様、失礼ながら…けっこうお背中汚れているみたい…。
…せっかくだから、ツツジが綺麗にして差し上げます…」
「あっ…あっ…、ツ、ツツジ…そんな動きされたら俺は…」
「…兄様、気持ちよかったら言ってくださいね…そこを集中して磨きますから…」
「そんなこと言っても…ツツジの触れる所はみんな気持ちいから…ああっ…」
「…でしたら…ツツジに全てお任せ下さい…」
「…ツツジ…凄い…凄い良い…ああっ…ツツジぃ…」
「…兄様…」
「…はあっ! ツツジぃ! そこは…駄目ええええーーー!?」
俺は兄の身でありながら、愛しい妹であるツツジの背中磨きに思わず悦びの声を上げてしまい、放心してその頭をうなだれさせてしまった。
兄は妹に動揺している姿をやすやすと見せてはいけない。
だから俺は心身を引き締めたばかりだというのに、この始末…。
…何という体たらくか…。
…このっ! 情けない兄ッ!!
恥ずかし気なく堂々と肌を見せつけてくる女性よりも、その中に恥じらいを見せてくれた女性のほうが心に来るのである。
ツツジは恥ずかしながらも一緒に風呂に入って来たという事実を漏らすことで、俺の心に直接攻撃を仕掛けてきたのである。
俺は其れに為す術もなく撃沈寸前である。
姫騎士団の中でおそらく最年少。大人しい性格のメカクレ少女、ツツジ。
見目麗しい美女、美少女揃いの姫騎士団の中であって、最も幼い感じで性格も控えめな彼女は、他の団員よりも俺にとっては安心感があったのだ。
そう…正直なところ俺はツツジの力を見くびっていたのである。
…だが実際はこの有様である。
何という破壊力か!
ツツジ! 恐ろしい子!
「…あの、兄様…。
あまりツツジを見ないで…恥ずかしい…です…」
彼女は表情をより一層赤らめて俺に訴えかけた。
「ああっ…ご、ごめん…」
俺は急ぎ彼女から視線を逸らして反対側に座り直した。
自分の頬が熱いのを感じる。
ツツジに対して俺は、感情を言葉にも表情にも出し過ぎている気がする。
兄としての振る舞いとしてこれは失格である。
兄は妹に頼りにされるべき存在なのだ。
だから兄は妹に動揺している姿をやすやすと見せてはいけないのである。
俺は心身を引き締める。
「…兄様。それじゃ、さっきの続き…お背中を洗いますね…」
「えっ…?
そんな悪いから良いよ…ああうっ!?
…き、気持ちいい…」
「ふふ…ツツジは姫騎士団のみんなからも背中を洗うのは上手いって評判なんです…」
「ああ…そ…そんな…ツツジ…もう良いから…疲れるだろ
わ、悪いから…ああっ! 気持ち良っ…」
「…兄様、失礼ながら…けっこうお背中汚れているみたい…。
…せっかくだから、ツツジが綺麗にして差し上げます…」
「あっ…あっ…、ツ、ツツジ…そんな動きされたら俺は…」
「…兄様、気持ちよかったら言ってくださいね…そこを集中して磨きますから…」
「そんなこと言っても…ツツジの触れる所はみんな気持ちいから…ああっ…」
「…でしたら…ツツジに全てお任せ下さい…」
「…ツツジ…凄い…凄い良い…ああっ…ツツジぃ…」
「…兄様…」
「…はあっ! ツツジぃ! そこは…駄目ええええーーー!?」
俺は兄の身でありながら、愛しい妹であるツツジの背中磨きに思わず悦びの声を上げてしまい、放心してその頭をうなだれさせてしまった。
兄は妹に動揺している姿をやすやすと見せてはいけない。
だから俺は心身を引き締めたばかりだというのに、この始末…。
…何という体たらくか…。
…このっ! 情けない兄ッ!!
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる