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第82話 暖簾(のれん)の意味
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俺は『ゆ』とひらがなで書かれた青の暖簾をくぐった。
ちなみに『ゆ』の横に書いてあった文字は、多分この異世界エゾン・レイギスで言う所の『男』を意味する言葉が書かれていたのではないかと思う。
俺はこの世界の文字は読めないのであくまで推定ではあるが。
中はまず靴を脱ぐ場所があった。
俺は靴を脱ぎ揃えて置くと素足で床に上がる。
廊下を少し進むと脱衣所があった。
その壁側には棚がたくさん設置されている。
脱衣所の真ん中に、これ見よがしという感じでひとつの籠が置かれており、その中に小さなタオルがひとつ、大きなタオルがひとつ、寝巻の様な服が一着と入っていた。
なるほど、身体を洗うタオルに、湯上り後に身体を吹くタオル、更には着替えも準備して貰えたのか…まさに旅館である。
至れり尽くせりで有難いことこの上ない。
俺は服を脱ぐと小さなタオルひとつを持って、扉を開けて浴室に入った。
床はタイルで覆われている。
そこには日本の銭湯とほぼ同じ洗い場が広がっていた。
壁には金属の蛇口がふたつづつセットで、それがたくさん付いている。
それらの蛇口の前には木で作られた桶が置かれており、その前には木製の椅子が置かれている。
ふたつある蛇口のうち、右の蛇口の上には赤い手回しが、左の蛇口は青い手回しがある。
赤いほうを回すとお湯が出る、青いほうを回すと水がでる。
お湯と水を桶に汲んで丁度良いお湯を作ると言った感じの様だ。
俺の世界の現代と比べるとお湯の出に関しては少し古い仕組みの様だが、それでもほぼ日本の銭湯の仕組みである。
この異世界エゾン・レイギス、少なくともこのエクスラント聖王国に関しては、地球で言う所の西洋の中世時代ぐらいの文明レベルでは無いかと俺は見ていた。
だがこの銭湯を見るに結構文明レベルは進んでいる様である。
このお湯を出す仕組みは俺たちの世界と同じ科学技術かもしれないし、この異世界の魔法の類による俺の知らない技術なのかも知れない。
技術の中身までは俺には判別できない。
だがこの城の中に銭湯を作ったのは、間違いなく俺たちより昔にこの異世界に召喚された日本人であろう。
それはこのお風呂の作りの何もかもが日本の銭湯に酷似しているからだ。
俺は洗い場の奥を見通す、そこには大きな浴槽があってその中にはお湯がたっぷりと湛えられている。
そして浴槽の壁面には大きな山の絵が描かれて居た。
まさに俺が25年間過ごしてきた地球の日本の銭湯である。
決定的なのは入り口の『ゆ』とひらがなで書かれた暖簾だ。
そこだけあえて日本語で書かれて居るのは、ここに日本人が居る、もしくはかつて居た事を、後に此処を訪れるであろう日本人に対して伝えようとしているでは無いかと俺は感じたのだ。
このお風呂を作った日本人は、この地で骨をうずめたのだろうか? それともまだ生きているのだろうか?
和食の文化はこの王宮にはだいぶ前から伝わっていたとシノブさんが言っていた。
この聖王国に和食を広めた日本人と、この銭湯を作った日本人が同一人物もしくは、同時期に召喚された複数の日本人たちだというのなら…前者ということになるのだろうか?
だがまだ生きているのであれば、俺は会って見たいとも思った。
何がともあれ…慣れない異世界でありながら、見慣れた日本の銭湯の形式で身体を洗い、癒せるのなら其れはとても素晴らしいことなのである。
俺は先の和食に続き、このお風呂に対しても、先人たちに感謝した。
ちなみに『ゆ』の横に書いてあった文字は、多分この異世界エゾン・レイギスで言う所の『男』を意味する言葉が書かれていたのではないかと思う。
俺はこの世界の文字は読めないのであくまで推定ではあるが。
中はまず靴を脱ぐ場所があった。
俺は靴を脱ぎ揃えて置くと素足で床に上がる。
廊下を少し進むと脱衣所があった。
その壁側には棚がたくさん設置されている。
脱衣所の真ん中に、これ見よがしという感じでひとつの籠が置かれており、その中に小さなタオルがひとつ、大きなタオルがひとつ、寝巻の様な服が一着と入っていた。
なるほど、身体を洗うタオルに、湯上り後に身体を吹くタオル、更には着替えも準備して貰えたのか…まさに旅館である。
至れり尽くせりで有難いことこの上ない。
俺は服を脱ぐと小さなタオルひとつを持って、扉を開けて浴室に入った。
床はタイルで覆われている。
そこには日本の銭湯とほぼ同じ洗い場が広がっていた。
壁には金属の蛇口がふたつづつセットで、それがたくさん付いている。
それらの蛇口の前には木で作られた桶が置かれており、その前には木製の椅子が置かれている。
ふたつある蛇口のうち、右の蛇口の上には赤い手回しが、左の蛇口は青い手回しがある。
赤いほうを回すとお湯が出る、青いほうを回すと水がでる。
お湯と水を桶に汲んで丁度良いお湯を作ると言った感じの様だ。
俺の世界の現代と比べるとお湯の出に関しては少し古い仕組みの様だが、それでもほぼ日本の銭湯の仕組みである。
この異世界エゾン・レイギス、少なくともこのエクスラント聖王国に関しては、地球で言う所の西洋の中世時代ぐらいの文明レベルでは無いかと俺は見ていた。
だがこの銭湯を見るに結構文明レベルは進んでいる様である。
このお湯を出す仕組みは俺たちの世界と同じ科学技術かもしれないし、この異世界の魔法の類による俺の知らない技術なのかも知れない。
技術の中身までは俺には判別できない。
だがこの城の中に銭湯を作ったのは、間違いなく俺たちより昔にこの異世界に召喚された日本人であろう。
それはこのお風呂の作りの何もかもが日本の銭湯に酷似しているからだ。
俺は洗い場の奥を見通す、そこには大きな浴槽があってその中にはお湯がたっぷりと湛えられている。
そして浴槽の壁面には大きな山の絵が描かれて居た。
まさに俺が25年間過ごしてきた地球の日本の銭湯である。
決定的なのは入り口の『ゆ』とひらがなで書かれた暖簾だ。
そこだけあえて日本語で書かれて居るのは、ここに日本人が居る、もしくはかつて居た事を、後に此処を訪れるであろう日本人に対して伝えようとしているでは無いかと俺は感じたのだ。
このお風呂を作った日本人は、この地で骨をうずめたのだろうか? それともまだ生きているのだろうか?
和食の文化はこの王宮にはだいぶ前から伝わっていたとシノブさんが言っていた。
この聖王国に和食を広めた日本人と、この銭湯を作った日本人が同一人物もしくは、同時期に召喚された複数の日本人たちだというのなら…前者ということになるのだろうか?
だがまだ生きているのであれば、俺は会って見たいとも思った。
何がともあれ…慣れない異世界でありながら、見慣れた日本の銭湯の形式で身体を洗い、癒せるのなら其れはとても素晴らしいことなのである。
俺は先の和食に続き、このお風呂に対しても、先人たちに感謝した。
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