80 / 556
第80話 兄のわがままな愛情
しおりを挟む
俺に頭を撫でられて気持ちよさそうしている優羽花を見つめながら俺は考えた。
優羽花は子供の頃は俺に頭を撫でられるのを確かに喜んでくれた。
だが大きくなってからは嫌がるふしがあった。
子ども扱いしないでよ恥ずかしい! とまで言われたこともあった。
だから俺もあまりそういうことはしなくなっていたのだ。
だがこの異世界エゾン・レイギスに来てからというもの、優羽花は今の様に俺が頭を撫でても文句を言わず、子供の頃の様に喜んでくれる様にもなったのである。
そんな彼女の様子から、俺はたったいま、確信した。
これが優羽花のツンデレのデレなのだ!
多分、おそらく、きっと。
俺はツンデレというのが良く分かっていないのだが、少なくとも元の世界で優羽花がここまで素直でしおらしくなったのを見たことが無いのだから。
うん、正直言って可愛いのである。
「…何見てるの?」
俺の視線に気付いたのか優羽花がぱちりと目を開けて俺の肩に身体を預けながら俺の顔を見た。
「いやあ、俺の妹は可愛いなあと思って」
俺は心に思っていることをそのまま口に出した。
「…ばぁか」
優羽花はそう言うとまた目を閉じて笑顔を浮かべた。
(俺の妹は可愛い!)
俺は心の中で叫んだ。
元から優羽花は可愛い妹である。
素直じゃないけど、俺に対して何だかんだで気を使って面倒を見てくれる本当は優しい妹なのだ。
だが兄としてはこの様に素直に好意を現してくれたほうが嬉しい、兄冥利に尽きる。
そう、俺はわかりやすく単純な男なのである。
この様に兄として有頂天になっている反面、さっき優羽花が言った言葉が少し気になった。
『あたしが望んでいる関係は…お兄が望んでいる関係とは違うかもしれないよ…』
その言葉の意味することは俺にはわからなかった。
だが一つ確実なことがある。
いつか優羽花は俺の前から去ってしまうという事だ。
彼女に好きな男が出来て、俺たちの家を出る時はいつか必ず来るのである。
俺は優羽花の言葉からこの事実を再認識した。
正直なところ、寂しい気持ちになった。
その時が来たとして、俺は優羽花を黙って送り出せるのだろうか…?
だが妹の幸せを願わない兄などいない。いるわけが無い。
妹の幸せな門出を笑顔で気持ちよく見送る、その様な兄でありたいと俺は思う。
…まあ変な男だったら許さないけどな!
俺は半年間引籠っていた自分のことを棚に上げて自分勝手なことを心の内で叫んだ。
兄は妹に対して少々わがままな愛情を持つものなのである。
優羽花は子供の頃は俺に頭を撫でられるのを確かに喜んでくれた。
だが大きくなってからは嫌がるふしがあった。
子ども扱いしないでよ恥ずかしい! とまで言われたこともあった。
だから俺もあまりそういうことはしなくなっていたのだ。
だがこの異世界エゾン・レイギスに来てからというもの、優羽花は今の様に俺が頭を撫でても文句を言わず、子供の頃の様に喜んでくれる様にもなったのである。
そんな彼女の様子から、俺はたったいま、確信した。
これが優羽花のツンデレのデレなのだ!
多分、おそらく、きっと。
俺はツンデレというのが良く分かっていないのだが、少なくとも元の世界で優羽花がここまで素直でしおらしくなったのを見たことが無いのだから。
うん、正直言って可愛いのである。
「…何見てるの?」
俺の視線に気付いたのか優羽花がぱちりと目を開けて俺の肩に身体を預けながら俺の顔を見た。
「いやあ、俺の妹は可愛いなあと思って」
俺は心に思っていることをそのまま口に出した。
「…ばぁか」
優羽花はそう言うとまた目を閉じて笑顔を浮かべた。
(俺の妹は可愛い!)
俺は心の中で叫んだ。
元から優羽花は可愛い妹である。
素直じゃないけど、俺に対して何だかんだで気を使って面倒を見てくれる本当は優しい妹なのだ。
だが兄としてはこの様に素直に好意を現してくれたほうが嬉しい、兄冥利に尽きる。
そう、俺はわかりやすく単純な男なのである。
この様に兄として有頂天になっている反面、さっき優羽花が言った言葉が少し気になった。
『あたしが望んでいる関係は…お兄が望んでいる関係とは違うかもしれないよ…』
その言葉の意味することは俺にはわからなかった。
だが一つ確実なことがある。
いつか優羽花は俺の前から去ってしまうという事だ。
彼女に好きな男が出来て、俺たちの家を出る時はいつか必ず来るのである。
俺は優羽花の言葉からこの事実を再認識した。
正直なところ、寂しい気持ちになった。
その時が来たとして、俺は優羽花を黙って送り出せるのだろうか…?
だが妹の幸せを願わない兄などいない。いるわけが無い。
妹の幸せな門出を笑顔で気持ちよく見送る、その様な兄でありたいと俺は思う。
…まあ変な男だったら許さないけどな!
俺は半年間引籠っていた自分のことを棚に上げて自分勝手なことを心の内で叫んだ。
兄は妹に対して少々わがままな愛情を持つものなのである。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
婚約破棄して、めでたしめでたしの先の話
を
ファンタジー
(2021/5/24 一話分抜けていたため修正いたしました)
昔々、あるところに王子様がいました。
王子様は、平民の女の子を好きになりました。平民の女の子も、王子様を好きになりました。
二人には身分の差があります。ですが、愛の前ではささいな問題でした。
王子様は、とうとう女の子をいじめる婚約者を追放し、女の子と結ばれました。
そしてお城で、二人仲良く暮らすのでした。
めでたしめでたし。
そして、二人の間に子供ができましたが、その子供は追い出されました。
憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
特に何も取り柄がない学生、牧野優夏。友人である相良靖弥《あらいせいや》と下校途中、軽トラックと衝突し死亡。次に目を覚ました時、狩衣姿の、傷で全く動くことが出来ない少年の体に入っていた。その少年の名前は"安倍闇命"。
目を覚ました直後、優夏は陰陽寮の陰陽頭に修行という名前の、化け物封印を命じられる。何もわからないまま連れていかれ、水の化け物”水人”と戦わされた。
逃げ回り、何とかできないか考えるも、知識も何もないため抗う事が出来ず水人に捕まる。死が頭を掠めた時、下の方から少年の声が聞こえ、生意気な口調で命令された。イラつきながらも言われた通りにした結果、無事に危機は脱する。
『どう? 僕の体、使いやすいでしょ?』
闇命は毒舌でくそ生意気な少年。普段は体を貸している優夏の肩に鼠姿で寛いでいる。そのため、言動や行動に気を付けなければ噛まれてしまい、優夏はいつも苦笑いを浮かべながら行動していた。
そんな闇命には”短命”の呪いがかけられている。闇命の従者達も本人が諦めている為何も言えず、生きている限り添い遂げる事を決意していた。
生きている時は都合よく扱い、いう事を聞かなければ罰を与える。短命について何もしようとしない周りに、優夏はこの世界に絶望。それと同時に、闇命の本心などに触れ、周りの言動や行動に怒りが芽生え、この世界に革命を起こす事を決意。
そんな中、裏で大きな事態が引き起こされていた。安倍晴明の子孫である闇命の命を狙い、叩き潰そうと企んでる人物、蘆屋道満。従者として一人の青年がいいように利用され、意思とは関係なく刀を振るっていた。その人物は、優夏にとってかけがえのない人物。
世界への革命、自身を狙う人物、呪い。様々な困難が優夏に降り注ぐ中、従者や他の陰陽師達に声をかけ力を借り、一つずつ解決していく、冒険アリの和風異世界ファンタジー!
出会いの章でこの物語は大きく動き出す。大事な人が自身を殺そうとしてきたら、どのような気持ちになりますか?
表紙絵・挿絵をお願いしました!!
作:あニキさん
挿絵 ☆がついている話
※カクヨム・小説家になろうにも投稿中
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる