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第77話 静里菜(せりな)のこと
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「…そういえば静里菜(せりな)は今どうしてるかなあ? 無事元の世界に帰れているとは思うけどなあ」
「話を変えてごまかすなあ、この馬鹿お兄!
…でも静里菜なら大丈夫だとあたしも思うけど」
「確かに静里菜なら大丈夫だよなあ。もう自分の家に帰ってこちらのセカイに来る方法を試行錯誤しているんじゃないかなあ」
俺と優羽花(ゆうか)は静里菜から受け取った符を取り出して見つめた。
静里菜の符は彼女自身が書いた手製のものだ。
芯の強さを感じる達筆な文字は静里菜の人のそれを現わしているといえよう。
「静里菜…」
優羽花は符を自身の胸に添えて目を閉じた。
優羽花と静里菜は家のお隣同士16年の長い付き合いで、俺の妹同士であり、親友であり、姉妹の様な関係なのだ。
色々思い合う所があるのだろう。
「静里菜、もうだいぶ長い間会っていない様な気がするな…。
俺たちが別れてからまだ1日も経っていない筈なんだけどなあ…」
この異世界エゾン・レイギスに召喚された俺たちは、遙か上空からこの地に降下して来た。
だが静里菜の家は神社であり彼女は巫女さん。
神社の御祭神さまのご加護が働いて、静里菜はすぐに元の世界に戻されたのである。
それから俺たちは色んなことがあった。
光の神殿に降り立った俺たち二人は、光の精霊から専用武器を受け取ってこのセカイのあらましを聞いた。
神殿を出たら魔族の騎士に襲われて戦闘になって、勇者の力に目覚めた優羽花が魔族を倒した。
そのあとポーラ姫、ミリィ、姫騎士団(プリンセスナイツ)のみんなに出会って、色々あってみんな俺の妹になった。
それからポーラ姫たちの案内で彼女たちの国であるエクスラント聖王国を目指す道中、俺たちより前に召喚されていた黒川部長たちに襲われた。
何とか黒川たちを退けて、聖王国に入った俺と優羽花はこの国の長である国王陛下から、この国を魔族から守ってほしいとお願いされたんだ。
…うん、凄く濃い一日だったよなあ…。
まるで数年分ぐらいの出来事が圧縮されている様だと、俺は感慨深く思った。
『静里菜、巫女の術とかでもう一度ここに俺たちを迎えに来ることは出来ないか?』
『この異世界とお二人の位置をはっきりと認識できれば、あとは元のセカイで大掛かりな巫術(ふじゅつ)を行えばそれは可能だとは思います。
それでは二人ともこれを肌身離さず持っていて下さいね』
俺は静里菜との会話を思い出しながら、渡された符を改めて見つめた。
彼女は俺たちを迎えに来れる方法に見越しがある様だった。
俺は静里菜ならその方法を講じるのにそう時間は掛からないであろうと見ている。
この符を大事に持っていれば元の世界に戻る事については大丈夫だろう。
静里菜は俺たちの中で間違いなく一番頼りになる存在なのだ。
俺がどうこうと心配する必要は無いだろう。
俺は静里菜と別れた時に決意をした。
静里菜が迎えに来てくれるその時まで、俺たちはこの世界で無事で生きていかなければならない…と。
だが俺にはこの異世界で色々と護るべきものが増えた。
ただ無事生きているだけでは駄目なのである。
今よりも強くなって、みんなを護りながら、静里菜が来てくれるのを待つのだ。
俺は新たな決意を固めた。
「話を変えてごまかすなあ、この馬鹿お兄!
…でも静里菜なら大丈夫だとあたしも思うけど」
「確かに静里菜なら大丈夫だよなあ。もう自分の家に帰ってこちらのセカイに来る方法を試行錯誤しているんじゃないかなあ」
俺と優羽花(ゆうか)は静里菜から受け取った符を取り出して見つめた。
静里菜の符は彼女自身が書いた手製のものだ。
芯の強さを感じる達筆な文字は静里菜の人のそれを現わしているといえよう。
「静里菜…」
優羽花は符を自身の胸に添えて目を閉じた。
優羽花と静里菜は家のお隣同士16年の長い付き合いで、俺の妹同士であり、親友であり、姉妹の様な関係なのだ。
色々思い合う所があるのだろう。
「静里菜、もうだいぶ長い間会っていない様な気がするな…。
俺たちが別れてからまだ1日も経っていない筈なんだけどなあ…」
この異世界エゾン・レイギスに召喚された俺たちは、遙か上空からこの地に降下して来た。
だが静里菜の家は神社であり彼女は巫女さん。
神社の御祭神さまのご加護が働いて、静里菜はすぐに元の世界に戻されたのである。
それから俺たちは色んなことがあった。
光の神殿に降り立った俺たち二人は、光の精霊から専用武器を受け取ってこのセカイのあらましを聞いた。
神殿を出たら魔族の騎士に襲われて戦闘になって、勇者の力に目覚めた優羽花が魔族を倒した。
そのあとポーラ姫、ミリィ、姫騎士団(プリンセスナイツ)のみんなに出会って、色々あってみんな俺の妹になった。
それからポーラ姫たちの案内で彼女たちの国であるエクスラント聖王国を目指す道中、俺たちより前に召喚されていた黒川部長たちに襲われた。
何とか黒川たちを退けて、聖王国に入った俺と優羽花はこの国の長である国王陛下から、この国を魔族から守ってほしいとお願いされたんだ。
…うん、凄く濃い一日だったよなあ…。
まるで数年分ぐらいの出来事が圧縮されている様だと、俺は感慨深く思った。
『静里菜、巫女の術とかでもう一度ここに俺たちを迎えに来ることは出来ないか?』
『この異世界とお二人の位置をはっきりと認識できれば、あとは元のセカイで大掛かりな巫術(ふじゅつ)を行えばそれは可能だとは思います。
それでは二人ともこれを肌身離さず持っていて下さいね』
俺は静里菜との会話を思い出しながら、渡された符を改めて見つめた。
彼女は俺たちを迎えに来れる方法に見越しがある様だった。
俺は静里菜ならその方法を講じるのにそう時間は掛からないであろうと見ている。
この符を大事に持っていれば元の世界に戻る事については大丈夫だろう。
静里菜は俺たちの中で間違いなく一番頼りになる存在なのだ。
俺がどうこうと心配する必要は無いだろう。
俺は静里菜と別れた時に決意をした。
静里菜が迎えに来てくれるその時まで、俺たちはこの世界で無事で生きていかなければならない…と。
だが俺にはこの異世界で色々と護るべきものが増えた。
ただ無事生きているだけでは駄目なのである。
今よりも強くなって、みんなを護りながら、静里菜が来てくれるのを待つのだ。
俺は新たな決意を固めた。
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