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第70話 聖王国の料理の趣向

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「えっ、ポーラがこの料理を作ったのか!? 凄いなあ…」

 俺はお姫様が自ら料理を作るという前提が一切無かったので正直驚いた。

「王宮の厨房には料理人もいますから全ての工程をわたくし一人で作ったわけではありませんけれど。
ケイガお兄様、ユウカ様、お二人の為に精一杯お料理をさせて頂きました。どうぞお召し上がり下さいませ」

ポーラ姫はそう言って皿を奨めた。
煌びやかなで色彩で、種類が多いが、その個々の量は控えめな料理が盛られている。

「「頂きまーす!」」

 俺と優羽花(ゆうか)の声がシンクロしてほぼ同時にその料理を口に運んだ。

「旨い!」
「美味しい!」

 俺と優羽花の賞賛の声が重なった。
 薄めの味だが足りないということは無い。
 出しゃばり過ぎず、控え過ぎず。
 まずは少しづつ食欲をそそらせて行くという前菜といった役目を完全に果たしてる。
 そして空腹の俺たちはそのままの勢いで皿の中の料理を食べ尽くした。

「ふふふ、おふたりともとても美味しそうに食べて下さってわたくし感無量ですわ」

 ポーラ姫は頬を赤らめてはにかみながら笑顔を浮かべた。
 俺はそんな彼女の様子を見て、空腹とは別のものも満たされたと感じた。


「それではお二人とも、次はこちらをお召し上がり下さい」

 ポーラと同じく、白く長い帽子に白い衣服に身を包んだイチョウが両手に持った料理の皿を置いた。
 おお、これは…魚の刺身の大量の盛り合わせだ。
 日本人である俺にとって魚料理は純粋に嬉しい!

「旨い!」
「美味しい!」

 俺と優羽花の美味の声が重なった。
 ここは異世界エゾン・レイギス、魚の種類は日本とは全然違うのだろう。
 だがその色も、その感触も、その味も、大きく遜色はない様に思える。
 何を言いたいかというと、様はすごく旨いお刺身ということである。
 あっさりした味、油がのり切った味、甘めの味、柔らかい感触、とろける様な感触、こりっときた感触…俺が求めるお刺身の醍醐味が全てここにあった。

「ふふふ、私は生き物を捌くことには少し自信があるんです。お二人にそんなに美味しく食べて頂けるとイチョウも捌きがいもあるというものです」

 彼女はちょっと怖い事を言ったような気がしたが、刺身の感触に溺れる俺は全く気に留めることなく食べ進める。
 生魚最高! である。
 俺と優羽花の前に置かれた沢山の刺身が盛られた皿はあっという間に空になった。

「兄様、ユウカ様、次はこちらになります。どうぞ」

 先の二人と同じく、白い帽子に白い衣服に身を包んだクレハが新たな料理を持ったお皿を置いた。
 おおー! これは天ぷらだあ!
 魚、エビらしき甲殻類、そして野菜と芋の天ぷらである。

 ここで俺は理解した。
 エクスラント聖王国は国の様相もお城も俺の居た世界で言うところの西洋っぽいけど、食事の内容は和っぽいということに。
 これは何と素晴らしいことか。
 生粋の日本人の俺に取っては大歓迎でしかない。
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