63 / 556
第63話 早とちり
しおりを挟む
「ああ、ご心配をおかけして申し訳ありません、お兄様。
ちょっと無茶をした反動が来たのかも知れませんね…。
わたくし、今回の様に王として振る舞ったのは初めてなんです。
今迄は聖王国の聖王女として求められている振る舞いをして来ました。
それはわたくしの性分も合っていました。
ですが、父である陛下が倒れられて、王国を牛耳ろうとする三人の動き、異世界の戦士であるクロカワ一行の裏切り、近付く魔族軍の侵攻とが重なりました。
そしてわたくしは父から国王代理を任されました。
今迄のわたくしでは居られなくなったのです。
そしてこの国の為、民の為、王としての振る舞いをする決意をして、実行をしたという訳です」
「そうだったのか…。
俺はさっきポーラは凄いと言ったけど、そんな軽々しく言うべき言葉じゃ無かったなよなあ…ごめん…」
「そんなことはありませんわ、お兄様の労いの言葉は嬉しかったです」
「…でも、俺は…」
「…でしたらお兄様。頑張ったわたくしにちょっぴり…お慰みを頂けますか?」
ポーラ姫はそう言うと目を閉じて、俺にその可憐な顔を差し出した。
「…そこまでにしておきたまえっポーラあ!」
「きゃうンっ?」
ポーラ姫の可憐な頬にミリィの大きな杖が添えられて、そのままぐいーっと全力で押しのけられて、彼女はそのまま玉座から転げ落ちて顔から地面に墜落、ずざあああーー! と凄い勢いで地面を滑った。
そろそろこの光景にも慣れてきた気がするけど…やっぱりすごく痛そうです…。
しかし彼女は元気良くむくっと起き上がるとミリィに凄い勢いで駆け寄って抗議の声を上げた。
「いきなり杖で力いっぱい押しのけるなんて酷いですミリィお姉様!!」
「だからあ、暴走している愚妹(ぐまい)を鎮めるのも姉の役目だって言っているよねポーラ!
ボクはあれだけ言ったのに何でまた口づけをしようとするんだい!」
「…これは違いますわミリィお姉様。わたくしは妹として、ケイガお兄様に、頭を撫でて欲しかったのですわ」
「えっ? そうなのかいポーラ?」
「…昔ファイズお兄様が、わたくしが上手く習い事をできた時に頭を撫でて下さいました。
わたくしはそれが楽しみで習い事も頑張りましたの。
ですから、出来れば、ケイガお兄様にも頑張ったわたくしを撫でて欲しかったのです。
…子供じみた願いで申し訳ございません、お兄様。
宜しければ…ですけど」
「いや全然構わないよポーラ、それなら早速…これでどうかなあ?」
俺はポーラ姫の頭を撫でた。
以前に撫でた時は子供をあやすように撫でていた。
だがこれはご褒美の様なものだから、優しく愛でる様に撫でた。
そういえば、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)が幼い頃、俺は二人を褒める時によく頭を撫でてあげてたっけなあ…。
「はあ…お兄様、とても気持ち良いです…至福ですわ…」
「あっ、良いなぁ…」
ミリィは指をくわえて、恍惚(こうこつ)とした表情のポーラ姫を見つめていた。
「それにしてもミリィお姉様は早とちりにも程がありますわ。
いくらわたくしでも再三お兄様に口づけを迫りませんの。
もしかしてお姉さま、”その様なことばかり”考えてはいませんよね?」
「なっ…なっ…こ、このボクが! むっつりスケベだとでも言うのかいポーラあああーー!!」
ボ、ボ、ボクはそんなこと全然これっぽちも考えてないよっ!
ボクと兄君様との想像の関係は至って健全さ!」
「でもミリィお姉様のお部屋のノートに男女の口づけの手書きのイラストが幾つも描かれてませんでした?
しかもその男女は何故かみんな裸だった様な気がします…」
「わーわーわー! ポーラあっ! 兄君様の前でそんな事を言うのは止めたまえっ!
…ち、違うんだ兄君様、あれは魔術学を研究する上で必要だったんだ!
ボクは決して何もやましいことなんて考えていないからね! 本当だよ! 信じて兄君様あ!」
顔を真っ赤にして両腕を力いっぱいバタバタさせているミリィ。
いつもは知的かつ冷静な彼女が此処まで取り乱しているのは初めて見た気がするぞ。
「まあ年頃の女の子だしそういう事に興味を持つのも仕方が無いんじゃないか? 俺は全然気にしないから」
「ケイガ兄君様あ! ボクの話を信じてよおーー!!」
ミリィの絶叫が謁見の間に響き渡った。
ちょっと無茶をした反動が来たのかも知れませんね…。
わたくし、今回の様に王として振る舞ったのは初めてなんです。
今迄は聖王国の聖王女として求められている振る舞いをして来ました。
それはわたくしの性分も合っていました。
ですが、父である陛下が倒れられて、王国を牛耳ろうとする三人の動き、異世界の戦士であるクロカワ一行の裏切り、近付く魔族軍の侵攻とが重なりました。
そしてわたくしは父から国王代理を任されました。
今迄のわたくしでは居られなくなったのです。
そしてこの国の為、民の為、王としての振る舞いをする決意をして、実行をしたという訳です」
「そうだったのか…。
俺はさっきポーラは凄いと言ったけど、そんな軽々しく言うべき言葉じゃ無かったなよなあ…ごめん…」
「そんなことはありませんわ、お兄様の労いの言葉は嬉しかったです」
「…でも、俺は…」
「…でしたらお兄様。頑張ったわたくしにちょっぴり…お慰みを頂けますか?」
ポーラ姫はそう言うと目を閉じて、俺にその可憐な顔を差し出した。
「…そこまでにしておきたまえっポーラあ!」
「きゃうンっ?」
ポーラ姫の可憐な頬にミリィの大きな杖が添えられて、そのままぐいーっと全力で押しのけられて、彼女はそのまま玉座から転げ落ちて顔から地面に墜落、ずざあああーー! と凄い勢いで地面を滑った。
そろそろこの光景にも慣れてきた気がするけど…やっぱりすごく痛そうです…。
しかし彼女は元気良くむくっと起き上がるとミリィに凄い勢いで駆け寄って抗議の声を上げた。
「いきなり杖で力いっぱい押しのけるなんて酷いですミリィお姉様!!」
「だからあ、暴走している愚妹(ぐまい)を鎮めるのも姉の役目だって言っているよねポーラ!
ボクはあれだけ言ったのに何でまた口づけをしようとするんだい!」
「…これは違いますわミリィお姉様。わたくしは妹として、ケイガお兄様に、頭を撫でて欲しかったのですわ」
「えっ? そうなのかいポーラ?」
「…昔ファイズお兄様が、わたくしが上手く習い事をできた時に頭を撫でて下さいました。
わたくしはそれが楽しみで習い事も頑張りましたの。
ですから、出来れば、ケイガお兄様にも頑張ったわたくしを撫でて欲しかったのです。
…子供じみた願いで申し訳ございません、お兄様。
宜しければ…ですけど」
「いや全然構わないよポーラ、それなら早速…これでどうかなあ?」
俺はポーラ姫の頭を撫でた。
以前に撫でた時は子供をあやすように撫でていた。
だがこれはご褒美の様なものだから、優しく愛でる様に撫でた。
そういえば、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)が幼い頃、俺は二人を褒める時によく頭を撫でてあげてたっけなあ…。
「はあ…お兄様、とても気持ち良いです…至福ですわ…」
「あっ、良いなぁ…」
ミリィは指をくわえて、恍惚(こうこつ)とした表情のポーラ姫を見つめていた。
「それにしてもミリィお姉様は早とちりにも程がありますわ。
いくらわたくしでも再三お兄様に口づけを迫りませんの。
もしかしてお姉さま、”その様なことばかり”考えてはいませんよね?」
「なっ…なっ…こ、このボクが! むっつりスケベだとでも言うのかいポーラあああーー!!」
ボ、ボ、ボクはそんなこと全然これっぽちも考えてないよっ!
ボクと兄君様との想像の関係は至って健全さ!」
「でもミリィお姉様のお部屋のノートに男女の口づけの手書きのイラストが幾つも描かれてませんでした?
しかもその男女は何故かみんな裸だった様な気がします…」
「わーわーわー! ポーラあっ! 兄君様の前でそんな事を言うのは止めたまえっ!
…ち、違うんだ兄君様、あれは魔術学を研究する上で必要だったんだ!
ボクは決して何もやましいことなんて考えていないからね! 本当だよ! 信じて兄君様あ!」
顔を真っ赤にして両腕を力いっぱいバタバタさせているミリィ。
いつもは知的かつ冷静な彼女が此処まで取り乱しているのは初めて見た気がするぞ。
「まあ年頃の女の子だしそういう事に興味を持つのも仕方が無いんじゃないか? 俺は全然気にしないから」
「ケイガ兄君様あ! ボクの話を信じてよおーー!!」
ミリィの絶叫が謁見の間に響き渡った。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる