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第63話 早とちり
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「ああ、ご心配をおかけして申し訳ありません、お兄様。
ちょっと無茶をした反動が来たのかも知れませんね…。
わたくし、今回の様に王として振る舞ったのは初めてなんです。
今迄は聖王国の聖王女として求められている振る舞いをして来ました。
それはわたくしの性分も合っていました。
ですが、父である陛下が倒れられて、王国を牛耳ろうとする三人の動き、異世界の戦士であるクロカワ一行の裏切り、近付く魔族軍の侵攻とが重なりました。
そしてわたくしは父から国王代理を任されました。
今迄のわたくしでは居られなくなったのです。
そしてこの国の為、民の為、王としての振る舞いをする決意をして、実行をしたという訳です」
「そうだったのか…。
俺はさっきポーラは凄いと言ったけど、そんな軽々しく言うべき言葉じゃ無かったなよなあ…ごめん…」
「そんなことはありませんわ、お兄様の労いの言葉は嬉しかったです」
「…でも、俺は…」
「…でしたらお兄様。頑張ったわたくしにちょっぴり…お慰みを頂けますか?」
ポーラ姫はそう言うと目を閉じて、俺にその可憐な顔を差し出した。
「…そこまでにしておきたまえっポーラあ!」
「きゃうンっ?」
ポーラ姫の可憐な頬にミリィの大きな杖が添えられて、そのままぐいーっと全力で押しのけられて、彼女はそのまま玉座から転げ落ちて顔から地面に墜落、ずざあああーー! と凄い勢いで地面を滑った。
そろそろこの光景にも慣れてきた気がするけど…やっぱりすごく痛そうです…。
しかし彼女は元気良くむくっと起き上がるとミリィに凄い勢いで駆け寄って抗議の声を上げた。
「いきなり杖で力いっぱい押しのけるなんて酷いですミリィお姉様!!」
「だからあ、暴走している愚妹(ぐまい)を鎮めるのも姉の役目だって言っているよねポーラ!
ボクはあれだけ言ったのに何でまた口づけをしようとするんだい!」
「…これは違いますわミリィお姉様。わたくしは妹として、ケイガお兄様に、頭を撫でて欲しかったのですわ」
「えっ? そうなのかいポーラ?」
「…昔ファイズお兄様が、わたくしが上手く習い事をできた時に頭を撫でて下さいました。
わたくしはそれが楽しみで習い事も頑張りましたの。
ですから、出来れば、ケイガお兄様にも頑張ったわたくしを撫でて欲しかったのです。
…子供じみた願いで申し訳ございません、お兄様。
宜しければ…ですけど」
「いや全然構わないよポーラ、それなら早速…これでどうかなあ?」
俺はポーラ姫の頭を撫でた。
以前に撫でた時は子供をあやすように撫でていた。
だがこれはご褒美の様なものだから、優しく愛でる様に撫でた。
そういえば、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)が幼い頃、俺は二人を褒める時によく頭を撫でてあげてたっけなあ…。
「はあ…お兄様、とても気持ち良いです…至福ですわ…」
「あっ、良いなぁ…」
ミリィは指をくわえて、恍惚(こうこつ)とした表情のポーラ姫を見つめていた。
「それにしてもミリィお姉様は早とちりにも程がありますわ。
いくらわたくしでも再三お兄様に口づけを迫りませんの。
もしかしてお姉さま、”その様なことばかり”考えてはいませんよね?」
「なっ…なっ…こ、このボクが! むっつりスケベだとでも言うのかいポーラあああーー!!」
ボ、ボ、ボクはそんなこと全然これっぽちも考えてないよっ!
ボクと兄君様との想像の関係は至って健全さ!」
「でもミリィお姉様のお部屋のノートに男女の口づけの手書きのイラストが幾つも描かれてませんでした?
しかもその男女は何故かみんな裸だった様な気がします…」
「わーわーわー! ポーラあっ! 兄君様の前でそんな事を言うのは止めたまえっ!
…ち、違うんだ兄君様、あれは魔術学を研究する上で必要だったんだ!
ボクは決して何もやましいことなんて考えていないからね! 本当だよ! 信じて兄君様あ!」
顔を真っ赤にして両腕を力いっぱいバタバタさせているミリィ。
いつもは知的かつ冷静な彼女が此処まで取り乱しているのは初めて見た気がするぞ。
「まあ年頃の女の子だしそういう事に興味を持つのも仕方が無いんじゃないか? 俺は全然気にしないから」
「ケイガ兄君様あ! ボクの話を信じてよおーー!!」
ミリィの絶叫が謁見の間に響き渡った。
ちょっと無茶をした反動が来たのかも知れませんね…。
わたくし、今回の様に王として振る舞ったのは初めてなんです。
今迄は聖王国の聖王女として求められている振る舞いをして来ました。
それはわたくしの性分も合っていました。
ですが、父である陛下が倒れられて、王国を牛耳ろうとする三人の動き、異世界の戦士であるクロカワ一行の裏切り、近付く魔族軍の侵攻とが重なりました。
そしてわたくしは父から国王代理を任されました。
今迄のわたくしでは居られなくなったのです。
そしてこの国の為、民の為、王としての振る舞いをする決意をして、実行をしたという訳です」
「そうだったのか…。
俺はさっきポーラは凄いと言ったけど、そんな軽々しく言うべき言葉じゃ無かったなよなあ…ごめん…」
「そんなことはありませんわ、お兄様の労いの言葉は嬉しかったです」
「…でも、俺は…」
「…でしたらお兄様。頑張ったわたくしにちょっぴり…お慰みを頂けますか?」
ポーラ姫はそう言うと目を閉じて、俺にその可憐な顔を差し出した。
「…そこまでにしておきたまえっポーラあ!」
「きゃうンっ?」
ポーラ姫の可憐な頬にミリィの大きな杖が添えられて、そのままぐいーっと全力で押しのけられて、彼女はそのまま玉座から転げ落ちて顔から地面に墜落、ずざあああーー! と凄い勢いで地面を滑った。
そろそろこの光景にも慣れてきた気がするけど…やっぱりすごく痛そうです…。
しかし彼女は元気良くむくっと起き上がるとミリィに凄い勢いで駆け寄って抗議の声を上げた。
「いきなり杖で力いっぱい押しのけるなんて酷いですミリィお姉様!!」
「だからあ、暴走している愚妹(ぐまい)を鎮めるのも姉の役目だって言っているよねポーラ!
ボクはあれだけ言ったのに何でまた口づけをしようとするんだい!」
「…これは違いますわミリィお姉様。わたくしは妹として、ケイガお兄様に、頭を撫でて欲しかったのですわ」
「えっ? そうなのかいポーラ?」
「…昔ファイズお兄様が、わたくしが上手く習い事をできた時に頭を撫でて下さいました。
わたくしはそれが楽しみで習い事も頑張りましたの。
ですから、出来れば、ケイガお兄様にも頑張ったわたくしを撫でて欲しかったのです。
…子供じみた願いで申し訳ございません、お兄様。
宜しければ…ですけど」
「いや全然構わないよポーラ、それなら早速…これでどうかなあ?」
俺はポーラ姫の頭を撫でた。
以前に撫でた時は子供をあやすように撫でていた。
だがこれはご褒美の様なものだから、優しく愛でる様に撫でた。
そういえば、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)が幼い頃、俺は二人を褒める時によく頭を撫でてあげてたっけなあ…。
「はあ…お兄様、とても気持ち良いです…至福ですわ…」
「あっ、良いなぁ…」
ミリィは指をくわえて、恍惚(こうこつ)とした表情のポーラ姫を見つめていた。
「それにしてもミリィお姉様は早とちりにも程がありますわ。
いくらわたくしでも再三お兄様に口づけを迫りませんの。
もしかしてお姉さま、”その様なことばかり”考えてはいませんよね?」
「なっ…なっ…こ、このボクが! むっつりスケベだとでも言うのかいポーラあああーー!!」
ボ、ボ、ボクはそんなこと全然これっぽちも考えてないよっ!
ボクと兄君様との想像の関係は至って健全さ!」
「でもミリィお姉様のお部屋のノートに男女の口づけの手書きのイラストが幾つも描かれてませんでした?
しかもその男女は何故かみんな裸だった様な気がします…」
「わーわーわー! ポーラあっ! 兄君様の前でそんな事を言うのは止めたまえっ!
…ち、違うんだ兄君様、あれは魔術学を研究する上で必要だったんだ!
ボクは決して何もやましいことなんて考えていないからね! 本当だよ! 信じて兄君様あ!」
顔を真っ赤にして両腕を力いっぱいバタバタさせているミリィ。
いつもは知的かつ冷静な彼女が此処まで取り乱しているのは初めて見た気がするぞ。
「まあ年頃の女の子だしそういう事に興味を持つのも仕方が無いんじゃないか? 俺は全然気にしないから」
「ケイガ兄君様あ! ボクの話を信じてよおーー!!」
ミリィの絶叫が謁見の間に響き渡った。
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