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第54話 聖王国の足を掬う者たち
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連行されていくポーラ姫と入れ替わりに女官らしき一人の女性がやってきて、ミリィに元に駆け寄ると一礼して言葉を述べた。
「公爵様、謁見の間にお客様が来ております」
「ボク達が帰城してすぐに謁見とは目ざといね。
…いや、ずっと見張りをしていたのかな?
誰が来たんだい? 大臣? 教会長? 商会長?」
「それが…おっしゃられた全員が来られました」
「へえ…もしかして、一同示し合わせて来たのかな?
それともたまたまかな?
彼等は聖王国を牛耳りたいという目的は同じだけど、別に仲間同士という訳では無いからね。
それじゃあポーラ達にも至急連絡お願いするよ、至急対策を練らないとね。
兄君様(あにぎみさま)、ユウカ。お城に来たばっかりで悪いけどこのままボクたちと一緒に来てくれるかい?」
ミリィは自身の手を頬に添えて考える素振りをすると、不敵な笑みを浮かべながら俺たちに同行を促した。
エクスラント聖王国の王城、ホウリシア城。
この城の謁見の間を3人の男たちが陣取って、この国の姫が来るのをいまかいまかと待ちかねていた。
この国の大臣で貴族派の筆頭、ゴルザベス。
王国御用商人で「商会」のトップ、商会長バイアン。
聖王国に絶大な影響を持つ宗教団体「教会」のトップである教会長クリスト。
「我等がここに来たことはとうに連絡済みの筈、遅いですなポーラニア殿下は」
「はっはっはっ、ゴルザベス殿、殿下とはいえ女の身、準備に時間がかかっているのでしょうよ」
「殿下は我が【教会】の一機関である【修道会】のトップである【聖女】でもあるのですじゃ。
その様な御方が化粧に時間をかける等ありえませんぞバイアン殿」
「はっはっはっ、殿下は教会の顔であるから、クリスト殿にとっては商品価値が下がるのは納得しかれますか?」
「殿下を商品とは商会長らしい発言ですのう。せめてガラスケースに入った非売品と言ってほしいですじゃ」
「まあ、所詮はポーラニア殿下とて女の身、面倒この上ないということですな」
聖王国の足を掬(すく)おうとする三人は互いに牽制しあいながらも、ポーラニア姫に対する敬意は全く感じられなかった。
「ゴルザベス様、バイアン様、クリスト様。
殿下はまだご支度にお時間がかかられます。
お飲み物を準備しましたので、しばしゆるりとお待ちくださいませ」
姫騎士団(プリンセンスナイツ)の団員であるイチョウが飲み物を乗せた台車を押してきた。
彼女は3人に飲み物を手渡すと一礼してその場をあとにする。
「はっはっはっ、流石は殿下直属の女騎士様、お美しいですな」
「ふん、所詮は見てくれだけの女風情、我が貴族騎士のほうが実力は上ですな」
「我が教会騎士も実力は負けてはおらんですじゃ、殿下にも教会騎士を貸し与えますと言うたが、自身で女のみの姫騎士団を作られてしまった。
まったく何が気に喰わないのですかのう」
「高い実力と言えば、以前この王宮に居たクロカワ殿が殿下の暗殺を狙ったという情報が商会の情報網から入りましたよ」
「ほう、しかし陛下が無事という事は失敗したのですな」
「暗殺など誰がそんな大事を企んだのですかのう、おそろしいことですじゃ」
(…姫様の暗殺にまったく驚かないということは互いに既に周知済みだったということですね。
やはりこの3人のうち誰かが暗殺の主犯ですか…流石に誰がクロカワに暗殺を依頼したまでは明かしませんか?)
イチョウは謁見の場をあとにしたと見せかけて、完全に気配を隠して物陰から3人の会話を聞いていた。
彼女は姫騎士団の中で諜報を担当している。
(姫様、姫騎士団、そしてケイガ兄様は私の家族…家族を侮蔑し害を成そうとする人物を私は許しません…。
今すぐにでも3人とも斬って捨てたい所ですが、私はあくまで諜報活動のみとしなければなりません…。
まあ今は首を洗って待っていることです…)
イチョウは彼等への怒りを静かに燃やしながらポーラ姫たちに報告の為、人知れず影のように謁見の間を後にした。
「公爵様、謁見の間にお客様が来ております」
「ボク達が帰城してすぐに謁見とは目ざといね。
…いや、ずっと見張りをしていたのかな?
誰が来たんだい? 大臣? 教会長? 商会長?」
「それが…おっしゃられた全員が来られました」
「へえ…もしかして、一同示し合わせて来たのかな?
それともたまたまかな?
彼等は聖王国を牛耳りたいという目的は同じだけど、別に仲間同士という訳では無いからね。
それじゃあポーラ達にも至急連絡お願いするよ、至急対策を練らないとね。
兄君様(あにぎみさま)、ユウカ。お城に来たばっかりで悪いけどこのままボクたちと一緒に来てくれるかい?」
ミリィは自身の手を頬に添えて考える素振りをすると、不敵な笑みを浮かべながら俺たちに同行を促した。
エクスラント聖王国の王城、ホウリシア城。
この城の謁見の間を3人の男たちが陣取って、この国の姫が来るのをいまかいまかと待ちかねていた。
この国の大臣で貴族派の筆頭、ゴルザベス。
王国御用商人で「商会」のトップ、商会長バイアン。
聖王国に絶大な影響を持つ宗教団体「教会」のトップである教会長クリスト。
「我等がここに来たことはとうに連絡済みの筈、遅いですなポーラニア殿下は」
「はっはっはっ、ゴルザベス殿、殿下とはいえ女の身、準備に時間がかかっているのでしょうよ」
「殿下は我が【教会】の一機関である【修道会】のトップである【聖女】でもあるのですじゃ。
その様な御方が化粧に時間をかける等ありえませんぞバイアン殿」
「はっはっはっ、殿下は教会の顔であるから、クリスト殿にとっては商品価値が下がるのは納得しかれますか?」
「殿下を商品とは商会長らしい発言ですのう。せめてガラスケースに入った非売品と言ってほしいですじゃ」
「まあ、所詮はポーラニア殿下とて女の身、面倒この上ないということですな」
聖王国の足を掬(すく)おうとする三人は互いに牽制しあいながらも、ポーラニア姫に対する敬意は全く感じられなかった。
「ゴルザベス様、バイアン様、クリスト様。
殿下はまだご支度にお時間がかかられます。
お飲み物を準備しましたので、しばしゆるりとお待ちくださいませ」
姫騎士団(プリンセンスナイツ)の団員であるイチョウが飲み物を乗せた台車を押してきた。
彼女は3人に飲み物を手渡すと一礼してその場をあとにする。
「はっはっはっ、流石は殿下直属の女騎士様、お美しいですな」
「ふん、所詮は見てくれだけの女風情、我が貴族騎士のほうが実力は上ですな」
「我が教会騎士も実力は負けてはおらんですじゃ、殿下にも教会騎士を貸し与えますと言うたが、自身で女のみの姫騎士団を作られてしまった。
まったく何が気に喰わないのですかのう」
「高い実力と言えば、以前この王宮に居たクロカワ殿が殿下の暗殺を狙ったという情報が商会の情報網から入りましたよ」
「ほう、しかし陛下が無事という事は失敗したのですな」
「暗殺など誰がそんな大事を企んだのですかのう、おそろしいことですじゃ」
(…姫様の暗殺にまったく驚かないということは互いに既に周知済みだったということですね。
やはりこの3人のうち誰かが暗殺の主犯ですか…流石に誰がクロカワに暗殺を依頼したまでは明かしませんか?)
イチョウは謁見の場をあとにしたと見せかけて、完全に気配を隠して物陰から3人の会話を聞いていた。
彼女は姫騎士団の中で諜報を担当している。
(姫様、姫騎士団、そしてケイガ兄様は私の家族…家族を侮蔑し害を成そうとする人物を私は許しません…。
今すぐにでも3人とも斬って捨てたい所ですが、私はあくまで諜報活動のみとしなければなりません…。
まあ今は首を洗って待っていることです…)
イチョウは彼等への怒りを静かに燃やしながらポーラ姫たちに報告の為、人知れず影のように謁見の間を後にした。
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