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第53話 なお容疑者は意味不明の供述をして犯行を否認しており
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「…あの、お兄様…」
ポーラ姫は俺の手を握ったままじりじりとその身を近づいて来た。
うん? 何か近く無いですか?
あの、お姫様?
俺は思わず後ずさったが。俺の背中に響くドン! という音と共に城の厚い壁が立ち塞がった。
ポーラ姫は動きを停めた俺の胸の中にずいと入ってくる。
えっ、これって噂に聞く壁ドンですか!?
「…ケイガお兄様…」
金髪碧眼のお姫様はその瞳を潤ませながら俺の目を見上げた。
あの、近い! 近いですよ!
「…どうぞ…」
ポーラ姫はその吐息を感じる距離にまで俺の顔に寄ると、目を閉じてその可憐な唇を差し出した。
またしても俺は驚きの余り固まって動けなくなった。
「…いい加減にしないかポーラあーー!!」
「きゃうン!」
金髪碧眼の見た目完璧なお姫様は、その可憐な頬に添えられたミリィの大きな杖にぐぐいっと全力で押しのけられて、そのまま顔から地面に墜落、ずざああああ! と凄い勢いで地面を滑った。
すごく…痛そうです…。
しかし彼女は元気良くむくりと起き上がるとミリィに駆け寄って抗議の声を上げた。
「いきなり杖で力いっぱい押しのけるなんて酷いですわミリィお姉様!!」
「だから暴走している愚妹(ぐまい)を鎮めるのも姉の役目だって言っているだろうポーラ!
儀式は手を握るだけだって言ったよね! 何で口づけまでしようとするんだい!」
「ケイガお兄様はたくさんの妹たちのお相手をされてお疲れの様子でしたわ、そこでわたくしはお兄様を元気にして差し上げようと思いましたの。
古の時代から、乙女の口づけは勇ましい殿方の戦士に力を与えるのが定番ですわ。
ですから不肖ながらこのポーラは、お兄様に唇を捧げて少しでも元気になって頂きたいと思ったのです」
ちょっと何言ってるのこのお姫様っ!?
そんなことしたら俺のナニカも元気になってしまうでしょうがあああーー!!
俺は心の中で絶叫した。
正直いって今のは危なかった。
もしミリィが居なかったらどうなっていたかわからない。
俺は凄い剣幕でポーラ姫を叱りつけているハーフエルフの美少女に心の底から感謝した。
「…ふふっ、それっぽい事を言っている様だけど、論理が飛躍し過ぎているよ! 本音は兄君様と口づけしたかっただけだよねポーラぁ!!
姫騎士団(プリンセスナイツ)! ケイガ兄君様の妹の立場を著しく逸脱しようと企んだこのポーラ容疑者(18)を逮捕したまえ!」
「はっ、公爵様。
…姫様、残念です。
いくら我が剣を捧げる主(あるじ)とはいえ、私達ケイガ兄様の妹の中でひとりだけ抜け駆けしようとしたその罪、断じて見逃すことはできません」
「さあ姫様こちらへ」
「参りましょう姫様」
シノブ団長に手を引かれ、イチョウとクレハに両脇をがっしりと固められたポーラ姫はこの場から連行されて行った。
「ちょ、ちょっと待ってください! これは何かの間違いですの! ポーラ何も悪くはありませんわ!
ちょっと唇が触れるだけ! ちょっと触れるだけのつもりだったんです!
ケイガお兄様! ユウカ様! わたくしは無実ですわ! どうか信じて下さい!」
「…ポーラさん、残念だけどあたしも全然擁護できないよ…ごめん」
「ああっ、お兄様助けて! ケイガお兄様あーー!!」
ポーラ姫の悲痛な叫びが周囲に響き渡った。
ポーラ姫は俺の手を握ったままじりじりとその身を近づいて来た。
うん? 何か近く無いですか?
あの、お姫様?
俺は思わず後ずさったが。俺の背中に響くドン! という音と共に城の厚い壁が立ち塞がった。
ポーラ姫は動きを停めた俺の胸の中にずいと入ってくる。
えっ、これって噂に聞く壁ドンですか!?
「…ケイガお兄様…」
金髪碧眼のお姫様はその瞳を潤ませながら俺の目を見上げた。
あの、近い! 近いですよ!
「…どうぞ…」
ポーラ姫はその吐息を感じる距離にまで俺の顔に寄ると、目を閉じてその可憐な唇を差し出した。
またしても俺は驚きの余り固まって動けなくなった。
「…いい加減にしないかポーラあーー!!」
「きゃうン!」
金髪碧眼の見た目完璧なお姫様は、その可憐な頬に添えられたミリィの大きな杖にぐぐいっと全力で押しのけられて、そのまま顔から地面に墜落、ずざああああ! と凄い勢いで地面を滑った。
すごく…痛そうです…。
しかし彼女は元気良くむくりと起き上がるとミリィに駆け寄って抗議の声を上げた。
「いきなり杖で力いっぱい押しのけるなんて酷いですわミリィお姉様!!」
「だから暴走している愚妹(ぐまい)を鎮めるのも姉の役目だって言っているだろうポーラ!
儀式は手を握るだけだって言ったよね! 何で口づけまでしようとするんだい!」
「ケイガお兄様はたくさんの妹たちのお相手をされてお疲れの様子でしたわ、そこでわたくしはお兄様を元気にして差し上げようと思いましたの。
古の時代から、乙女の口づけは勇ましい殿方の戦士に力を与えるのが定番ですわ。
ですから不肖ながらこのポーラは、お兄様に唇を捧げて少しでも元気になって頂きたいと思ったのです」
ちょっと何言ってるのこのお姫様っ!?
そんなことしたら俺のナニカも元気になってしまうでしょうがあああーー!!
俺は心の中で絶叫した。
正直いって今のは危なかった。
もしミリィが居なかったらどうなっていたかわからない。
俺は凄い剣幕でポーラ姫を叱りつけているハーフエルフの美少女に心の底から感謝した。
「…ふふっ、それっぽい事を言っている様だけど、論理が飛躍し過ぎているよ! 本音は兄君様と口づけしたかっただけだよねポーラぁ!!
姫騎士団(プリンセスナイツ)! ケイガ兄君様の妹の立場を著しく逸脱しようと企んだこのポーラ容疑者(18)を逮捕したまえ!」
「はっ、公爵様。
…姫様、残念です。
いくら我が剣を捧げる主(あるじ)とはいえ、私達ケイガ兄様の妹の中でひとりだけ抜け駆けしようとしたその罪、断じて見逃すことはできません」
「さあ姫様こちらへ」
「参りましょう姫様」
シノブ団長に手を引かれ、イチョウとクレハに両脇をがっしりと固められたポーラ姫はこの場から連行されて行った。
「ちょ、ちょっと待ってください! これは何かの間違いですの! ポーラ何も悪くはありませんわ!
ちょっと唇が触れるだけ! ちょっと触れるだけのつもりだったんです!
ケイガお兄様! ユウカ様! わたくしは無実ですわ! どうか信じて下さい!」
「…ポーラさん、残念だけどあたしも全然擁護できないよ…ごめん」
「ああっ、お兄様助けて! ケイガお兄様あーー!!」
ポーラ姫の悲痛な叫びが周囲に響き渡った。
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