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第43話 若き魔竜

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「さて皆の者、どうする? 
勇者ユウカとその兄ケイガ、このまま放っておくわけにもいかないか。
そして大魔王様が完全に目覚める前に地上を掃除して人間共の数を減らしておく必要もあるだろう。
何か意見があるものはいるか?
我こそはという者はいるか?」

ガルヴァーヴは自らの前に並び立つ魔竜(エビルドラゴン)達に問いかける。
しかし副官ディラムから勇者とその兄の強さを聞いた以上、これはたやすい任務ではないと一同は躊躇した。

「ではガルヴァーヴ様ッ! どうかこのリュシウムに勇者討伐と人間界の侵攻をお命じ下さいッ!」

一匹の竜がガルヴァーヴの前に進み出て口を開いた。
竜形態のガルヴァーヴよりは二回りは小さくまだ若い竜だが人の身からすれば巨大な竜である。

「ほう…若き魔竜リュシウムよ。この場の空気でよくぞ言った。ならば随分と自信があるのだろうなぁ?」

「ハハッー! 我が通常魔力数値は950、全力での魔力も含め副官ディラムよりも強いと自負しております!
我が力を持って勇者討伐と人間界の侵攻を同時にこなしてみせましょうッ!
そして恐れながら…副官ディラムは勇者討伐に失敗した身。
何か罰を与えなければ他の者に示しが尽かないと具申しますッ!」

「ふむ、罰か…ならばディラムお前はしばらく謹慎としよう。どうせお前は復活仕立てでまともに動けんからな。しばらく静養するがいい」

「はっ、ガルヴァーヴ様」

「だがリュシウムよ、お前に出撃は認められんな」

「な、何故ですガルヴァーヴ様ッ!?」

「理由を問うか…? ひとつはディラムが敵わなかった相手にお前の様な経験も浅い力だけの若造を行かせたところで無駄だからだ。
いや、下手すれば勇者たちが更に強さを増す糧となってしまうかも知れんからな。
我等魔族は人間に比べて圧倒的に数が少ない。そうやすやすと貴重な戦力を出すことは出来ん。
ふたつはお前如き若造がこのオレに、オレが最も信頼する副官ディラムに罰を与えよと言ったからだ。
確かにディラムに任務失敗の責は必要だった、だがそれはオレから皆に言えば済むことだった。
ディラムへのやっかみかどうか迄は知らぬが先を焦ったな若造」

「グッ…、ガルヴァーヴ様…申し訳ございませんッ…」

「リュシウム、お前も謹慎しろ。少しは頭を冷やすんだな。
とりあえず今回の魔竜軍議はこれで解散とする。
オレ達魔竜軍はしばらく静観だ」

「フォフォフォ…待つがよいガルヴァーヴ、その若い竜を儂に預けては見んか?」

魔竜たちがひしめく王の間に、いつの間にか魔導士のローブに身を包んだ一人の爺が立っていた。

「お前は…魔導将アポクリファル。魔界一の魔導学者とも呼ばれるお前が何故ここにやって来た?」
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