39 / 556
第39話 異世界の新勢力
しおりを挟む
「みんな、大丈夫か?」
「大丈夫ですわお兄様」
「これぐらい平気さ兄君様」
「問題ありません、兄様」
「「「兄様ー、大丈夫ですー!!」」」
黒川たちとの戦いが終わり、俺は落ち着いて来た優羽花(ゆうか)から手を離すとポーラ姫、ミリィ、シノブ団長、姫騎士団(プリンセスナイツ)のみんなに声をかけた。
すぐに妹たちの元気な声が帰って来て俺は一安心した。
さっきゴウレムの一撃を受けたカエデとモジミはポーラとミリィの回復魔法を受けて全快している。
俺も地ノ宮流気士術(ちのみやりゅうきしじゅつ)、四の型、瞑想(めいそう)を使い先程黒川のゴウレムの攻撃で受けたダメージの回復を図っているが全快した訳では無い。
こんなに短時間で全快する回復魔法は凄いなと俺は改めて思った。
「ポーラ、ミリィ、さっきの話だと黒川達は俺達より先にこの世界に召喚されたみたいだが、全部で30人ぐらいか?」
「そうですわお兄様」
「よくわかったね兄君様? 正確には36人だね」
「さっきの戦闘で俺の専用装備、見通しの眼鏡(スカウターレンズ)に魔力数値100以上の反応が30箇所映し出された瞬間にあの無数の火球(ファイアボウル)の魔法攻撃が来た。
あれは黒川が伏せていた予備戦力からの魔法攻撃だろう、笹川と同程度の魔力数値が30箇所というのはそのまま黒川の部下の人数分だろうと思った。
黒川は今は部長だと言っていた。そして会議中にこの世界に転移したと言っていたから、おそらくその会議室に居たであろう黒川の部長としての部下の数がそれぐらいだと考えると辻褄は合う。
黒川たちの魔力総数をざっと計算すると魔力数値100以上の人間が35人に魔力数値200の黒川を加えて魔力総数3700以上は確実。
そして黒川は戦闘中に魔力数値100のゴウレムを一度に3体呼び出していた。
少なく見積もっても魔力総数4000の戦力を黒川は擁しているということになる。
…なあミリィ、この世界にとって黒川はかなり危ない存在では無いのか?」
「へえ…そこまで考えていたのかい? 流石は兄君様だね!
ああ、クロカワ君がこのエゾン・レイギスの少なくとも人間界においては危険な存在と言うのは間違いないよ。
異世界、地球から召喚されたクロカワ君は最初から部下を35人も引き連れていたんだ。
これ程の大人数が一度に召喚されたというのはボクも聞いたことが無かった。
そして何より気になったのは、彼女を一目見た時感じたその野心溢れる眼差しだね…ボクもポーラも警戒したさ。
だけどボク達が住まう国、エクスラント聖王国は魔族と戦って貰う為に異世界から召喚された人間を補佐する義務を精霊様達から与えられている。
だから今までの習わし通り、異世界から来た彼女たちを迎え入れて、この世界の知識を与え、魔法を教え、必要な装備を整えて、魔族と戦って貰うことにした。
だが結果はボクやポーラの危惧したとおりになった。
この世界、エゾン・レイギスの知識、魔法を得た彼女はもうこれ以上の用は無いとばかりに王城の宝物殿から装備や資金を奪って行方をくらましたんだ。
今思えばボクたちの判断が甘すぎたとしか言いようがないね…。
おそらくクロカワ君の目的はこの世界で自分の国を興してこのエゾン・レイギスの覇権を握ることだろう。
そしてこの世界の新勢力である彼女に協力する人間はそれなりに居るんだ。
野心を持ち高い戦力を所持する者に与(くみ)して自身も利を得たい、共に天下を握りたいと言う人間はかなり居るという事だね。
それはエクスラント聖王国も例外でも無かった。王国を牛耳ろうとしている大臣、貴族連中、商会、教会の中にもクロカワ君に通じている者が居る様だ。
彼等はクロカワ君が聖王国を出奔(しゅっぽん)したのはボクやポーラたちの王家派の責任にして追及材料にしながらも、出奔前からクロカワ君に協力していたというのなら立ちが悪いね。
本来ならばこの世界エゾン・レイギスの人間はクロカワ君の様な者には一切与することなく、一丸となって人間を根絶やしにしようとする魔族と戦わなかれなならないというのにね…。
いやあ、全くお恥ずかしい限りだよ兄君様」
「そんなことは無いさ、黒川課長はそういった人間の欲、業(ごう)に付け込んで人を動かし、自分の意の通りにするのが上手いんだろう。
そんな人間が大きな力を持ちそして強大な戦力を持っていたら、心惹かれる人間は多いの知れない…。
でも俺は…冷酷非情で人をゴミの様に捨て駒にするやり方の黒川には相容れないし、今後も認めることは無いけどな!」
俺は黒川に捨て駒にされ、それであいつが出世した事実から社会はそういうものだろうと理解はしたが、俺自身がその価値観を認めた訳ではないのだ。
そんな物事の価値観では俺は妹たちを護れない、俺と妹たちのセカイを護れない。
「ボクもクロカワ君のやり方は気に喰わないからね。うん、兄君様と意見が一致してボクは嬉しいよ!
…それはそうと、その眼鏡がオリジナルの見通しの眼鏡なんだね。ちょっとボクに貸してくれてもいいかい?」
「ああ、構わないよ」
俺は眼鏡を外すとミリィに手渡した。
「大丈夫ですわお兄様」
「これぐらい平気さ兄君様」
「問題ありません、兄様」
「「「兄様ー、大丈夫ですー!!」」」
黒川たちとの戦いが終わり、俺は落ち着いて来た優羽花(ゆうか)から手を離すとポーラ姫、ミリィ、シノブ団長、姫騎士団(プリンセスナイツ)のみんなに声をかけた。
すぐに妹たちの元気な声が帰って来て俺は一安心した。
さっきゴウレムの一撃を受けたカエデとモジミはポーラとミリィの回復魔法を受けて全快している。
俺も地ノ宮流気士術(ちのみやりゅうきしじゅつ)、四の型、瞑想(めいそう)を使い先程黒川のゴウレムの攻撃で受けたダメージの回復を図っているが全快した訳では無い。
こんなに短時間で全快する回復魔法は凄いなと俺は改めて思った。
「ポーラ、ミリィ、さっきの話だと黒川達は俺達より先にこの世界に召喚されたみたいだが、全部で30人ぐらいか?」
「そうですわお兄様」
「よくわかったね兄君様? 正確には36人だね」
「さっきの戦闘で俺の専用装備、見通しの眼鏡(スカウターレンズ)に魔力数値100以上の反応が30箇所映し出された瞬間にあの無数の火球(ファイアボウル)の魔法攻撃が来た。
あれは黒川が伏せていた予備戦力からの魔法攻撃だろう、笹川と同程度の魔力数値が30箇所というのはそのまま黒川の部下の人数分だろうと思った。
黒川は今は部長だと言っていた。そして会議中にこの世界に転移したと言っていたから、おそらくその会議室に居たであろう黒川の部長としての部下の数がそれぐらいだと考えると辻褄は合う。
黒川たちの魔力総数をざっと計算すると魔力数値100以上の人間が35人に魔力数値200の黒川を加えて魔力総数3700以上は確実。
そして黒川は戦闘中に魔力数値100のゴウレムを一度に3体呼び出していた。
少なく見積もっても魔力総数4000の戦力を黒川は擁しているということになる。
…なあミリィ、この世界にとって黒川はかなり危ない存在では無いのか?」
「へえ…そこまで考えていたのかい? 流石は兄君様だね!
ああ、クロカワ君がこのエゾン・レイギスの少なくとも人間界においては危険な存在と言うのは間違いないよ。
異世界、地球から召喚されたクロカワ君は最初から部下を35人も引き連れていたんだ。
これ程の大人数が一度に召喚されたというのはボクも聞いたことが無かった。
そして何より気になったのは、彼女を一目見た時感じたその野心溢れる眼差しだね…ボクもポーラも警戒したさ。
だけどボク達が住まう国、エクスラント聖王国は魔族と戦って貰う為に異世界から召喚された人間を補佐する義務を精霊様達から与えられている。
だから今までの習わし通り、異世界から来た彼女たちを迎え入れて、この世界の知識を与え、魔法を教え、必要な装備を整えて、魔族と戦って貰うことにした。
だが結果はボクやポーラの危惧したとおりになった。
この世界、エゾン・レイギスの知識、魔法を得た彼女はもうこれ以上の用は無いとばかりに王城の宝物殿から装備や資金を奪って行方をくらましたんだ。
今思えばボクたちの判断が甘すぎたとしか言いようがないね…。
おそらくクロカワ君の目的はこの世界で自分の国を興してこのエゾン・レイギスの覇権を握ることだろう。
そしてこの世界の新勢力である彼女に協力する人間はそれなりに居るんだ。
野心を持ち高い戦力を所持する者に与(くみ)して自身も利を得たい、共に天下を握りたいと言う人間はかなり居るという事だね。
それはエクスラント聖王国も例外でも無かった。王国を牛耳ろうとしている大臣、貴族連中、商会、教会の中にもクロカワ君に通じている者が居る様だ。
彼等はクロカワ君が聖王国を出奔(しゅっぽん)したのはボクやポーラたちの王家派の責任にして追及材料にしながらも、出奔前からクロカワ君に協力していたというのなら立ちが悪いね。
本来ならばこの世界エゾン・レイギスの人間はクロカワ君の様な者には一切与することなく、一丸となって人間を根絶やしにしようとする魔族と戦わなかれなならないというのにね…。
いやあ、全くお恥ずかしい限りだよ兄君様」
「そんなことは無いさ、黒川課長はそういった人間の欲、業(ごう)に付け込んで人を動かし、自分の意の通りにするのが上手いんだろう。
そんな人間が大きな力を持ちそして強大な戦力を持っていたら、心惹かれる人間は多いの知れない…。
でも俺は…冷酷非情で人をゴミの様に捨て駒にするやり方の黒川には相容れないし、今後も認めることは無いけどな!」
俺は黒川に捨て駒にされ、それであいつが出世した事実から社会はそういうものだろうと理解はしたが、俺自身がその価値観を認めた訳ではないのだ。
そんな物事の価値観では俺は妹たちを護れない、俺と妹たちのセカイを護れない。
「ボクもクロカワ君のやり方は気に喰わないからね。うん、兄君様と意見が一致してボクは嬉しいよ!
…それはそうと、その眼鏡がオリジナルの見通しの眼鏡なんだね。ちょっとボクに貸してくれてもいいかい?」
「ああ、構わないよ」
俺は眼鏡を外すとミリィに手渡した。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話
白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。
世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。
その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。
裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。
だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。
そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!!
感想大歓迎です!
※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる