シスターヴレイヴ！～上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます～

第36話 非情の戦い方（やりかた）

「鳴鐘君ーー！　ハハッーー！　死ねいいーー！！」

　笹川係長は笑いながら火球（ファイアボウル）を連発してくる。まるで快楽殺人者の様である。
　魔族ディラムが言うにこの世界の一般の大人の魔力数値は5、笹川の魔力数値は100。
　この世界でその100という数値は圧倒的に強いと思われる。
　笹川はこの世界で急に強者になったことでその力に溺れているのか？
　だが俺に取っては魔法攻撃は脅威ではあるが、その程度の動きは魔族ディラムと比べたらてんで大したことは無い。
　そして俺は殺意を持って襲ってきた相手には容赦はしない。
　俺は笹川の魔法攻撃を見切ると一気に間合いを詰めてそのみぞおちに渾身の拳の一撃を叩き込んだ。

「ぐぶおあッ！！」

　笹川はくの字に曲がってまるでゴムボールの様に飛んでいった。
　これでもう火球は飛んでこないと安堵する俺。
　だが笹川が飛んでいった先の地面が盛り上がり新たなゴウレムが現れてその拳を笹川に向けて叩き込んだ。
　まるでテニスの打ち合いの如く凄まじい速度で撃ち出された笹川は俺を直撃した。
　俺は咄嗟に腕を交差させて防御態勢を取ったので衝撃によるダメージは微々だが、人一人分の高速質量エネルギーには抗えずそのまま後ろに吹き飛ばされてしまう。
　飛ばされた先に新たなゴウレムが出現する。…しまったこれはかわせない！？
　ゴウレムの巨大な拳は笹川ごと俺に容赦なく撃ち込まれた。

「ぐ、ああっ！」

　ゴウレムの巨大な拳による質量打撃が俺の背中からまともに直撃した。
　そのまま地面に勢いよく叩きつけられて身動きできなくなる俺。

「フフッ、異世界でも爪が甘いわね鳴鐘君。さっきゴウレムを撃ち砕いた”ライジン”とかいう技で笹川係長を粉々にしてればこんなことにはならなかったのにね」

　俺の周りを計3体のゴウレムが囲み、その巨大な拳を次々と叩き込んでいく。
　笹川を何の躊躇も無く捨て駒にして文字通り俺にぶつけ、俺の動きを停めてからの数で囲んで圧し潰しながらの絶え間無い連続攻撃、これが黒川の非情の戦い方（やりかた）か。
　流石は黒川課長というべきか…その容赦なさ振りはこの異世界で更に磨きがかかったか？
　まずい、いくら金剛で肉体強度を上げているといってもゴウレムの巨大な拳による大質量の打撃を受け続けていては…。

「それじゃあね鳴鐘君、今度こそさようなら。フフッ、会社をクビどころか人生のクビね」

　黒川が手を下ろすとゴウレムは俺に全力で攻撃すべく大きく腕を振り上げた。
　だが次の瞬間、ざん！　という音と共に三体のゴウレムがまとめて寸断されてその場に崩れ落ちる。
　俺の前には星剣（せいけん）をその手に構え、全身から沸き立つ炎の様な魔力のオーラを纏った優羽花（ゆうか）が立っていた。
　優羽花はゴウレムを呼び出し操る黒川を怒りの宿った瞳で睨みつけて叫んだ。

「よくも…よくもお兄を…お前は！　お前は絶対に許さない！」