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第13話 静里菜(せりな)の加護

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「…ってちょっと待ちなさい静里菜あっーー!」

「…ああン! ちょっと優羽花(ゆうか)、そんなに強く身体を引っ張らないで下さいー」

「だってあんた今お兄にキ、キスしようとしたじゃないのおーー! そんなことされてなりふり構っている訳ないでしょおー! あと変な色っぽい声出すなあ!」

「だってもしかしたらこれが兄さんとの今生の別れになってしまうかも知れないんですよ…だったら口づけぐらい良いじゃないですか。
別に減るもんじゃないですし。それに優羽花はこれから兄さんと異世界で二人きりでイチャイチャし放題じゃないですか。
これぐらいは許してくれても良いとわたしは思いますよ?」

「減るわよっ!それにあたしがお兄とイチャイチャなんて…す、する訳無いじゃない!ば、馬鹿じゃないの!
だからあたしはキスなんて許さない、絶対に許さないんだからね!」

「むう…優羽花はこんな時でも厳しいです。わかりました。それでは今回はこれで我慢しますよ」

 静里菜はそう言うと俺の頬に口づけをした。
 彼女の柔らかい唇が俺の頬に触れて、その可憐な息が俺に吹き込まれる。
 と、同時に俺の身体の中になにかあたたかいものが入って来た。これが護り巫女(まもりみこ)の加護か…凄いな。

「ちょ、ちょっと静里菜あっーー!」

「ふふっ、やっぱり口づけは殿方からして頂かないと。
ですからわたしから出来るのはここまでです。
優羽花、”ぎ妹同盟(ぎまいどうめい)”第二条…もし一条に違反する過剰な抜け駆けがあった場合、同じ内容のことをしても良い、です。
ですからあなたも兄さんの頬に口づけしても良いんですよ、わたしは許可しますから」

「な、何言ってるのよおー! あたしがお兄にの頬にキ、キスなんて…す、する訳ないからーー!」

「優羽花、もう少しだけでも素直になったほうが…あっ…どうやらわたし…もう限界みたいです…」

 静里菜の身体が限りなく透明になり、俺たちを包む力場から弾き出された。

「静里菜!」
「静里菜あー!」

 俺と優羽花は遠くなって消えていく静里菜に必死に声をかける。
 そんな俺たちに静里菜は微笑んで、小さく手を振って、そして消えていった。

「静里菜…こんな時でもマイペースで…本当強いよね」

「ああ、俺たちの中じゃあ静里菜が間違いなく一番強いだろうなあ」

 いつもにこやかで平常心の巫女な妹、地ノ宮 静里菜(ちのみや せりな)。
 きっと彼女ならそんなに時間が掛からずにこの異世界に来る手段を講じて俺たちを迎えに来てくれるだろう。
 だから俺たちはその日までこの異世界で無事生きていかなければならないのだ。
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