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第1話 無職ニートとツンデレな妹
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俺の名前は鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳。
とある会社に務めていた俺は、やり手で尊敬していた上司に捨て駒にされ、全ての失敗の責任を押し付けられ会社をクビになった。
そして上司は出世した。
俺は世の中に絶望した。
そして何もする気力がなくなり、自宅に引きこもる所詮無職ニートになった。
「全ては私の判断を無視した彼の独断が起こした失態です、よって全ての責務は彼にあります」
「なっ!?」
「なるほど、それでは彼に全ての責任を取って貰ってクビと云う事になるね」
「うう…」
これは俺が会社の査問委員会に掛けられてクビを宣告させられた時の出来事の夢…。
会社をクビになってから半年も経つが未だに夢に出てきてうなされるのである。
うう…息が苦しい…誰か…俺を…助けてくれ…。
「お兄ちゃん…お兄ちゃん!」
遠くで誰かが呼んでいる。
俺を心配する声。
俺は声の聞こえる方向に手を伸ばした。
意識が覚醒し、俺は悪夢から目を覚ました。
「…はあッ!?」
俺は大きく息を吐くように声を出してベッドから飛び起きた。汗でぐっしょりだ。
この悪夢を見るのはこれで何十回目だろうか。
何度見ても馴れるものではない。
そしてここがあの恐ろしい査問委員会が行われた寒く狭苦しい会社の一室では無く、温かい自分の家の自室であることに俺は胸を撫でおろし、心から安堵した。
「…はいお兄、タオル。汗すごいから拭いたら?」
俺の妹、鳴鐘 優羽花(なるがね ゆうか)は素っ気ない態度で俺にタオルを差し出した。
「ありがとう、優羽花。俺がまたうなされていたのを心配してくれたんだな」
「べ、別に! あたしはお兄の心配なんかしてないし! タオルだってたまたま持っていただけだし!」
そう言って彼女は頬を赤らめながらそっぽを向いた。
優羽花は優しい子なのだが、何故か俺に対しては素直にその優しさを出そうとはしない。
アニメや漫画の言葉で言うのならいわゆるツンデレなのであろう。
…まあそのデレというものが具体的にどういったものなのか俺は見たことは無いのだが。
今日の俺は素直じゃない彼女にちょっとだけ意地悪をしたくなって次の言葉をかけた。
「…そうか? 俺は夢のなかで優羽花が”お兄ちゃん! ”って呼んで心配していたのが聞こえたぞ。
お前は小さいころ俺の後ろからお兄ちゃんお兄ちゃん言っていつもついて回っていたもんなあ…。
でも俺は久しぶりにお兄ちゃんって呼ばれて結構嬉しかったぞ」
「はあ!? あたしお兄ちゃんなんて言わないし! 16歳にもなってお兄ちゃんなんて言う訳ないし!
妹にお兄ちゃんなんて言われて嬉しいなんてキモいし! ば、馬鹿じゃないの!」
優羽花は顔を真っ赤にしてそっぽを向きながら激怒した。
うむ、予想通りの反応に思わず吹き出しそうになった。
「何ニヤニヤしてるのよお! 本当キモい! 馬鹿お兄! 朝ごはんの準備出来ているからね! 冷めちゃうから早く食べてよね!」
優羽花はそう言って床に置いてあったクッションを俺に向かって投げつけると部屋から出ていった。
だが彼女のこの行動も俺にとっては予想通りの反応である。
俺は優羽花は投げたクッションを床に置くと掛け布団を畳んだ。
そして自分の部屋を出て階段を降り、一階にある食堂へと向かう。
食卓のテーブルの椅子には既に優羽花が着席して、俺を待ってくれていた。
とある会社に務めていた俺は、やり手で尊敬していた上司に捨て駒にされ、全ての失敗の責任を押し付けられ会社をクビになった。
そして上司は出世した。
俺は世の中に絶望した。
そして何もする気力がなくなり、自宅に引きこもる所詮無職ニートになった。
「全ては私の判断を無視した彼の独断が起こした失態です、よって全ての責務は彼にあります」
「なっ!?」
「なるほど、それでは彼に全ての責任を取って貰ってクビと云う事になるね」
「うう…」
これは俺が会社の査問委員会に掛けられてクビを宣告させられた時の出来事の夢…。
会社をクビになってから半年も経つが未だに夢に出てきてうなされるのである。
うう…息が苦しい…誰か…俺を…助けてくれ…。
「お兄ちゃん…お兄ちゃん!」
遠くで誰かが呼んでいる。
俺を心配する声。
俺は声の聞こえる方向に手を伸ばした。
意識が覚醒し、俺は悪夢から目を覚ました。
「…はあッ!?」
俺は大きく息を吐くように声を出してベッドから飛び起きた。汗でぐっしょりだ。
この悪夢を見るのはこれで何十回目だろうか。
何度見ても馴れるものではない。
そしてここがあの恐ろしい査問委員会が行われた寒く狭苦しい会社の一室では無く、温かい自分の家の自室であることに俺は胸を撫でおろし、心から安堵した。
「…はいお兄、タオル。汗すごいから拭いたら?」
俺の妹、鳴鐘 優羽花(なるがね ゆうか)は素っ気ない態度で俺にタオルを差し出した。
「ありがとう、優羽花。俺がまたうなされていたのを心配してくれたんだな」
「べ、別に! あたしはお兄の心配なんかしてないし! タオルだってたまたま持っていただけだし!」
そう言って彼女は頬を赤らめながらそっぽを向いた。
優羽花は優しい子なのだが、何故か俺に対しては素直にその優しさを出そうとはしない。
アニメや漫画の言葉で言うのならいわゆるツンデレなのであろう。
…まあそのデレというものが具体的にどういったものなのか俺は見たことは無いのだが。
今日の俺は素直じゃない彼女にちょっとだけ意地悪をしたくなって次の言葉をかけた。
「…そうか? 俺は夢のなかで優羽花が”お兄ちゃん! ”って呼んで心配していたのが聞こえたぞ。
お前は小さいころ俺の後ろからお兄ちゃんお兄ちゃん言っていつもついて回っていたもんなあ…。
でも俺は久しぶりにお兄ちゃんって呼ばれて結構嬉しかったぞ」
「はあ!? あたしお兄ちゃんなんて言わないし! 16歳にもなってお兄ちゃんなんて言う訳ないし!
妹にお兄ちゃんなんて言われて嬉しいなんてキモいし! ば、馬鹿じゃないの!」
優羽花は顔を真っ赤にしてそっぽを向きながら激怒した。
うむ、予想通りの反応に思わず吹き出しそうになった。
「何ニヤニヤしてるのよお! 本当キモい! 馬鹿お兄! 朝ごはんの準備出来ているからね! 冷めちゃうから早く食べてよね!」
優羽花はそう言って床に置いてあったクッションを俺に向かって投げつけると部屋から出ていった。
だが彼女のこの行動も俺にとっては予想通りの反応である。
俺は優羽花は投げたクッションを床に置くと掛け布団を畳んだ。
そして自分の部屋を出て階段を降り、一階にある食堂へと向かう。
食卓のテーブルの椅子には既に優羽花が着席して、俺を待ってくれていた。
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