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第5部 新魔王と結婚なんて、お断り!
第44章 アリーシャ、因縁の二人の対決を見守る
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魔王城1階の大広間には、巨大な柱時計が設置されている。
定刻になると鐘を打ち鳴らす振り子時計――そのベルが、戦闘開始のゴングとなった。
「オラァァーッ!奈落の底まで案内するぜェェ!」
「相も変わらず馬鹿の一つ覚えか。貴様の攻撃なぞ、生前のうちから見切っている!」
オリヴィアスはアフロ中尉の拳を避け、身体をひねりながら斬撃を与える。
アフロ中尉も身をのけ反らせて避けるが、その頬には避けきれなかった切り傷がピッと刻まれた。
「相変わらずの戦闘センスだな。アンタ、まともに戦ってりゃ、イイ兵になれるだろうに。何でクソダセェ陰謀なんぞに手を染める?」
アフロ中尉は心から楽しげに、笑みを浮かべている。
今この瞬間は、恨みも何もかも忘れ、ただ強者との闘いを味わっているようだ。
「闘いそのものが目的の貴様には分からん。私は、この魔界を私の理想とする姿に変えたいだけだ!」
「ああ、分からんね。血筋のイイ坊ちゃん嬢ちゃんばっかが牛耳って、本当に強ェ奴らが上に昇れねぇ魔界なんざ、これっぽっちもゾクゾクしねェ」
いつの間にか一対一の決闘の空気が漂い、誰も戦闘に割り込めない。
ブランも躊躇したように立ち止まり、成り行きを見守っている。
「ねぇスカイ、アフロ中尉って、攻撃パターンは本当にアレだけなの?」
私は二人の戦闘から目を離さず、声だけで訊いてみる。
「はい。第三形態の彼の攻撃は "拳で殴る" のみです。頭は悪くありませんし、補助魔法も何パターンか持ってはいるのですが、攻撃と言うとソレだけですね」
一方のオリヴィアスは、多彩な剣技を持っている。
彼が剣を振るうたびに、その斬撃が獅子や大蛇や流星や、様々な形に輝いて見える。
陰でコソコソ悪さを企む陰険な奴かと思ったら、キッチリ実力も持っているとは……アフロ中尉が闘いたがるわけだ。
「ナラカムよ、いい加減に諦めろ。未来の視える私に、貴様の攻撃は当たらん」
「……それはどうかな」
そう言って不適に微笑うアフロ中尉の姿が、次の瞬間フッと消えた。
直後、派手な打撃音と共に、オリヴィアスの身体が吹き飛ぶ。
……え?今、何が起きたの?
「未来が視えても、相手が見えなかったら意味無ェよなァ?知らなかっただろ?俺の魔法は呪文無しでも発動できるんだぜ」
一見何もない空間から、アフロ中尉の声がする。
これは、アレか。例の "姿を透明にする魔法" か。
「そこかッ!獅子座流星斬!」
すぐさまオリヴィアスが、声のした方へ斬撃を放つ。
攻撃がヒットしたのか、アフロ中尉の姿が唐突に現れる……が、その顔には余裕の笑みが浮かんでいた。
「奈落の底まで案内するぜ……」
今度は姿を消すことなく、アフロ中尉は拳を繰り出す。
「馬鹿め!その攻撃は見切ったと言って……」
「本当にそうか?アンタ、まだ俺の本気を見ちゃいねェだろ?」
最初の一撃はかわされた。
だが、アフロ中尉は間髪入れず、次の拳を繰り出す。そしてさらに次の拳も……
連打に次ぐ連打。ブランの "千の十字" を殴り返した時と同じ、マシンガンのような連続打撃だ。
「先に見えてても、避ける隙が無ェだろ?アンタ、先読みの能力に頼り過ぎなんだよ」
「う……ッ、クッ……グフ……ッ」
オリヴィアスは避けることができず、途中からはアフロ中尉の為すがまま、一方的に打撃を浴びる。
世に言うフルボッコ状態だ。
「が……グハ……ッ」
「思い知ったかよ?死んでからこっち、召喚されちゃ強敵と戦り合って来たんだ。もう、アンタの知ってる俺じゃねェんだぜ」
アフロ中尉が勝利を確信してドヤる。
オリヴィアスはヨロヨロと後ずさり、壁の巨大柱時計にもたれかかった。
「なんだ?降参か?もう逃げ場は無ェぜ」
「……愚か者めが。戦闘の勝敗だけが全てではないわ!」
オリヴィアスは懐から赤い鍵を取り出し、時計の文字盤に突き刺す。
それを見て、シトリーンが顔色を変えた。
「マズいわ!あれは、城を崩壊させる仕掛けの鍵よ!」
「えぇぇぇっ!?」
城崩壊の仕掛けって、あの大時計に仕込まれてたの!?
「なぜヤツがアレを持っている!? 宝物庫に厳重に保管してあったはずだぞ!」
「その宝物庫に、侵入の形跡があった。鍵が紛失しているのも確認済みだ。犯人はおそらく、奴の手の者だ」
ブランの怒声に、スカイが冷静に分析を伝える。
「ちょっとぉぉ~!今は原因より、仕掛けを止める方が先でしょ~!?」
ヴィヴィアンヌはオリヴィアスを止めようと、杖を振り上げる。
だが、魔法が発動するより早く、鍵は回されてしまった。
カチリ、と音が鳴り、次いでゴゴゴゴゴ……と地響きが上がり始める。
え……コレって、ヤバくない?
私たち、どうなっちゃうの……?
定刻になると鐘を打ち鳴らす振り子時計――そのベルが、戦闘開始のゴングとなった。
「オラァァーッ!奈落の底まで案内するぜェェ!」
「相も変わらず馬鹿の一つ覚えか。貴様の攻撃なぞ、生前のうちから見切っている!」
オリヴィアスはアフロ中尉の拳を避け、身体をひねりながら斬撃を与える。
アフロ中尉も身をのけ反らせて避けるが、その頬には避けきれなかった切り傷がピッと刻まれた。
「相変わらずの戦闘センスだな。アンタ、まともに戦ってりゃ、イイ兵になれるだろうに。何でクソダセェ陰謀なんぞに手を染める?」
アフロ中尉は心から楽しげに、笑みを浮かべている。
今この瞬間は、恨みも何もかも忘れ、ただ強者との闘いを味わっているようだ。
「闘いそのものが目的の貴様には分からん。私は、この魔界を私の理想とする姿に変えたいだけだ!」
「ああ、分からんね。血筋のイイ坊ちゃん嬢ちゃんばっかが牛耳って、本当に強ェ奴らが上に昇れねぇ魔界なんざ、これっぽっちもゾクゾクしねェ」
いつの間にか一対一の決闘の空気が漂い、誰も戦闘に割り込めない。
ブランも躊躇したように立ち止まり、成り行きを見守っている。
「ねぇスカイ、アフロ中尉って、攻撃パターンは本当にアレだけなの?」
私は二人の戦闘から目を離さず、声だけで訊いてみる。
「はい。第三形態の彼の攻撃は "拳で殴る" のみです。頭は悪くありませんし、補助魔法も何パターンか持ってはいるのですが、攻撃と言うとソレだけですね」
一方のオリヴィアスは、多彩な剣技を持っている。
彼が剣を振るうたびに、その斬撃が獅子や大蛇や流星や、様々な形に輝いて見える。
陰でコソコソ悪さを企む陰険な奴かと思ったら、キッチリ実力も持っているとは……アフロ中尉が闘いたがるわけだ。
「ナラカムよ、いい加減に諦めろ。未来の視える私に、貴様の攻撃は当たらん」
「……それはどうかな」
そう言って不適に微笑うアフロ中尉の姿が、次の瞬間フッと消えた。
直後、派手な打撃音と共に、オリヴィアスの身体が吹き飛ぶ。
……え?今、何が起きたの?
「未来が視えても、相手が見えなかったら意味無ェよなァ?知らなかっただろ?俺の魔法は呪文無しでも発動できるんだぜ」
一見何もない空間から、アフロ中尉の声がする。
これは、アレか。例の "姿を透明にする魔法" か。
「そこかッ!獅子座流星斬!」
すぐさまオリヴィアスが、声のした方へ斬撃を放つ。
攻撃がヒットしたのか、アフロ中尉の姿が唐突に現れる……が、その顔には余裕の笑みが浮かんでいた。
「奈落の底まで案内するぜ……」
今度は姿を消すことなく、アフロ中尉は拳を繰り出す。
「馬鹿め!その攻撃は見切ったと言って……」
「本当にそうか?アンタ、まだ俺の本気を見ちゃいねェだろ?」
最初の一撃はかわされた。
だが、アフロ中尉は間髪入れず、次の拳を繰り出す。そしてさらに次の拳も……
連打に次ぐ連打。ブランの "千の十字" を殴り返した時と同じ、マシンガンのような連続打撃だ。
「先に見えてても、避ける隙が無ェだろ?アンタ、先読みの能力に頼り過ぎなんだよ」
「う……ッ、クッ……グフ……ッ」
オリヴィアスは避けることができず、途中からはアフロ中尉の為すがまま、一方的に打撃を浴びる。
世に言うフルボッコ状態だ。
「が……グハ……ッ」
「思い知ったかよ?死んでからこっち、召喚されちゃ強敵と戦り合って来たんだ。もう、アンタの知ってる俺じゃねェんだぜ」
アフロ中尉が勝利を確信してドヤる。
オリヴィアスはヨロヨロと後ずさり、壁の巨大柱時計にもたれかかった。
「なんだ?降参か?もう逃げ場は無ェぜ」
「……愚か者めが。戦闘の勝敗だけが全てではないわ!」
オリヴィアスは懐から赤い鍵を取り出し、時計の文字盤に突き刺す。
それを見て、シトリーンが顔色を変えた。
「マズいわ!あれは、城を崩壊させる仕掛けの鍵よ!」
「えぇぇぇっ!?」
城崩壊の仕掛けって、あの大時計に仕込まれてたの!?
「なぜヤツがアレを持っている!? 宝物庫に厳重に保管してあったはずだぞ!」
「その宝物庫に、侵入の形跡があった。鍵が紛失しているのも確認済みだ。犯人はおそらく、奴の手の者だ」
ブランの怒声に、スカイが冷静に分析を伝える。
「ちょっとぉぉ~!今は原因より、仕掛けを止める方が先でしょ~!?」
ヴィヴィアンヌはオリヴィアスを止めようと、杖を振り上げる。
だが、魔法が発動するより早く、鍵は回されてしまった。
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え……コレって、ヤバくない?
私たち、どうなっちゃうの……?
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