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第2部 大帝国のヤンデレ皇子に囚われたりなんてしない!

第24章 アリーシャ、次回も頑張ると誓う

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「ゴメンゴメン。いろいろあり過ぎて、ユースのことまで気が回らなくて」
 
 ドレスのまま放置されたことに対するうらみを延々えんえんと聞かされ、私はさすがにユースに平謝ひらあやまりした。
 
 だって、ユースならっといても何だかんだで大丈夫そうな気がしたんだもん……。
 
「もう帰られてしまうのですね、アリーシャ姫……」
 
 別れの挨拶あいさつを述べる私の手を、クリアが名残惜なごりおしそうににぎってくる。
 
「今回の騒動を聞いて、国の皆が心配しちゃってるみたいなんで。早く帰って安心させてあげないと」
 
「……私にこのようなことを言う資格は無いのかも知れませんが……またお会いしたいです。できれば、ずっと私のそばにいていただきたい……」
 
 クリアは握った手を離さず、それどころかずっとこのままでいようとでもするように、さらに力を込めてくる。
 
 ……まだヤンデレがなおりきっていないのかな。
 
「こら、クリスティアーノ。姫に無礼なことをするでない」
 
 皇妃が扇でペシンとクリアの手をはたき、私の手を解放してくれる。
 
「ありがとうございます、皇妃様。お会いできて光栄でした。私もいつかあなたのような女性になりたいです」
 
 それは本気の言葉だった。
 気高く、美しく、色っぽいのに品があってカッコイイ。
 こんな大人の女性に私もなれたらいいな、と素直にあこがれてしまう。
 
「嬉しいことを言ってくれる。妾も姫に出会えたことを心から嬉しく思うておる。妾が愚息ぐそくを更生させた暁には、ぜひとも次の皇妃となり、この国を支えてもらいたいものだが、いかがであろう?」
 
 皇妃は美しく微笑んだまま、とんでもないことを言い出した。私はあわてる。
 
「えぇえぇ……っ!? そんな、こ、困ります……っ」
 
 アタフタしていると、皇妃はころころと笑った。
 
「今すぐにという話ではないからあせらずとも良い。まぁ、心の片隅かたすみにでも置いておいてもらえればな……」
「はぁ……」
 
 冗談なのか本気なのかよく分からない提案に困惑したまま、私はガルトブルグを後にした。
 
「アリーシャ様のご活躍かつやく、記事になってますね。救国の聖女にまつり上げられてますよ」
 
 馬車の中、ユースが新聞を見せてくる。
 
「うーん……フクザツ。そんなんじゃないのになぁ……」
 
「いや、アリーシャ姫は聖女であるぞ。一国を救っておいて何を言う」
 
「……まだいたんですね、マオーさん」
 
 ユースがアッシュをにらみつけ、捕まえようと手を伸ばす。
 だがアッシュは猫の身軽さでするりとけた。
 
「大人しく魔界に帰ってくださいよ。魔王がいつまでも玉座を空けてたらマズいでしょう」
「なに、城には優秀な弟を残してあるのでな。我の留守中も上手くやっているだろう」
 
 アッシュを捕まえようとするユースと逃げるアッシュとの攻防がしばらく続く。
 
「もうっ!二人とも、馬車の中で暴れない!」
 
 せまい車内でドタバタする二人を怒鳴りつけながら、私は改めて新聞に視線を落とした。
 そこには機巧帝国で開発の進む "新たな技術" について記事がっていた。
 
「……次は、機巧帝国メトロポラリス……」
 
 誰にも聞こえないよう、口の中だけで小さくつぶやく。そして、チラッとユースに目をやる。
 
 ……きっと創君ユース、大はしゃぎになるんだろうなー……。
 何せ、創君の趣味をこれでもかとめ込んだ機械とSFの国だもんね……。
 
「私はあんまりくわしくないんだけどなー。機械もSFも……」
 
 でも、頑張がんばるしかない。だって……
 
あんなモノ・・・・・のヨメにされるなんて、意味分かんないし」
 
 次も、ゼッタイ囚われの身から逃れてやる。
 自分で自分に誓いを立て、私は心の中で「ファイト!」と拳を突き上げた。
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