囚われの姫は嫌なので、ちょっと暴走させてもらいます!~自作RPG転生~

津籠睦月

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第2部 大帝国のヤンデレ皇子に囚われたりなんてしない!

第18章 アリーシャ、皇妃とバトる(?)

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 北の塔の扉は案のじょう閉ざされていたが、アッシュの闇の炎で簡単に破壊できた。
 私はそのまま塔内の螺旋らせん階段をのぼる。
 
「ごめんくださーい!皇妃様はいらっしゃいますかー!?」
 
 最上階の部屋の扉を開けると、そこに皇妃はいた。
 
 日の入り間際の太陽のような、鮮やかな朱色あけいろの髪に、弟と同じスミレ色の瞳。
 ロココ時代のヴェルサイユで着られていたような、胸の豊かさと腰のくびれを強調するゴージャスなドレスを品良く着こなす彼女は、クリアのような大きな息子がいるとはとても信じられない、目を奪われるような美女だった。
 
 だが、その美女はけわしい顔でこちらをにらみ、その手には暖炉だんろの灰を掃除するのに使う火かき棒をにぎめ、こちらへ向けてかまえていた。
 
「魔界の者を従えわらわの部屋にるとは、何者だ!? 愛らしき乙女の姿をしておるからと言って、妾はだまされぬぞ!名を名乗れ!」
 
「え?あー……私、シェリーロワール王国の第一王女で、アリーシャ・シェリーローズっていう者なんですけど……」
 
 この人、私たちが部屋に入る前から魔界の者アッシュの気配に気づいてたのか……。
 さすが聖なる一族の女性。その血の力は本物らしい。
 
「偽りを申すでない!アリーシャ姫は我が息子の愚挙ぐきょにより、宮殿内の一室に囚われているはず!しかも一国の姫が魔界の者と通じておるなど、あり得ぬではないか!」
 
「え?皇妃様、囚われてたのに、どうやってその情報を!?」
 
「妾を甘く見るでない。妾はここを出られずとも、妾の目となり耳となって情報を知らせてくれる協力者は大勢おるのだ。今は幽囚ゆうしゅうの身なれど、妾は歴史あるこの大帝国の皇妃。国や民のことを知らずにいて良い道理が無かろう!」
 
 うわぁ……この人、メチャクチャ真面目だ。玉座にいてもアンティークと皇妃のことしか考えていないベージュおじさんとは大違いだ。
 
「今、クリスパレスには不穏ふおんな気が満ちておる。禍々まがまがしくも、どこかなつかしい気配……。恐らくはユウェンタスの封印されし力がよみがえったのであろう。それも皆、貴様の仕業しわざか!?」
 
「いえ!違います!呪いの剣を解放しちゃったのはベージュ……皇帝陛下で!私、おじさ……皇帝の呪いを解いて欲しくて、あなたを助けに来たんです!」
 
「皇帝……リオが……!?」
 皇妃は一瞬大きく目をみはった。
 
 しかし、すぐに表情を引き締め、再び私を睨みつける。
 
「魔界の者と共にある貴様を、信じることはできぬ!どうしても妾を連れて行くと言うなら、戦うまでだ!」
 
 そう言うと皇妃は火かき棒を振り上げ私に向かってきた。
 
「アッシュたん!手を出しちゃダメ!」
 
 アッシュが皇妃を攻撃してしまわないよう、とっさに声をけ、私はあわてて皇妃から距離を取る。
 
 どうしよう……。皇妃様と戦うわけにはいかない。
 でも向こうは攻撃して来てるし……。
 私の持っているスキルで、何とか皇妃様を傷つけずに戦闘終了させられないものだろうか……。
 
「レベル2のスキル、お茶会のマナー!」
 
 私はスキルを発動する。
 だが、この場にはティーセットが無いので意味が無い。
 ……うん。分かってた。
 
「レベル3のスキル、ワルツ!」
 
 私はスキルを発動する。
 足のステップが軽やかになり、攻撃をけやすくなった。
 でも、ダメだ。避けているだけじゃ何の解決にもならない。
 
「レベル4のスキル、プリンセスの礼儀作法れいぎさほう!」
 
 私はほぼヤケクソでスキルを発動する。
 身体が勝手に動き出し、スカートの両端をつまんで優雅にお辞儀じぎをした。
 
「シェリーロワール王国第一王女アリーシャ・シェリーローズと申します。お見知りおきを」
 
 こんなので攻撃がむはずがない……そう思っていたのだが……
 
「なんと……。そなた、真に王女であったか……」
 
 驚いたことに皇妃は攻撃の手を止め、まじまじと私を見た。
 
「それは大陸各国の王族・皇族の女のみが習得できる特殊スキル……。妾も皇帝に嫁ぐまでは会得えとくできなかったものだ。それを使えるということは、いずれかの国のプリンセスである証……!」
 
 皇妃は火かき棒を手放し、自らもドレスのスカートをつまんでしとやかにお辞儀をした。
 
 どこからかシャラーンという綺麗な音が響き、皇妃を包むようにキラキラした光の特殊効果や幻の花が現れ、空中に皇妃の肩書と名前が文字で浮かび上がる。
 
 ……自分では気づかなかったけど、私の時にもコレが出てたのかな……。
 
「失礼をした。妾はガルトブルグ帝国皇妃フィオレンジーヌ・アイントラハト。まずは、息子が迷惑をかけたことを謝罪させていただきたい」
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