どうしよう、俺の公子様がXXに。

小夜時雨

文字の大きさ
上 下
127 / 188

加害者Fの調査報告2

しおりを挟む
 意外と細かく注釈つきの、鳩氏の加害者Fの調査報告書の内容によれば、加害者Fはあまりにも傲慢かつ我慢のできない典型的な坊ちゃんでもあるため、親である真性貴族の監視下において羽を伸ばさないように押さえつけているものらしい。もちろん、ヴォル家が舐められている、のは否めないけれどね、それでも。
 
 (お礼参りもしてないし、まだ)

 形だけとっている、いわば貴族流謝罪の風体。
ただそれだけなので、庶民的な生活にも慣れきっている僕からしてみれば、違和感マシマシなのだ。

 (貴族、はそれでいいだろうけど)

 まあ、僕だって貴族の血を引いてはいる。
いるけれども、貴族の落とし前、をそれなりにしてはいるだろう、とフリードは理解して気にもしてない可能性は(というか身から出たサビだとすら思ってるかも)大いにあるし、実際、なんだそれ、的な顔してたし、きょとんとしてたし、……だけどさ、それでも。それでも、だ。
 
 (僕からの落とし前、はついてないからね)

 でもって、何回か夜、僕はヴォル邸を忍び出て、加害者Fの家を徘徊するわけである。周囲を。
立派な貴族の家である。そりゃあ人生舐めるよね、これは……。金でなんでも解決できそうな感じが嫌な感じ。

 (中に入ることは簡単だけど、
  それで終わらすにはぬるいし)

 僕の腹の虫も治らないので、退治するために納得のいく方法を模索しているわけである。

 (……毛刈りもしてなかったな、あいつに)

 毛根刈りすらしてなかったな……。
よし、頭のメモに記録しておこ。

 「ふぁ」

 夜闇にこうして、お隣の屋根に飛び移って隠蔽した身のまま、あくびをする。

 (ねむ……)

 昨日はフリードと少しだけ、戯れたし……。

 (……部屋の隅で、ってのが盛り上がったのかも)

 しかもカーテンの裏なんだよね……なんでか謎のアブノーマルを発揮する婚約者殿……な気がしないでもない。もしかしたら性癖……いや、やめようこれ以上考えるのは。そのうち空の下で、とか普通に言いそうなのが……む、すでにやってたか……相手は僕じゃない。ちょっと面白くないな、これ以上は考えるのやめよう。
 かつての夜会での下世話な野次馬話を思い出して悶々としてたら、動きがみえた。

 「お」

 どうやら、呼ばれた娼婦たちがくたびれた様子で帰るようだ。
中には男娼……もいるみたいだけど、これもまた疲れ切った顔でいる。ふぅん。趣味は悪くない、というか、フリードにちょっかいをかけている時点で、顔が良いのを選んでるっぽい。ふーん。
 馬車で乗り合いながら遠のいていく彼らを見届けてから、僕は夜の空から消えた。

 
 自室に戻ると、うっすらと消えかかっていた僕の体が元に戻りモブおじさんの姿がかき消えて、リヒト・ガーディアンとなった。鏡にうつる僕の姿はまさしく普通に地味な少年、から青年になりかかっている風貌だ。

 (前世がそれなりに生きたジジイだから、
  どうも、若者になりきれないというか、
  子供にしか見えないんだよね)

 未成年だから子供といえば子供だし、稼いでもいないから自立しているとはいいがたい、微妙な立場の自分である。貴族の子息ではあるので、それがこの世界における普通、といえば普通だが……。

 「童顔なのも、気になるかな……」

 ……。
将来の自分に、期待、かな。
 フリードの獣人らしい性欲についていけるか不安だけど……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

みどりとあおとあお

うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。 ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。 モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。 そんな碧の物語です。 短編。

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

醜さを理由に毒を盛られたけど、何だか綺麗になってない?

京月
恋愛
エリーナは生まれつき体に無数の痣があった。 顔にまで広がった痣のせいで周囲から醜いと蔑まれる日々。 貴族令嬢のため婚約をしたが、婚約者から笑顔を向けられたことなど一度もなかった。 「君はあまりにも醜い。僕の幸せのために死んでくれ」 毒を盛られ、体中に走る激痛。 痛みが引いた後起きてみると…。 「あれ?私綺麗になってない?」 ※前編、中編、後編の3話完結  作成済み。

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

処理中です...