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加害者Eぐらいまでお礼参りしてきたよ、褒めて
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などという一連の流れは加害者Eまで続いた。
僕もたまには良いことをするものだ、うん。
中には僕に毛根ムシられたせいで、悲しげに唸ったりしっぽ丸めて部屋の隅で縮こまってた獣人もいたけど、素直に情報吐いたよ。ある程度、事前にボコっといてよかった、時間は有限だからね!
(と、ここまでは順調だったけれど……)
問題は、一番フリードを嬲ったであろう中心人物である。
そうだなあ、加害者Fとしよう。こいつ、実はお家の離れに閉じ込められているらしいのだ。蟄居、っていうんだっけ。難しい言葉でいうところの。世間一般的には悪いことをしたとか素行が普段から悪かったから、てことらしいけど、実態は高位貴族であるところのヴォル家に喧嘩売ったから、自発的に頭下げてるってだけ。内心は舌を出してるらしく、鳩曰く、遊び、をいまだにしてるらしい、ってことは聞いた。僕の黄金の利き手が唸るよね。ぶんぶんと。
(普通は地方へ飛ばすのが普通だけどね~)
多少、舐められてる感があるので、それなりに……うん。
どうしようかな……。
「……何やら楽しげですね、リヒト」
そのご当人というか被害者である婚約者どのは、僕が嬉しそうに笑うので、ほっこりとした笑みをしてみせている。いやいや、なんでそう呑気そうにスープを飲んでるんだろ、この大型猫は。
(朝食、美味しいけどさ……)
朝も眩しく、エメラルドの瞳を細めて今度は果物を咀嚼しているフリード。赤いリンゴみたいな果物を食べている。果汁が迸っているせいか、つるりと唇がツヤってる。
「今度はどこか別のところへ、夕飯を食べにいきましょう」
「うん、そうだね。また一緒に……」
快い返事をしたせいか、優しく、しかし朝から頬を綻ばせて美々しい顔をさらに輝かせたフリード。
「ふふ。
次はどこにしましょうか……」
意外と食道楽のケがあるらしい、婚約者殿はにっこりと、予定を頭の中で考えているらしい。
時々、僕に、辛いものがいいか、甘いものも良いか、激辛は大丈夫か、などと聞いてくる。すでに彼の頭の中には、あの出来事はなかったものになっているらしかった。それはそれで良いこと……? だけど、また同じ目に遭わないか、少しだけ不安が募った。
(僕にばかり護衛つけててもね……)
むしろ、護衛より強いし。僕。
かえって、フリードのほうにつけてほしい……見張りがいるとボコリにくいし。
「リヒト」
「ん」
そうして、食事があらかた終わったのか、僕がのんびり食べている合間に彼は僕のそばへ近寄ってきて、顔を斜めに傾け、ふに、と僕の唇に口付けをさらりとくっつけ、ペロリ。
(わあ)
甘い果汁が、僕の口にも付着し、それをフリード自身が気にしてまた舐めとったものだから……朝から大変エロい仕草で垂れ下がった髪を耳にかけながら、目を背け、
「ごちそうさま」
なんて、離れた顔は明らかに照れまくりのハニカミさんとなり、足早に仕事いくと出ていった。馬車に乗るまでもその素早さは劣ることはなく。
僕はぼーっと、彼の後ろ姿を見つめながら、本性でもって聞き耳を立てていた。
彼の、透けるように白い肌が、一瞬にして、染まったのを目の当たりにしたせいか……。
「すごく……真っ赤だった」
そんな僕のつい口に出てしまった言葉に、間近で見守っていたルフスさんが、
「それは言わないお約束ですよ、リヒト様」
と苦言を呈した。
「そうかな……」
「公子様は照れ屋なんです、そっと耳元で囁いてあげてください」
などというものだから、朝から妙な空気になった。
僕もたまには良いことをするものだ、うん。
中には僕に毛根ムシられたせいで、悲しげに唸ったりしっぽ丸めて部屋の隅で縮こまってた獣人もいたけど、素直に情報吐いたよ。ある程度、事前にボコっといてよかった、時間は有限だからね!
(と、ここまでは順調だったけれど……)
問題は、一番フリードを嬲ったであろう中心人物である。
そうだなあ、加害者Fとしよう。こいつ、実はお家の離れに閉じ込められているらしいのだ。蟄居、っていうんだっけ。難しい言葉でいうところの。世間一般的には悪いことをしたとか素行が普段から悪かったから、てことらしいけど、実態は高位貴族であるところのヴォル家に喧嘩売ったから、自発的に頭下げてるってだけ。内心は舌を出してるらしく、鳩曰く、遊び、をいまだにしてるらしい、ってことは聞いた。僕の黄金の利き手が唸るよね。ぶんぶんと。
(普通は地方へ飛ばすのが普通だけどね~)
多少、舐められてる感があるので、それなりに……うん。
どうしようかな……。
「……何やら楽しげですね、リヒト」
そのご当人というか被害者である婚約者どのは、僕が嬉しそうに笑うので、ほっこりとした笑みをしてみせている。いやいや、なんでそう呑気そうにスープを飲んでるんだろ、この大型猫は。
(朝食、美味しいけどさ……)
朝も眩しく、エメラルドの瞳を細めて今度は果物を咀嚼しているフリード。赤いリンゴみたいな果物を食べている。果汁が迸っているせいか、つるりと唇がツヤってる。
「今度はどこか別のところへ、夕飯を食べにいきましょう」
「うん、そうだね。また一緒に……」
快い返事をしたせいか、優しく、しかし朝から頬を綻ばせて美々しい顔をさらに輝かせたフリード。
「ふふ。
次はどこにしましょうか……」
意外と食道楽のケがあるらしい、婚約者殿はにっこりと、予定を頭の中で考えているらしい。
時々、僕に、辛いものがいいか、甘いものも良いか、激辛は大丈夫か、などと聞いてくる。すでに彼の頭の中には、あの出来事はなかったものになっているらしかった。それはそれで良いこと……? だけど、また同じ目に遭わないか、少しだけ不安が募った。
(僕にばかり護衛つけててもね……)
むしろ、護衛より強いし。僕。
かえって、フリードのほうにつけてほしい……見張りがいるとボコリにくいし。
「リヒト」
「ん」
そうして、食事があらかた終わったのか、僕がのんびり食べている合間に彼は僕のそばへ近寄ってきて、顔を斜めに傾け、ふに、と僕の唇に口付けをさらりとくっつけ、ペロリ。
(わあ)
甘い果汁が、僕の口にも付着し、それをフリード自身が気にしてまた舐めとったものだから……朝から大変エロい仕草で垂れ下がった髪を耳にかけながら、目を背け、
「ごちそうさま」
なんて、離れた顔は明らかに照れまくりのハニカミさんとなり、足早に仕事いくと出ていった。馬車に乗るまでもその素早さは劣ることはなく。
僕はぼーっと、彼の後ろ姿を見つめながら、本性でもって聞き耳を立てていた。
彼の、透けるように白い肌が、一瞬にして、染まったのを目の当たりにしたせいか……。
「すごく……真っ赤だった」
そんな僕のつい口に出てしまった言葉に、間近で見守っていたルフスさんが、
「それは言わないお約束ですよ、リヒト様」
と苦言を呈した。
「そうかな……」
「公子様は照れ屋なんです、そっと耳元で囁いてあげてください」
などというものだから、朝から妙な空気になった。
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