116 / 188
何事もなく? ご案内される。
しおりを挟む
友人たちとアレコレと楽しみながら下町散策などはいくらでもしてきたが、明らかに育ちが良い婚約者どのの行き先はどこなんだろう。予想はつくが、案内されるがまま進むしかない。
(学校帰りに誤魔化して巻いた実績があるせいか、
周りの護衛はそれなりに僕の居場所を追尾できそうなのを用意されてるし)
どうもきちんとお屋敷に無事に帰ってくる姿を見届けるまでは護衛仕事が終わらないらしく、僕は幾度もいつメンの厳しい視線に晒されたことか。
(一応はルフスさんに言伝してるんだけどね……)
案外と心配性な婚約者殿である。
高級総合デパートは僕がヴォル邸の人々に大いに迷惑をかけた黒歴史のため、できれば別の場所がいいなあ、とほのかに思いを抱いていたところ、どうにか通り過ぎてほっとする。
(いや、立ち寄っても別にいいんだけど)
とはいえ、ぼっちで飲み物をオーダーし、飲んでいる学生服の姿は珍しすぎるのできっとあだ名でもつけられてるに違いない。しばし近づかないことにしたほうがいい。
貴族学校でも群れることに慣れてきた僕なので、目立つということはぼっち再び、の可能性がある。せっかく獣人のおニューと仲良くなってきたばかりだというのに、その縁をばっつり切られるのはよろしくない。苦労が泡だ。
「ん? ここは……」
気づけば、僕は物珍しい建物に到着していた。
公子様と馬車から降り立てば、ますますその異様さに興味を掻き立てられる。
隣で僕の言葉に微笑し、語る曰く、
「ここは……、タワー塔だよ」
「タワー……? 塔?」
何やら塔・塔みたいな感じだが、改めて見上げると随分と細長い建物である。
王城が一番高い建物だと思っていたが、この塔もなかなか高い位置に聳えている。頭上の雲が白白しい。もくもくとしていて、これから雨が降るかもしれない、と感じる程度の色合いになりつつある。
風に煽られ、フリードリヒの髪が後ろへと流れていく。
「ここは来たことがない?」
「はい……そうですね、僕にとって空は……」
大きいものだし、どこまでも飛べそうだと本性としてもわかるんだが、けれども、だからといって飛翔可能な獣人が多数存在しているという王都上空を自由自在に飛び回るのは、警備的にいかがなものか。そういう現実的思考でもって、僕はこの大陸の隅々まで行ってみたいなあ、という気持ちもないわけではなかったけれども、捕獲され、門兵でもある義理の父と顔と顔を付き合わせ、カツ丼食うわけにもいかなかった。
(実際のところ、調べてはみたんだ。
けどね……)
このタワータワーは王城の近くに生えているので……。
いくら好奇心マシマシだったとしても、近づくのは危険なのである。法律も、そう。脳筋ばかりなので、本当に、本当に……憲法のほうが間に合っていないのだ。気分で捉えられても困るし、基本的人権獣権利がどこにあるのか、目立つとどんな目に遭うか……。
(僕より強い獣人っていたらね……万が一があったらまずい)
僕の逃げ足はそれなりに早いものだが、自慢できるほどではない。
なんたって、1位ではない。トップなのはきっと、別の獣人。この大陸にはもっと、化け物みたいな獣人がいるのだから。
(学校帰りに誤魔化して巻いた実績があるせいか、
周りの護衛はそれなりに僕の居場所を追尾できそうなのを用意されてるし)
どうもきちんとお屋敷に無事に帰ってくる姿を見届けるまでは護衛仕事が終わらないらしく、僕は幾度もいつメンの厳しい視線に晒されたことか。
(一応はルフスさんに言伝してるんだけどね……)
案外と心配性な婚約者殿である。
高級総合デパートは僕がヴォル邸の人々に大いに迷惑をかけた黒歴史のため、できれば別の場所がいいなあ、とほのかに思いを抱いていたところ、どうにか通り過ぎてほっとする。
(いや、立ち寄っても別にいいんだけど)
とはいえ、ぼっちで飲み物をオーダーし、飲んでいる学生服の姿は珍しすぎるのできっとあだ名でもつけられてるに違いない。しばし近づかないことにしたほうがいい。
貴族学校でも群れることに慣れてきた僕なので、目立つということはぼっち再び、の可能性がある。せっかく獣人のおニューと仲良くなってきたばかりだというのに、その縁をばっつり切られるのはよろしくない。苦労が泡だ。
「ん? ここは……」
気づけば、僕は物珍しい建物に到着していた。
公子様と馬車から降り立てば、ますますその異様さに興味を掻き立てられる。
隣で僕の言葉に微笑し、語る曰く、
「ここは……、タワー塔だよ」
「タワー……? 塔?」
何やら塔・塔みたいな感じだが、改めて見上げると随分と細長い建物である。
王城が一番高い建物だと思っていたが、この塔もなかなか高い位置に聳えている。頭上の雲が白白しい。もくもくとしていて、これから雨が降るかもしれない、と感じる程度の色合いになりつつある。
風に煽られ、フリードリヒの髪が後ろへと流れていく。
「ここは来たことがない?」
「はい……そうですね、僕にとって空は……」
大きいものだし、どこまでも飛べそうだと本性としてもわかるんだが、けれども、だからといって飛翔可能な獣人が多数存在しているという王都上空を自由自在に飛び回るのは、警備的にいかがなものか。そういう現実的思考でもって、僕はこの大陸の隅々まで行ってみたいなあ、という気持ちもないわけではなかったけれども、捕獲され、門兵でもある義理の父と顔と顔を付き合わせ、カツ丼食うわけにもいかなかった。
(実際のところ、調べてはみたんだ。
けどね……)
このタワータワーは王城の近くに生えているので……。
いくら好奇心マシマシだったとしても、近づくのは危険なのである。法律も、そう。脳筋ばかりなので、本当に、本当に……憲法のほうが間に合っていないのだ。気分で捉えられても困るし、基本的人権獣権利がどこにあるのか、目立つとどんな目に遭うか……。
(僕より強い獣人っていたらね……万が一があったらまずい)
僕の逃げ足はそれなりに早いものだが、自慢できるほどではない。
なんたって、1位ではない。トップなのはきっと、別の獣人。この大陸にはもっと、化け物みたいな獣人がいるのだから。
1
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

みどりとあおとあお
うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。
ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。
モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。
そんな碧の物語です。
短編。

醜さを理由に毒を盛られたけど、何だか綺麗になってない?
京月
恋愛
エリーナは生まれつき体に無数の痣があった。
顔にまで広がった痣のせいで周囲から醜いと蔑まれる日々。
貴族令嬢のため婚約をしたが、婚約者から笑顔を向けられたことなど一度もなかった。
「君はあまりにも醜い。僕の幸せのために死んでくれ」
毒を盛られ、体中に走る激痛。
痛みが引いた後起きてみると…。
「あれ?私綺麗になってない?」
※前編、中編、後編の3話完結
作成済み。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?

尊敬している先輩が王子のことを口説いていた話
天使の輪っか
BL
新米騎士として王宮に勤めるリクの教育係、レオ。
レオは若くして団長候補にもなっている有力団員である。
ある日、リクが王宮内を巡回していると、レオが第三王子であるハヤトを口説いているところに遭遇してしまった。
リクはこの事を墓まで持っていくことにしたのだが......?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる