96 / 98
問題なのは、婚約者殿のほう。
しおりを挟む
さて、問題勃発である。
ヴォル家筆頭執事および護衛の皆様によって僕の動きは逐一報告なされているので、珍しく僕は婚約者どのと深い話し合いをするハメに陥った。
ぽんぽん、とフリードリヒ公子様は自身の膝を叩く。
無言で立ち尽くしていたが、僕は渋々と椅子に座っている彼のほうへと近づいていく。
「リヒ」
「はい」
現在、僕は婚約者どのの膝のうえに横乗せされている。
俗にいう、お姫様抱っこの状態である。
「俺に言うこと、あるよね?」
なんでか彼は僕の行動が気に触るらしく、僕の耳をさわさわと触ったり、囁いたりして、抱えた僕の頭に顎を乗せてゆるゆると上半身だけを動かしている。僕としては、まるで子供にかえった気分である。いや、未成年だけどさ……体格差だけはいかんともしがたい。
フリードの肩に、僕は頭を預けたまま口にする。
「……うーん、まあ、いっぱい、
あるといえばあるけど」
「寸止めのことは?」
「ああ……」
以前、ごまかすために婚約者殿の股間をズボン越しにさわさわしてたことあったっけ。
(忘れてた)
「あのときは期待で膨らんでいたというのに」
「直球すぎる」
まあ、僕としても面倒なときはそういった接触をすることによってフリードの意識を発情へと促し、つまるところ逃げようとする癖があると改めて見直した次第である。フリードは年上なので、そういった僕の小手先の技をわかってくれて受け止めてくれている。本当、感謝のしきりだ。
「でも、あれ以上進んじゃうとフリードの大事なところが、
爆発しちゃうし」
「……まったく。
君は可愛いことばかり、
その愛らしい口から言うのだから……」
ぎゅ、と僕は横抱きのまま、さらに抱きしめられた。
フリードの腕はずいぶんと長く、しなやかだ。
(温かいし、それに……)
懐も、深い。
「……これ以上、妙なことに、
俺としては心配だから深入りしてほしくはないのですが」
耳朶に囁きながら、フリードは唇の先を少しだけ耳に触れてくる。そう、唇の先端で耳たぶを触れながら喋っている。感触がダイレクトに、鼓膜にすら伝えてくる。
「リヒ。
あなたは強い獣人ですから、並大抵のことはなんとかなるでしょう。
でも……それでも、心配なんです。
あなたは夜の覇者のひとりではありますが、
……このフリードリヒの婚約者なんですからね。
忘れないでください」
「フリード……ん……」
額にも触れられる。もちろん、唇で、だ。
なんとも気障ったらしい仕草だが、男にしてはもったいないと形容詞される美人にされるとどうにも困るというものだ。
(なぜここまで惚れられているのか)
とも思う時もあるけれども、仕方ない。
もう、ここまできたら。
ここまで愛されて、言葉にされて、行動を起こされたら。
誰も、手放そうとは思うまい。
じっとしていると、じわじわと僕のお尻にあたる、ナニか。
「……フリード」
「不可抗力ですし、むしろ当てています」
「でしょうね……」
臀部を動かすと、その熱いものも固くなっていく気が、というかするだろう。
片手で布越しに触ってやると、公子様はずいぶんと熱いため息をつく。
「やっぱりフリードって欲求溜まってるんじゃ」
「否定はしません」
いい笑顔で返してくる婚約者どのに、僕もまた、さて、どうしようかと悩む。
どうも、期待のこもった顔でいるのだから、僕の婚約者殿は。
ヴォル家筆頭執事および護衛の皆様によって僕の動きは逐一報告なされているので、珍しく僕は婚約者どのと深い話し合いをするハメに陥った。
ぽんぽん、とフリードリヒ公子様は自身の膝を叩く。
無言で立ち尽くしていたが、僕は渋々と椅子に座っている彼のほうへと近づいていく。
「リヒ」
「はい」
現在、僕は婚約者どのの膝のうえに横乗せされている。
俗にいう、お姫様抱っこの状態である。
「俺に言うこと、あるよね?」
なんでか彼は僕の行動が気に触るらしく、僕の耳をさわさわと触ったり、囁いたりして、抱えた僕の頭に顎を乗せてゆるゆると上半身だけを動かしている。僕としては、まるで子供にかえった気分である。いや、未成年だけどさ……体格差だけはいかんともしがたい。
フリードの肩に、僕は頭を預けたまま口にする。
「……うーん、まあ、いっぱい、
あるといえばあるけど」
「寸止めのことは?」
「ああ……」
以前、ごまかすために婚約者殿の股間をズボン越しにさわさわしてたことあったっけ。
(忘れてた)
「あのときは期待で膨らんでいたというのに」
「直球すぎる」
まあ、僕としても面倒なときはそういった接触をすることによってフリードの意識を発情へと促し、つまるところ逃げようとする癖があると改めて見直した次第である。フリードは年上なので、そういった僕の小手先の技をわかってくれて受け止めてくれている。本当、感謝のしきりだ。
「でも、あれ以上進んじゃうとフリードの大事なところが、
爆発しちゃうし」
「……まったく。
君は可愛いことばかり、
その愛らしい口から言うのだから……」
ぎゅ、と僕は横抱きのまま、さらに抱きしめられた。
フリードの腕はずいぶんと長く、しなやかだ。
(温かいし、それに……)
懐も、深い。
「……これ以上、妙なことに、
俺としては心配だから深入りしてほしくはないのですが」
耳朶に囁きながら、フリードは唇の先を少しだけ耳に触れてくる。そう、唇の先端で耳たぶを触れながら喋っている。感触がダイレクトに、鼓膜にすら伝えてくる。
「リヒ。
あなたは強い獣人ですから、並大抵のことはなんとかなるでしょう。
でも……それでも、心配なんです。
あなたは夜の覇者のひとりではありますが、
……このフリードリヒの婚約者なんですからね。
忘れないでください」
「フリード……ん……」
額にも触れられる。もちろん、唇で、だ。
なんとも気障ったらしい仕草だが、男にしてはもったいないと形容詞される美人にされるとどうにも困るというものだ。
(なぜここまで惚れられているのか)
とも思う時もあるけれども、仕方ない。
もう、ここまできたら。
ここまで愛されて、言葉にされて、行動を起こされたら。
誰も、手放そうとは思うまい。
じっとしていると、じわじわと僕のお尻にあたる、ナニか。
「……フリード」
「不可抗力ですし、むしろ当てています」
「でしょうね……」
臀部を動かすと、その熱いものも固くなっていく気が、というかするだろう。
片手で布越しに触ってやると、公子様はずいぶんと熱いため息をつく。
「やっぱりフリードって欲求溜まってるんじゃ」
「否定はしません」
いい笑顔で返してくる婚約者どのに、僕もまた、さて、どうしようかと悩む。
どうも、期待のこもった顔でいるのだから、僕の婚約者殿は。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
深刻にならないのが取り柄なオレが異世界をちょっとだけ救う物語
左側
BL
自宅で風呂に入ってたのに、気付いたら異世界にいた。
異世界には様々な種族が住んでる。
異世界には男しかいないようだ。
異世界ではなかなか子供が出来ないらしい。
うまくヤレば、イイ思いをした上に異世界をちょっとだけ救えるかも知れない。
※ ※ ※ ※ ※ ※
妊娠・出産率の低い異世界で、攻め主人公が種付けするだけの話です。
種族はたくさんありますが、性別は男しかありません。
主人公は貞操観念が乏しいです。
攻めですが尻を弄られることへの抵抗感も乏しいです。
苦手な人はご注意ください。
隷属神官の快楽記録
彩月野生
BL
魔族の集団に捕まり性奴隷にされた神官。
神に仕える者を憎悪する魔族クロヴィスに捕まった神官リアムは、陵辱され快楽漬けの日々を余儀なくされてしまうが、やがてクロヴィスを愛してしまう。敬愛する神官リュカまでも毒牙にかかり、リアムは身も心も蹂躙された。
※流血、残酷描写、男性妊娠、出産描写含まれますので注意。
後味の良いラストを心がけて書いていますので、安心してお読みください。
魔王討伐後に勇者の子を身篭ったので、逃げたけど結局勇者に捕まった。
柴傘
BL
勇者パーティーに属していた魔術師が勇者との子を身篭ったので逃走を図り失敗に終わるお話。
頭よわよわハッピーエンド、執着溺愛勇者×気弱臆病魔術師。
誰もが妊娠できる世界、勇者パーティーは皆仲良し。
さくっと読める短編です。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
子悪党令息の息子として生まれました
菟圃(うさぎはたけ)
BL
悪役に好かれていますがどうやって逃げられますか!?
ネヴィレントとラグザンドの間に生まれたホロとイディのお話。
「お父様とお母様本当に仲がいいね」
「良すぎて目の毒だ」
ーーーーーーーーーーー
「僕達の子ども達本当に可愛い!!」
「ゆっくりと見守って上げよう」
偶にネヴィレントとラグザンドも出てきます。
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる