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問題なのは、婚約者殿のほう。

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 さて、問題勃発である。
ヴォル家筆頭執事および護衛の皆様によって僕の動きは逐一報告なされているので、珍しく僕は婚約者どのと深い話し合いをするハメに陥った。
 ぽんぽん、とフリードリヒ公子様は自身の膝を叩く。
無言で立ち尽くしていたが、僕は渋々と椅子に座っている彼のほうへと近づいていく。

 「リヒ」
 「はい」
 
 現在、僕は婚約者どのの膝のうえに横乗せされている。
俗にいう、お姫様抱っこの状態である。

 「俺に言うこと、あるよね?」 
 
 なんでか彼は僕の行動が気に触るらしく、僕の耳をさわさわと触ったり、囁いたりして、抱えた僕の頭に顎を乗せてゆるゆると上半身だけを動かしている。僕としては、まるで子供にかえった気分である。いや、未成年だけどさ……体格差だけはいかんともしがたい。
 フリードの肩に、僕は頭を預けたまま口にする。
 
 「……うーん、まあ、いっぱい、
  あるといえばあるけど」
 「寸止めのことは?」
 「ああ……」

 以前、ごまかすために婚約者殿の股間をズボン越しにさわさわしてたことあったっけ。
 (忘れてた)

 「あのときは期待で膨らんでいたというのに」
 「直球すぎる」

 まあ、僕としても面倒なときはそういった接触をすることによってフリードの意識を発情へと促し、つまるところ逃げようとする癖があると改めて見直した次第である。フリードは年上なので、そういった僕の小手先の技をわかってくれて受け止めてくれている。本当、感謝のしきりだ。

 「でも、あれ以上進んじゃうとフリードの大事なところが、
  爆発しちゃうし」
 「……まったく。
  君は可愛いことばかり、
  その愛らしい口から言うのだから……」

 ぎゅ、と僕は横抱きのまま、さらに抱きしめられた。
フリードの腕はずいぶんと長く、しなやかだ。
 (温かいし、それに……)
 懐も、深い。

 「……これ以上、妙なことに、
  俺としては心配だから深入りしてほしくはないのですが」
 
 耳朶に囁きながら、フリードは唇の先を少しだけ耳に触れてくる。そう、唇の先端で耳たぶを触れながら喋っている。感触がダイレクトに、鼓膜にすら伝えてくる。

 「リヒ。
  あなたは強い獣人ですから、並大抵のことはなんとかなるでしょう。
  でも……それでも、心配なんです。
  あなたは夜の覇者のひとりではありますが、
  ……このフリードリヒの婚約者なんですからね。
  忘れないでください」
 「フリード……ん……」

 額にも触れられる。もちろん、唇で、だ。
なんとも気障ったらしい仕草だが、男にしてはもったいないと形容詞される美人にされるとどうにも困るというものだ。
 (なぜここまで惚れられているのか)
 とも思う時もあるけれども、仕方ない。

 もう、ここまできたら。
ここまで愛されて、言葉にされて、行動を起こされたら。
 
 誰も、手放そうとは思うまい。

 じっとしていると、じわじわと僕のお尻にあたる、ナニか。
 
 「……フリード」
 「不可抗力ですし、むしろ当てています」
 「でしょうね……」

 臀部を動かすと、その熱いものも固くなっていく気が、というかするだろう。
片手で布越しに触ってやると、公子様はずいぶんと熱いため息をつく。

 「やっぱりフリードって欲求溜まってるんじゃ」
 「否定はしません」
 
 いい笑顔で返してくる婚約者どのに、僕もまた、さて、どうしようかと悩む。
どうも、期待のこもった顔でいるのだから、僕の婚約者殿は。

 
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