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選択は無難に三つ目にした。
ただ、問題は貴族用の高級な店、に行く表向きの用事がないということ。
僕のライフスタイルに散財する理由もなければ、趣味もない。健康的に生きて3食昼寝できれば最高、という人生にくたびれたかのような日々を送っている。なんも面白味のない学生である。彼女もいない。いや、彼氏はいるか……(強引だったけど)婚約者だけど、いつの間にかできちゃったよ。勢いって怖い。
(外観フェチじゃ、理由にならないか)
ここは無難に、散歩したい、じゃ……ありえないな、僕は歩く趣味がないので、授業が終わったら即時撤退、馬車にインする生活スタイルである。とてつもなく学生の時間を無駄にしている獣人だが、別に本物のリア獣じゃないし、いや、リアル獣人だけど、いわゆる陽キャじゃないのだから仕方ない。
「……金だけはあるのになあ」
羽振りの良いヴォル家のおかげで、僕には婚約者様予算が組まれている。
そのため、用立てなどいくらでも外商呼べるしわざわざ出向かなくても買い物など可能なのだが、普段からそういった振る舞いをしてこなかったせいで急に金遣い荒くなる、というのも野暮というものである。あのフリードなら、喜びそうだが……。
「あ、そうか」
すっかり忘れていたが、彼は婚約者である。
それでいて、僕はもらってばかりなのだ。年齢差に加え、彼の方がひと足先に社会人なので、そりゃあ、そうだろうとしかいいようがないが、まあ。
「プレゼント、という方法があるか」
思い立てば即決、無駄にある行動力を発揮し、僕は授業終わりに速攻で廊下を爆進、馬車へ軽やかに座った。普段よりやや早めに着席したため、御者が驚いて、「ど、どうしたんですかい、リヒト様」と大いに慌てている。
少しタバコ臭いので、彼は一服していたのだろう。思ってたよりも、僕は彼の休憩時間を奪ってしまうほどに手早く来てしまったようだ。失敗。平然としているつもりだが、いつもの日々に多少の面白みを見つけてしまったため、足の速さがいつもの倍、進んでしまったようだ。
うぉっほん、と年甲斐のない咳をして、僕はとある噂の貴族用高級店へと向かうようお願いする。
「え、え、え、ご主人様に?
え、え、ええええっ、は、ははいっ、これは一大事!
わたくしの命に代えましても、必ずたどり着いてみせますとも!」
「え、え、別にそこまで一生懸命にしなくてもい」
「ハイヤー!!」
御者の使命感に駆られた手早い手綱が、とてつもなく素早い動きで持ってひゅんじゅん唸る。
馬も、尋常ではない世話人の動きに動揺走らせたが賢い、馬主一体となって普段より凄まじい軽やかな走りでもって、周囲に圧をかけながらひた走る。すわ、何事か、と往来を歩く人々は驚異の眼差しで持って、ヴォル家の家紋がついた馬車を凝視している……。
僕はただひたすら、身を小さくして存在を消すことに注力した。
大いに活躍してくれた馬と御者によって想定していたよりも早く到着したが、過去一派手な登場となってしまった。振り返ると、汗をかいている馬と御者がいる。キラキラと輝くつぶらな瞳の馬と目が合う。
(悪くない、彼らが悪いわけじゃない)
彼らにお礼をいい、労った。
「ありがとうございます」
なんのこれしき、な嬉しげな御者と、誇らしげな馬。馬に至っては湯気がでている。
(……)
僕は何も準備もせず、店舗へと足を向けた。
(正直、何の店かすら知らない)
高級店へ。いざ。
ただ、問題は貴族用の高級な店、に行く表向きの用事がないということ。
僕のライフスタイルに散財する理由もなければ、趣味もない。健康的に生きて3食昼寝できれば最高、という人生にくたびれたかのような日々を送っている。なんも面白味のない学生である。彼女もいない。いや、彼氏はいるか……(強引だったけど)婚約者だけど、いつの間にかできちゃったよ。勢いって怖い。
(外観フェチじゃ、理由にならないか)
ここは無難に、散歩したい、じゃ……ありえないな、僕は歩く趣味がないので、授業が終わったら即時撤退、馬車にインする生活スタイルである。とてつもなく学生の時間を無駄にしている獣人だが、別に本物のリア獣じゃないし、いや、リアル獣人だけど、いわゆる陽キャじゃないのだから仕方ない。
「……金だけはあるのになあ」
羽振りの良いヴォル家のおかげで、僕には婚約者様予算が組まれている。
そのため、用立てなどいくらでも外商呼べるしわざわざ出向かなくても買い物など可能なのだが、普段からそういった振る舞いをしてこなかったせいで急に金遣い荒くなる、というのも野暮というものである。あのフリードなら、喜びそうだが……。
「あ、そうか」
すっかり忘れていたが、彼は婚約者である。
それでいて、僕はもらってばかりなのだ。年齢差に加え、彼の方がひと足先に社会人なので、そりゃあ、そうだろうとしかいいようがないが、まあ。
「プレゼント、という方法があるか」
思い立てば即決、無駄にある行動力を発揮し、僕は授業終わりに速攻で廊下を爆進、馬車へ軽やかに座った。普段よりやや早めに着席したため、御者が驚いて、「ど、どうしたんですかい、リヒト様」と大いに慌てている。
少しタバコ臭いので、彼は一服していたのだろう。思ってたよりも、僕は彼の休憩時間を奪ってしまうほどに手早く来てしまったようだ。失敗。平然としているつもりだが、いつもの日々に多少の面白みを見つけてしまったため、足の速さがいつもの倍、進んでしまったようだ。
うぉっほん、と年甲斐のない咳をして、僕はとある噂の貴族用高級店へと向かうようお願いする。
「え、え、え、ご主人様に?
え、え、ええええっ、は、ははいっ、これは一大事!
わたくしの命に代えましても、必ずたどり着いてみせますとも!」
「え、え、別にそこまで一生懸命にしなくてもい」
「ハイヤー!!」
御者の使命感に駆られた手早い手綱が、とてつもなく素早い動きで持ってひゅんじゅん唸る。
馬も、尋常ではない世話人の動きに動揺走らせたが賢い、馬主一体となって普段より凄まじい軽やかな走りでもって、周囲に圧をかけながらひた走る。すわ、何事か、と往来を歩く人々は驚異の眼差しで持って、ヴォル家の家紋がついた馬車を凝視している……。
僕はただひたすら、身を小さくして存在を消すことに注力した。
大いに活躍してくれた馬と御者によって想定していたよりも早く到着したが、過去一派手な登場となってしまった。振り返ると、汗をかいている馬と御者がいる。キラキラと輝くつぶらな瞳の馬と目が合う。
(悪くない、彼らが悪いわけじゃない)
彼らにお礼をいい、労った。
「ありがとうございます」
なんのこれしき、な嬉しげな御者と、誇らしげな馬。馬に至っては湯気がでている。
(……)
僕は何も準備もせず、店舗へと足を向けた。
(正直、何の店かすら知らない)
高級店へ。いざ。
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