上 下
60 / 101

ローラン・グアラン(三男坊)放蕩息子、恋に溺れる

しおりを挟む
 ーーーーそれは、とても手の届かない星のようだった。
せめて、それが玉座であれば。反乱を起こせばそれなりに成功率は低くてもなんとかなるかもしれないし、王侯貴族であれば目に留まる行動をとったり好ましい環境へ赴けば、なんとかなるかもしれない。幸いにして自分は情報収集に長けた一家の男だ、なまじ貴族であるぶん、それなりに動けるだろう。それがどういった触れ方か、わからないが。

 彼の瞳は、宝石のような色をしている。
緑の、エメラルドの双眸。

 誰もがうっとりとする美しい面差しをもち、孤高の立ち位置は崩さない……そういった男のはずだった。
ローラン・グアランは、基本的に嗜好は女だ。
柔らかい体が好きなので、男特有の骨の味がしそうなゴテゴテとした体つきは好きじゃない。年下も。基本、真っ当な性癖を持つ一般的な獣人だと本心から思っていたのだが……。
 (まさか、これほどに……)
 確かに、彼は考えたことがなかった。
 ツガイの相手が男、の可能性を。

 ローランは理論的に想像した。
自分は三男坊だし、相手が男だとしても、家族ははじめ反対するか驚くだろうが、最後には納得するはずだ。三男坊としての功績は計り知れないし、なかなかの見た目を駆使してやるのもやぶさかではなかったので、両親の言われた通りに動いてみせた。これまでも、いままでも。
 (よし、ならばやってみせよう)
 今まで女相手どってきたため、想定外のことには対処するにはまずは実践を組まねばなるまい。
 
 妙なところで真面目な質を持つ、突き詰める男・ローラン・グアラン。
まずは手軽に、と男娼を紹介する夜の店へと赴いたのだった。

 紹介された男娼はその店で売れっ子のひとりである、ほそっこい、地味な顔をした少年だった。幼さを感じるが、手管は玄人そのもの。ローランの、自慢の逸物を容易に咥えて見せ、しっかりと搾り取ってきた。
 自分はこの手に関しては勝手のできないものだと、初心者よろしく恥じらってみせるローランに、男娼は「よしきた、任せて!」ときたものである。
 真実、マグロ状態で寝台に横たわったローランの上に乗り上げた男娼は、後ろから失礼、とばかりに背中を向けて尻の中をみせ、それでも興奮状態が維持できたことを大いに喜び、ローランのローランを背後越しにしっかりと咥え込んでみせる。上下する振動はまさに、見事としかいいようがなかった。成功体験である。
 女性よりもしっかりとした肩幅は男だが、その陰影がかえって艶かしい……。

 しばし、その男娼館に通い、男娼からあらゆる性技を学んだあと彼をセフレとして買い上げ、己の愛人としたローラン。貴族らしい仕草である。

 さて、そんなローランであるが再び夜会へ。機会が訪れた。
男娼との始末を発揮できるチャンスである。

 「……あなたは」
 「ローラン・グアラン殿、でしたか。
  久方ぶりにお見かけする」

 話しかけてきたのは、相手からだった。
フリードリヒ・シュタイネン・ヴォル。
 
 ローランは普段、女を侍らすが、フリードリヒは男を侍らす。
 (急に男へ宗氏変えした、というのはやはり本当であったか)
 誘ってきたのも、相手からだ。
 
 仮面舞踏会では、切り込みの入ったドレスを着ていた。
それがまた彼の生々しい白い足に似合っていて、またも男たちを侍らしている。
 その宝石の如く美しい緑の瞳だけは爛々と輝いており、仮面からのぞいている。まるでこちらの心根までも見透かすように……そう、フリードリヒはグラスを片手に一口、二口と飲んでいても、その目は笑っていないのだ。
 まさしく、ローラン・グアランと同じ……渇望の瞳だ。
ゾクゾクする。

 股間をひと撫でされ、たっぷりと情欲のこもった緑の目を向けられて、個室へと誘惑される。
なまじ男を知ってしまったローラン。女相手に無双し、男相手に熟練の技を極めてきた男が、その誘いを跳ね返すことができるだろうか。否。好奇心は、ローランにも持ちうるものだ。
 (よし……)
 唇を湿らせ。
ひとまずは、一戦。背後の戸を静かに閉めた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

良かれと思ってうっかり執事をハメてしまった

天災
BL
 良かれと思ってつい…やってしまいました。

【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

BL
 俺には大好きな兄がいる。3つ年上の高校生の兄。美人で優しいけどおっちょこちょいな可愛い兄だ。  ある日、そんな兄に話題のゲームを進めるとありえない事が起こった。 「あれ?ここってまさか……ゲームの中!?」  モンスターが闊歩する森の中で出会った警備隊に保護されたが、そいつは兄を狙っていたようで………?  重度のブラコン弟が兄を守ろうとしたり、壊れたブラコンの兄が一線越えちゃったりします。高確率でえろです。 ※近親相姦です。バッチリ血の繋がった兄弟です。 ※第三者×兄(弟)描写があります。 ※ヤンデレの闇属性でビッチです。 ※兄の方が優位です。 ※男性向けの表現を含みます。 ※左右非固定なのでコロコロ変わります。固定厨の方は推奨しません。 お気に入り登録、感想などはお気軽にしていただけると嬉しいです!

継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したから継母退治するぜ!

ミクリ21 (新)
BL
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したダンテ(8)。 弟のセディ(6)と生存のために、正体が悪い魔女の継母退治をする。 後にBLに発展します。

親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺

toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染) ※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。 pixivでも同タイトルで投稿しています。 https://www.pixiv.net/users/3179376 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/98346398

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

兄弟愛

まい
BL
4人兄弟の末っ子 冬馬が3人の兄に溺愛されています。※BL、無理矢理、監禁、近親相姦あります。 苦手な方はお気をつけください。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

処理中です...