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最近の噂話って嘘なのか真なのか
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以前、フリードが薬にしてやられたことを僕は思う存分根に持っていたので、行方不明、というキーワードに僕の拳がぶんぶんと唸りそうになった。鎮まれ、僕の左腕。
薬の出元先をボコボコ希望は僕の気持ちも合間って高まるが、まずはこのロル茶を飲み干して、と。
(王子殿下、が話題になるのはこの国の常だけれども)
ウサギの王子様。
彼は僕が別に気にしなくても、勝手に話題に出てくる超有名人だ。
今まで派手に動いていたというのに、最近はあんまり調子が良くない、という噂。
(……よくわからないが、単に夜会に出なかっただけのような)
そんな気がする。
というか、あの王様の息子だしな……。
(あんまり関わりたくない)
ベロベロ王の衝撃さはいまだに記憶している。
なんとなしに感じてはいることだが、王家はどうにも……厄介な気がするんだよね……。
(なので、王子様関連は、パス)
それより気になるのは、獣人が行方不明、についてだ。
獣人にはもともと戸籍がなかったので(野生の本能で生きてきたようなところあるし、そもそもの話、文字の文化すらなかった)つい数世代前ぐらいしかそういった個人を特定するような文章はあり得なかったため、獣人ひとりいなくなった、としたら一族が総出で探す、ということになる。
(獣人は、コミュニティ強だからなあ)
別枠もいるにはいるが、大概はなんらかのファミリーに所属している。
だからこそ、行方不明、という噂のわりに、騒ぐ一族がいない、というのはおかしい。
「グアラン家、か……」
そういえば、どこかでその名前、見た覚えがあるなあ……。
「……おや、リヒト様。
おかえりなさいませ」
「ただいま」
ロマンスグレーな執事はいつも僕を迎えてくれる。
いったいどこに耳と目があるのかわからないが、使用人としての仕事があるにも関わらず、こうしてわざわざヴァル家玄関口までやってきてくれる彼の凄さ。主人であるフリードリヒのみならず、未来の嫁(婿)にも最初っからこうしてにこやかな態度をとってくれるので僕としてはありがたい存在だが、ヴァル家の裏方筆頭としての実力が垣間見えて、たまに怖い。
「……あの前にみた手紙、持ってきて欲しいんだけれども……」
おずおずとだが、僕は彼にお願いした。
すると、たちまちに、
「ようございますとも」
すぐに破顔し、憩いの居間に用意された。
(さすがは凄腕の執事……)
貴族名鑑もある。恐るべし。
ふぅ、とまずは椅子に座り、人心地がついてから……銀のお盆にわざわざ手配してくれた手紙の束を上から順に見ていく。うん。あった。
「グアラン家の、三男ですか」
ちょうど執事が茶菓子を持ってきてくれたので、僕はその手紙をひらひらと見せてやり(別に隠す必要もないし)、彼の話を改めて聞くことにした。
「ふむ……そうですね。
確かに最近、噂は聞かない獣人ですね……。
あんなに出ずっぱりなお人、そうそういないというのに」
誰もがしるほどに遊び歩いていた獣人だったが、とんと姿をみせない。
それは逆に怪しい、といえる。
「行方不明、かな……?」
「さて、どうでしょう。
とうとう愛想尽かされて追放されたかも……いえ、
そうはならないでしょう。
あのグアラン家ですから」
「……その。
聞きづらいことを、お尋ねするんだけれども……」
「ええ、かまいません。
どうぞ」
「……えーと……」
(フリード本人に聞かないで、別の人に聞くのは野暮かもしれないが)
でも、一応はね。
気を取り直し……。
「ん、ごほんっ」
僕の婚約者フリードリヒと、グアラン家三男坊の関係性について、尋ねた。その詳細について。
薬の出元先をボコボコ希望は僕の気持ちも合間って高まるが、まずはこのロル茶を飲み干して、と。
(王子殿下、が話題になるのはこの国の常だけれども)
ウサギの王子様。
彼は僕が別に気にしなくても、勝手に話題に出てくる超有名人だ。
今まで派手に動いていたというのに、最近はあんまり調子が良くない、という噂。
(……よくわからないが、単に夜会に出なかっただけのような)
そんな気がする。
というか、あの王様の息子だしな……。
(あんまり関わりたくない)
ベロベロ王の衝撃さはいまだに記憶している。
なんとなしに感じてはいることだが、王家はどうにも……厄介な気がするんだよね……。
(なので、王子様関連は、パス)
それより気になるのは、獣人が行方不明、についてだ。
獣人にはもともと戸籍がなかったので(野生の本能で生きてきたようなところあるし、そもそもの話、文字の文化すらなかった)つい数世代前ぐらいしかそういった個人を特定するような文章はあり得なかったため、獣人ひとりいなくなった、としたら一族が総出で探す、ということになる。
(獣人は、コミュニティ強だからなあ)
別枠もいるにはいるが、大概はなんらかのファミリーに所属している。
だからこそ、行方不明、という噂のわりに、騒ぐ一族がいない、というのはおかしい。
「グアラン家、か……」
そういえば、どこかでその名前、見た覚えがあるなあ……。
「……おや、リヒト様。
おかえりなさいませ」
「ただいま」
ロマンスグレーな執事はいつも僕を迎えてくれる。
いったいどこに耳と目があるのかわからないが、使用人としての仕事があるにも関わらず、こうしてわざわざヴァル家玄関口までやってきてくれる彼の凄さ。主人であるフリードリヒのみならず、未来の嫁(婿)にも最初っからこうしてにこやかな態度をとってくれるので僕としてはありがたい存在だが、ヴァル家の裏方筆頭としての実力が垣間見えて、たまに怖い。
「……あの前にみた手紙、持ってきて欲しいんだけれども……」
おずおずとだが、僕は彼にお願いした。
すると、たちまちに、
「ようございますとも」
すぐに破顔し、憩いの居間に用意された。
(さすがは凄腕の執事……)
貴族名鑑もある。恐るべし。
ふぅ、とまずは椅子に座り、人心地がついてから……銀のお盆にわざわざ手配してくれた手紙の束を上から順に見ていく。うん。あった。
「グアラン家の、三男ですか」
ちょうど執事が茶菓子を持ってきてくれたので、僕はその手紙をひらひらと見せてやり(別に隠す必要もないし)、彼の話を改めて聞くことにした。
「ふむ……そうですね。
確かに最近、噂は聞かない獣人ですね……。
あんなに出ずっぱりなお人、そうそういないというのに」
誰もがしるほどに遊び歩いていた獣人だったが、とんと姿をみせない。
それは逆に怪しい、といえる。
「行方不明、かな……?」
「さて、どうでしょう。
とうとう愛想尽かされて追放されたかも……いえ、
そうはならないでしょう。
あのグアラン家ですから」
「……その。
聞きづらいことを、お尋ねするんだけれども……」
「ええ、かまいません。
どうぞ」
「……えーと……」
(フリード本人に聞かないで、別の人に聞くのは野暮かもしれないが)
でも、一応はね。
気を取り直し……。
「ん、ごほんっ」
僕の婚約者フリードリヒと、グアラン家三男坊の関係性について、尋ねた。その詳細について。
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