どうしよう、俺の公子様がXXに。

小夜時雨

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王族とは1

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 神妙な顔をしているのは、僕だけじゃない。
 僕の両親もだ。父母はなんだかんだで空気を読むタイプなので、目配せしあい、おずおずと尋ねてきた。

 「……その話、私たちが聞いていい話なのでしょうか?」

 母は立場上の含みをもって懸念しているようだ。
 フリードの父は、

 「なぁに、かまわないことですマダム」

 と軽く肩をすくめる。
 寝腐っている王と二人組を一応は客間に通して扉の前にはしっかりと見張りを置くように、と慣れた口調で執事に命じている時、ウルフ顔の父が一瞬背筋がぴっと伸びたのは職業病なんだろうか。

 「……では、場所を変えましょう。
  ちょうど、ムラサキユカリの花が見頃なのです」

 適当に運ばれている感のある三人組が撤収されている間、我々は移動することになった。

 ーーーーヴォル邸、本邸。
僕たちは馬車で移動し(金があるというのはいいことだなあ、と思うし、通り過ぎていく使用人たちの数を思うと何も考えないようにしようとも思慮する僕は小心者だし面倒くさがりだ、差配の役はやりたくないと考えてしまう……ああ、いやだな下っ端貴族の気儘な息子のままでいたかった……)余計なことをうっすらと巡らせつつ、普段から整えられてある客間へと足を運ぶ。
 窓には、紫色の丸い花がグラデーション鮮やかに色をにぎやかにみせていて、紫陽花かあ、と異世界ならではの花の名称変化に脳内が翻訳する作業を嫌がっていたことを思い出して苦みを感じた。
 
 「……リヒ?」

 なんでもない、と僕はフリードからの視線に応え、椅子に座る。
隣には婚約者どの。品の良い猫足が丸テーブルを支えており、家具としてもヴォル邸の足並みを揃えている。
 
 「では、どこまで……そうですね。
  まずはあの王の経緯から」
 「……普段はしっかりとした態度でいらしてるから、
  ずいぶんと驚かれたでしょう」
 「む、うむ……」
  
 ウルフな父の反応から、もしかして門兵の間では、王家のあの王の態度は知らなかったのだろうか?
 至極ごもっともな疑問は、母の頷きからも、そういえば貴族として夜会にも出席していた僕としても、あの王のご淫行……といっていいだろうな、態度は驚きを禁じ得なかった。
 (獣人の王として挨拶もしっかりしてたし)
 認知症、というにはまだ若い。
 王子はいるが、かなり多いのは……。
 (ご乱心は何も王様だけじゃないし)
 王のあの乱れた姿で思い出したのは、ウサギの王子のことである。
 
 「王家の本流はウサギになったのは、先先代あたりだ。
  ……龍人ではあったのだ、かつては」
 
 ところが、つがい制度の崩壊によって王家は危機に瀕した。
すなわち、子供ができなかったことにある。
 (このことは僕がヴォル邸にきて、奥方教育として教わっているさわりだ)
 龍人はあまりにもつがいにこだわった。
なまじ、人生が長く、何千年も生きる王であったからしてーーーー
 
 「ようやくできたつがいが短命ではあったものの、
  子が生まれれば長い人生を耐えることができたのだ。
  しかし……子が生まれる前に亡くなってしまったら……、
  つがいができる前に子をと後宮を作ったりもしたが、
  つがいに嫌われたくないと一途になっていった王家は次第に、
  数を減らしていった」

 独身主義が跋扈したのは、人間の妃がつがいになったため、と考えられている。
 (なるほど……人間の考えが、龍人の価値観を変えたのか)
 たまに噛みちぎられた龍人もいるけど……。

 「これではいかんと、つがいを複数持てるような制度を取り入れたり、
  習慣を作った結果、主流が逆転し、
  結果的にウサギが王家の主流となったのだ」 
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