どうしよう、俺の公子様がXXに。

小夜時雨

文字の大きさ
上 下
50 / 192

王様って暇なの?波乱万丈

しおりを挟む
 実のところ、王様の顔ぐらいしか知らない僕にとってこの事態は衝撃的であったし、せっかくの場をぶちかますご登場に困惑することしかできない。一体何が起きているんだろう。
 (社会に疎いことが裏目に出るとは……)

 「わああ、美味しそう! 食べていい? 食べちゃお!」
 「この花、食べられるお花?
  きれーい! 食べてみると……うわ、まずっ、ぺっぺっ」
 「ねえ陛下ぁ、一緒に食べましょうよぉ、お膝の上に乗っていい?」
 「うむうむ、よいぞよいぞ」
 「おいし、あ、ずるーい、陛下、食べさせてあげる」
 「うむうむ、くるしゅうない」

 しかも勝手に酒盛りし始めたではないか。
 せっかくのお披露目の場は、昨日から腕によりをかけて場所作りをしようと張り切っていた義理の母のものだったし(僕はよくわかっていなかったからフリードに全面的に頼った)、お酒の種類を吟味してたのは義理の父である。
 ヴァン邸の離れとはいえ、元は住んでいた二人のホームなのだから、我知った環境を、さらによりよくしてくださって僕は感謝していたのに。せっかくの選び抜かれた花や、テーブルの上に載っているすべてが節操なく汚れていき、フォークがが弾けて落ちた時にはヴァル邸の執事に向かって、「違うのちょうだい」の一言である。ひどい。これはひどい。テーブルマナーどころか、こちらを無視していちゃいちゃもしてるし。

 「いやーん」 
 「よいではないか、よいではないか」

 (いやーん、って古い……)
 我々の目の前で二人の体を触り合って揉んでる、ってどういう状況!?
 
 まず最初に動いたのは、一番の年長者であるフリードの父であった。

 「っ、この、なんてものを引き連れて!」
 
 つい先程の(以下略)
 もはやどうにもならないご臨席に、憤りを率直に表明した未来のお父様に僕は感動した。度胸、ありすぎる。さすがは王宮勤め……を経験された方だ。今は隠居そのものだが、かつてはぶいぶいいわしたという腕でもって王に詰め寄り、胸ぐら掴みそうになっている彼を抑えるのは奥様である、フリードのお母様であった。

 「あなた、我慢して」
 「しかしっ、息子のっせっかくの場が」
 
 カッカカッカしているのは何も、未来のお父様だけではなかったらしい。

 「大丈夫ですよ、わたくしも参戦いたしますし」

猫の顔ってここまで険しいシャー、をするんだなあ、と僕は改めて猫獣人のブチギレ顔を直視してしまった。
背後に般若を背負っておられる……。未来の母(省略)が首につけているアクセサリーも、猫科目の闘気によって天に浮いて見える……。いや、これ静電気たってる。猫毛が逆立っておられる……。
 
 女性の怒り、には弱い僕は途方にくれ、まあまあと宥めるにしても大きな電気が発生しそうだし容易に触れる場面ですらない。これからの身内関係だしおろおろとしていると、さっと人影が一歩前に現れた。
 なんと、僕の母である。
 
 「お、母さん……?」
 「なんてことですか、王様ともあろうものが……、
  こ、こんな破廉恥な……」
 
 しかもワナワナと震えている。

 「とんでもないクズは、あのピーだけで十分です!
  なんです、このいかがわしい人たちはっ」
 「かあちゃん!」

 僕の父は、妻のことをかあちゃん、と呼んでいる。
いかつい父の口からその言葉が出るのは子供が複数人いるから、その育児の中で気づけば身につけてしまった言葉遣いでしかないが、こういった公の場でつい言ってしまうのは相当取り乱している、ということに他ならない。
 (兵士かつ狼の一族の出身だから普段冷静なんだけど)
 であるからこそ、父より小柄な母が禁則事項を喋りだすことに大いに慌てているのだ。
 普段、温和でおとなしい母が激昂するのは非常に珍しいことであるからして……。
 母は叫んだ。
 
 「お父ちゃん、こらしめてやりなさい!」
 
 (ええーっ!)
 雇用主なのに!?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた! どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。 そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?! いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?! 会社員男性と、異世界獣人のお話。 ※6話で完結します。さくっと読めます。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

処理中です...