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王様って暇なの?波乱万丈
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実のところ、王様の顔ぐらいしか知らない僕にとってこの事態は衝撃的であったし、せっかくの場をぶちかますご登場に困惑することしかできない。一体何が起きているんだろう。
(社会に疎いことが裏目に出るとは……)
「わああ、美味しそう! 食べていい? 食べちゃお!」
「この花、食べられるお花?
きれーい! 食べてみると……うわ、まずっ、ぺっぺっ」
「ねえ陛下ぁ、一緒に食べましょうよぉ、お膝の上に乗っていい?」
「うむうむ、よいぞよいぞ」
「おいし、あ、ずるーい、陛下、食べさせてあげる」
「うむうむ、くるしゅうない」
しかも勝手に酒盛りし始めたではないか。
せっかくのお披露目の場は、昨日から腕によりをかけて場所作りをしようと張り切っていた義理の母のものだったし(僕はよくわかっていなかったからフリードに全面的に頼った)、お酒の種類を吟味してたのは義理の父である。
ヴァン邸の離れとはいえ、元は住んでいた二人のホームなのだから、我知った環境を、さらによりよくしてくださって僕は感謝していたのに。せっかくの選び抜かれた花や、テーブルの上に載っているすべてが節操なく汚れていき、フォークがが弾けて落ちた時にはヴァル邸の執事に向かって、「違うのちょうだい」の一言である。ひどい。これはひどい。テーブルマナーどころか、こちらを無視していちゃいちゃもしてるし。
「いやーん」
「よいではないか、よいではないか」
(いやーん、って古い……)
我々の目の前で二人の体を触り合って揉んでる、ってどういう状況!?
まず最初に動いたのは、一番の年長者であるフリードの父であった。
「っ、この、なんてものを引き連れて!」
つい先程の(以下略)
もはやどうにもならないご臨席に、憤りを率直に表明した未来のお父様に僕は感動した。度胸、ありすぎる。さすがは王宮勤め……を経験された方だ。今は隠居そのものだが、かつてはぶいぶいいわしたという腕でもって王に詰め寄り、胸ぐら掴みそうになっている彼を抑えるのは奥様である、フリードのお母様であった。
「あなた、我慢して」
「しかしっ、息子のっせっかくの場が」
カッカカッカしているのは何も、未来のお父様だけではなかったらしい。
「大丈夫ですよ、わたくしも参戦いたしますし」
猫の顔ってここまで険しいシャー、をするんだなあ、と僕は改めて猫獣人のブチギレ顔を直視してしまった。
背後に般若を背負っておられる……。未来の母(省略)が首につけているアクセサリーも、猫科目の闘気によって天に浮いて見える……。いや、これ静電気たってる。猫毛が逆立っておられる……。
女性の怒り、には弱い僕は途方にくれ、まあまあと宥めるにしても大きな電気が発生しそうだし容易に触れる場面ですらない。これからの身内関係だしおろおろとしていると、さっと人影が一歩前に現れた。
なんと、僕の母である。
「お、母さん……?」
「なんてことですか、王様ともあろうものが……、
こ、こんな破廉恥な……」
しかもワナワナと震えている。
「とんでもないクズは、あのピーだけで十分です!
なんです、このいかがわしい人たちはっ」
「かあちゃん!」
僕の父は、妻のことをかあちゃん、と呼んでいる。
いかつい父の口からその言葉が出るのは子供が複数人いるから、その育児の中で気づけば身につけてしまった言葉遣いでしかないが、こういった公の場でつい言ってしまうのは相当取り乱している、ということに他ならない。
(兵士かつ狼の一族の出身だから普段冷静なんだけど)
であるからこそ、父より小柄な母が禁則事項を喋りだすことに大いに慌てているのだ。
普段、温和でおとなしい母が激昂するのは非常に珍しいことであるからして……。
母は叫んだ。
「お父ちゃん、こらしめてやりなさい!」
(ええーっ!)
雇用主なのに!?
(社会に疎いことが裏目に出るとは……)
「わああ、美味しそう! 食べていい? 食べちゃお!」
「この花、食べられるお花?
きれーい! 食べてみると……うわ、まずっ、ぺっぺっ」
「ねえ陛下ぁ、一緒に食べましょうよぉ、お膝の上に乗っていい?」
「うむうむ、よいぞよいぞ」
「おいし、あ、ずるーい、陛下、食べさせてあげる」
「うむうむ、くるしゅうない」
しかも勝手に酒盛りし始めたではないか。
せっかくのお披露目の場は、昨日から腕によりをかけて場所作りをしようと張り切っていた義理の母のものだったし(僕はよくわかっていなかったからフリードに全面的に頼った)、お酒の種類を吟味してたのは義理の父である。
ヴァン邸の離れとはいえ、元は住んでいた二人のホームなのだから、我知った環境を、さらによりよくしてくださって僕は感謝していたのに。せっかくの選び抜かれた花や、テーブルの上に載っているすべてが節操なく汚れていき、フォークがが弾けて落ちた時にはヴァル邸の執事に向かって、「違うのちょうだい」の一言である。ひどい。これはひどい。テーブルマナーどころか、こちらを無視していちゃいちゃもしてるし。
「いやーん」
「よいではないか、よいではないか」
(いやーん、って古い……)
我々の目の前で二人の体を触り合って揉んでる、ってどういう状況!?
まず最初に動いたのは、一番の年長者であるフリードの父であった。
「っ、この、なんてものを引き連れて!」
つい先程の(以下略)
もはやどうにもならないご臨席に、憤りを率直に表明した未来のお父様に僕は感動した。度胸、ありすぎる。さすがは王宮勤め……を経験された方だ。今は隠居そのものだが、かつてはぶいぶいいわしたという腕でもって王に詰め寄り、胸ぐら掴みそうになっている彼を抑えるのは奥様である、フリードのお母様であった。
「あなた、我慢して」
「しかしっ、息子のっせっかくの場が」
カッカカッカしているのは何も、未来のお父様だけではなかったらしい。
「大丈夫ですよ、わたくしも参戦いたしますし」
猫の顔ってここまで険しいシャー、をするんだなあ、と僕は改めて猫獣人のブチギレ顔を直視してしまった。
背後に般若を背負っておられる……。未来の母(省略)が首につけているアクセサリーも、猫科目の闘気によって天に浮いて見える……。いや、これ静電気たってる。猫毛が逆立っておられる……。
女性の怒り、には弱い僕は途方にくれ、まあまあと宥めるにしても大きな電気が発生しそうだし容易に触れる場面ですらない。これからの身内関係だしおろおろとしていると、さっと人影が一歩前に現れた。
なんと、僕の母である。
「お、母さん……?」
「なんてことですか、王様ともあろうものが……、
こ、こんな破廉恥な……」
しかもワナワナと震えている。
「とんでもないクズは、あのピーだけで十分です!
なんです、このいかがわしい人たちはっ」
「かあちゃん!」
僕の父は、妻のことをかあちゃん、と呼んでいる。
いかつい父の口からその言葉が出るのは子供が複数人いるから、その育児の中で気づけば身につけてしまった言葉遣いでしかないが、こういった公の場でつい言ってしまうのは相当取り乱している、ということに他ならない。
(兵士かつ狼の一族の出身だから普段冷静なんだけど)
であるからこそ、父より小柄な母が禁則事項を喋りだすことに大いに慌てているのだ。
普段、温和でおとなしい母が激昂するのは非常に珍しいことであるからして……。
母は叫んだ。
「お父ちゃん、こらしめてやりなさい!」
(ええーっ!)
雇用主なのに!?
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