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来ると構えてたら、やっぱり来たよ!
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なごやかな空気のなか、執事が少し慌てた様子でやってきた。
フリードに耳打ちをし頷いていたが、同時に、何やら騒がしい声が複数聞こえるではないか。
(……足音も、複数。
重たいのもあれば、軽い足音も、ある……)
誰?
隣で座っている婚約者どのに視線を向けると、
「来られたようです。
……今日は隣国との重要な会合があるとのことでしたが……」
フリードは渋い顔をしている。
彼の発言により、どうやら来ているのは雲上人っぽいのだと察したがさらにしょっぱい顔をして、ダンディなお髭を振るわせているのは猫顔の義理の父である。
「なんと……!
あれほど大事な外交だとお伝え申したのに」
歯茎見せてまで少し怒っているようだ。
つい先程までの空気があっという間に雲散霧消だ。
「ああ……なるほど」
僕の父はといえば門兵しているだけあって納得の狼顔だ。目を瞑り、何やら未来へと思いを馳せているような表情をしてみせた。母とフリードの母君も、あらあら、と、あまり関わりたくないような態度。僕だけがイマイチ。ことの深刻さがわかっていないから、かもしれないが。
やがて近づく気配に、最初に立ち上がったのはフリードだった。
次に父ズ、屹立スピードが同じ。ふたりとも、ドレスアップした妻の手や腕を支え立ち上がらせていた。
「……リヒ」
囁く声で、僕の耳にお願いが込められた声がした。
見上げると、彼もまた僕の手をとろうとしている。
エメラルドの瞳が美しく瞬き、僕もまた、
「うん」
頷き、彼の手をとった。
すんなりと立ち上がると、ちょうど、タイミングよく彼らが現れた。
彼ら。
そう、複数だった。
(うわあ)
思った以上にこれは……。
彼らを出迎えるため、僕たちは近づくけれども近づけば近づくほどに、匂いが少々、きつい。
香水の、匂いというか。そう、これは確かに香水だ。
「……フリード」
「……大丈夫だ」
頭を振っているし、大丈夫だというなら、大丈夫だろう。
(あの時よりはマシな匂いだな……)
ちらりと義両親のほうも見守ると、彼らもまた具合が悪そうだった。
「ハハハ、来たぞ、来たぞ、ハハハ」
「っ、陛下」
そう、まさかの王様が来たのである。
それも一人のみではない。
「わあ、ここがフリードリヒ様のおうちですか?」
「バカ、ここは離れだ。後ろに見えてただろう?
あっちのでっかいほうの建物が本邸だ、バカっ」
「なに、バカにバカってやめてよねっ」
王様の両隣に、男性と女性がくっついているのだ。
どちらも派手な化粧やキンキラキンの格好をしており、王様の腕を取り合って笑っている。
具体的にいえば、娼婦、男娼の服装だった。足や腕が生々しく、男女どちらも胸をぎりぎりまで見せるようなデザインの服を身につけ、とてもじゃないがこのようなお披露目の場にふさわしい連れ合いとは思えなかった。
王様だけが、威厳あるTPOわきまえた風体だったが……。
「……あらまあ……」
呆れてものもいえない、とはこのことか。
僕もまた、実母と同じく口をぽかんと開けて普段の姿とは異なる王様の、別の面を目撃してしまったというショックがあった。
フリードに耳打ちをし頷いていたが、同時に、何やら騒がしい声が複数聞こえるではないか。
(……足音も、複数。
重たいのもあれば、軽い足音も、ある……)
誰?
隣で座っている婚約者どのに視線を向けると、
「来られたようです。
……今日は隣国との重要な会合があるとのことでしたが……」
フリードは渋い顔をしている。
彼の発言により、どうやら来ているのは雲上人っぽいのだと察したがさらにしょっぱい顔をして、ダンディなお髭を振るわせているのは猫顔の義理の父である。
「なんと……!
あれほど大事な外交だとお伝え申したのに」
歯茎見せてまで少し怒っているようだ。
つい先程までの空気があっという間に雲散霧消だ。
「ああ……なるほど」
僕の父はといえば門兵しているだけあって納得の狼顔だ。目を瞑り、何やら未来へと思いを馳せているような表情をしてみせた。母とフリードの母君も、あらあら、と、あまり関わりたくないような態度。僕だけがイマイチ。ことの深刻さがわかっていないから、かもしれないが。
やがて近づく気配に、最初に立ち上がったのはフリードだった。
次に父ズ、屹立スピードが同じ。ふたりとも、ドレスアップした妻の手や腕を支え立ち上がらせていた。
「……リヒ」
囁く声で、僕の耳にお願いが込められた声がした。
見上げると、彼もまた僕の手をとろうとしている。
エメラルドの瞳が美しく瞬き、僕もまた、
「うん」
頷き、彼の手をとった。
すんなりと立ち上がると、ちょうど、タイミングよく彼らが現れた。
彼ら。
そう、複数だった。
(うわあ)
思った以上にこれは……。
彼らを出迎えるため、僕たちは近づくけれども近づけば近づくほどに、匂いが少々、きつい。
香水の、匂いというか。そう、これは確かに香水だ。
「……フリード」
「……大丈夫だ」
頭を振っているし、大丈夫だというなら、大丈夫だろう。
(あの時よりはマシな匂いだな……)
ちらりと義両親のほうも見守ると、彼らもまた具合が悪そうだった。
「ハハハ、来たぞ、来たぞ、ハハハ」
「っ、陛下」
そう、まさかの王様が来たのである。
それも一人のみではない。
「わあ、ここがフリードリヒ様のおうちですか?」
「バカ、ここは離れだ。後ろに見えてただろう?
あっちのでっかいほうの建物が本邸だ、バカっ」
「なに、バカにバカってやめてよねっ」
王様の両隣に、男性と女性がくっついているのだ。
どちらも派手な化粧やキンキラキンの格好をしており、王様の腕を取り合って笑っている。
具体的にいえば、娼婦、男娼の服装だった。足や腕が生々しく、男女どちらも胸をぎりぎりまで見せるようなデザインの服を身につけ、とてもじゃないがこのようなお披露目の場にふさわしい連れ合いとは思えなかった。
王様だけが、威厳あるTPOわきまえた風体だったが……。
「……あらまあ……」
呆れてものもいえない、とはこのことか。
僕もまた、実母と同じく口をぽかんと開けて普段の姿とは異なる王様の、別の面を目撃してしまったというショックがあった。
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