34 / 124
謀略なのか天然なのか
しおりを挟む
「……多少の暴力は許されるよね」
物事を物理で解決するのは簡単だ。特に僕のようなものにとっては。
後始末は面倒だが、なに、自分がやったとバレないようにすればいい。
そろ、そろと後退りする彼らの動きを止めてタコ殴りしておけばいい。いつものことだし、心の友とは殴り愛だ。
「ちょーっとだけ、変形するかもしれないけど。
殴りづらそうなやつは、頭の毛をむしる。
記憶も飛んで、一石二鳥だ」
幸いにして演劇はまだ続いている。
多少の物音などまぎれるはずだ。
からから、と車輪の音が回る音がした。
振動の様子から、舗装された道の上を走っていることを知る。
「……リヒ?」
目が覚めると、しっかりと掴んだ布の感覚、フリードリヒはどうやら何かに包まれていることを知る。
うっすらとした視界にはモヤがかっているけれども、そのまんまるな瞳にうつる、なんともいたいけな様子の自分はなんたることか。ぼやっとした意識も相まって、まっすぐに見上げたらみえた彼の顔がいつも通りで、なんともおかしいぐらい、嬉しく。
「……リヒト……」
「……もう少しで、邸宅につく。
……寝てていいです、公子様」
なんでか彼は常だが、意識的に自分の名前を呼んではくれない。
そこになんでか気掛かりとなり、苛立ちと共に不満を漏らした。
「フリード、と」
「……リードじゃないんだ……」
リヒじゃ被るしな、とモゴモゴと口の中に呟いているらしいリヒトは、
「わかりました、フリード」
飲み込むようにして、呼んだ。
「……はあ」
小さなため息は、僕の喉の奥から。
なんとも、妙な塩梅になったと僕は心底思う。
あれから、粗相をした奴らに制裁をし、駆けつけてきた警備らに引き渡した。見た目からして僕がやったとはバレないはずである。毛根無罪。
警備らの犯人は誰だという物言いに呑気だと思ったが、まあ……、この。追加された毛布で簀巻きにされた公子様にも問題がある。
「髪の毛むしりてえ……」
フリードリヒの頭皮に生える髪は、サラサラで。
触ると確かに猫毛で柔らかい。
(さすがは猫科目)
獲物を得るためならば、どんなに辛酸を舐めようが、じっと堪えるタイプだ。
「あーあ……」
僕の膝の上でスヤスヤと眠っているこの男、癖のある僕の婚約者。
ひどい男だ。僕も大概だが、この男もそうだ。
さら、と指間に通り抜けていく彼の髪を楽しみながら、僕は、周囲に配置されている聖職者らの数が未だ減ってなくて警戒を怠っていないことにも、げんなりとした気持ちになる。
物事を物理で解決するのは簡単だ。特に僕のようなものにとっては。
後始末は面倒だが、なに、自分がやったとバレないようにすればいい。
そろ、そろと後退りする彼らの動きを止めてタコ殴りしておけばいい。いつものことだし、心の友とは殴り愛だ。
「ちょーっとだけ、変形するかもしれないけど。
殴りづらそうなやつは、頭の毛をむしる。
記憶も飛んで、一石二鳥だ」
幸いにして演劇はまだ続いている。
多少の物音などまぎれるはずだ。
からから、と車輪の音が回る音がした。
振動の様子から、舗装された道の上を走っていることを知る。
「……リヒ?」
目が覚めると、しっかりと掴んだ布の感覚、フリードリヒはどうやら何かに包まれていることを知る。
うっすらとした視界にはモヤがかっているけれども、そのまんまるな瞳にうつる、なんともいたいけな様子の自分はなんたることか。ぼやっとした意識も相まって、まっすぐに見上げたらみえた彼の顔がいつも通りで、なんともおかしいぐらい、嬉しく。
「……リヒト……」
「……もう少しで、邸宅につく。
……寝てていいです、公子様」
なんでか彼は常だが、意識的に自分の名前を呼んではくれない。
そこになんでか気掛かりとなり、苛立ちと共に不満を漏らした。
「フリード、と」
「……リードじゃないんだ……」
リヒじゃ被るしな、とモゴモゴと口の中に呟いているらしいリヒトは、
「わかりました、フリード」
飲み込むようにして、呼んだ。
「……はあ」
小さなため息は、僕の喉の奥から。
なんとも、妙な塩梅になったと僕は心底思う。
あれから、粗相をした奴らに制裁をし、駆けつけてきた警備らに引き渡した。見た目からして僕がやったとはバレないはずである。毛根無罪。
警備らの犯人は誰だという物言いに呑気だと思ったが、まあ……、この。追加された毛布で簀巻きにされた公子様にも問題がある。
「髪の毛むしりてえ……」
フリードリヒの頭皮に生える髪は、サラサラで。
触ると確かに猫毛で柔らかい。
(さすがは猫科目)
獲物を得るためならば、どんなに辛酸を舐めようが、じっと堪えるタイプだ。
「あーあ……」
僕の膝の上でスヤスヤと眠っているこの男、癖のある僕の婚約者。
ひどい男だ。僕も大概だが、この男もそうだ。
さら、と指間に通り抜けていく彼の髪を楽しみながら、僕は、周囲に配置されている聖職者らの数が未だ減ってなくて警戒を怠っていないことにも、げんなりとした気持ちになる。
22
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~
乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。
【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】
エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。
転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。
エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。
死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。
「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」
「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」
全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。
闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。
本編ド健全です。すみません。
※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。
※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。
※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】
※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。
欲にまみれた楽しい冒険者生活
小狸日
BL
大量の魔獣によって国が襲われていた。
最後の手段として行った召喚の儀式。
儀式に巻き込まれ、別世界に迷い込んだ拓。
剣と魔法の世界で、魔法が使える様になった拓は冒険者となり、
鍛えられた体、体、身体の逞しい漢達の中で欲望まみれて生きていく。
マッチョ、ガチムチな男の絡みが多く出て来る予定です。
苦手な方はご注意ください。
目覚めたそこはBLゲームの中だった。
慎
BL
ーーパッパー!!
キキーッ! …ドンッ!!
鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥
身体が曲線を描いて宙に浮く…
全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥
『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』
異世界だった。
否、
腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる